(by paco)先に、お知らせ。
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知恵市場有料版コミトンは、来月2012年2月末を持ってサービスを終了します。今回を含めてアト6回になりますが、今しばらくお付き合いください。コミトンに代わるサービスについては、次回あたり、こちらでご案内するつもりです。
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前回からの続きで、情報発信の話をしたい。
情報発信は、僕にとっては呼吸のようなものなので、やめてしまうことはまったく考えられない。そもそもどうしてそういう人になったのかは、もはや思い出せない。小学生の時にはじめて短い物語を書いて、何かしら自信を持ったことがきっかけだったのか、中学生ぐらいからいろいろとものを考えるようになり、考えたことを人に話してみたくなったからなのか。そういったベーシックな経験と記憶はべつにして、仕事をしはじめて以降を考えてみると、1988年に独立して、個人で仕事をしはじめてから、情報発信がずっと自分の「営業ツール」になってきたことに気付く。というより、いわゆる営業活動が苦手だったので、こちらから広く発信し、そこに興味を持ってくる人とつながりを深めて、仕事の関係も深めていこうという気持ちだった。自分から「仕事が欲しい、これができる」と、言って回る「営業」ができない(苦手な)のであれば、広く情報をまいて、そこに反応してくる人を待つことが次善の方法になる。自ら狙って獲物を追うか、撒き餌と罠をしかけて獲物を捕るか、いずれにせよ、自分なりの狩猟の方法だったのだ。
ちなみに、僕の仕事は、コピーライターとして独立したときからずっと、いわゆる農耕的な仕事ではない。職人のようになにかをコツコツつくっては並べておき、お客がやってきてひとつ、またひとつと買っていくような仕事ではなく、お客からの依頼があってから作り始める、注文住宅のような商品だ。どんなものができるかわからない段階で、信頼して仕事を任せてくれる人がいなければ、その仕事で喰っていくことはできない。それは、起業して25年を経た今も、まったく変っていない。むしろ、その傾向は、より強くなっている。コピーライターのころは、他の依頼主のためにつくったパンフレットや広告が、形としてあった。今のメインの仕事である研修やコンサルティングは、本当に実績となるアウトプットが残らない。まっさらな物を売らなければならない。主に売ってくれているのは、研修会社数社の営業の方々だ。見えない物を売ってくれているのだから、本当に有り難いと思う。と同時に、僕が仕事にこめているものが、少しでも見えるように、情報発信が重要になるのだ。
ネットにしても、他の方法にしても、情報発信をしても、それ自体では一銭にもならない。お金にならないことに時間を使い、労力を払うのは、ばかばかしいと多くの人は思うようだ。
僕はそうは考えない。
お金にならない情報発信と、お金になる広告の仕事、研修の仕事と、すべてをあわせて、自分のアウトプットであり、その全体に対する対価として、報酬を得ていると考える。1件の案件に対して、いくらの報酬ではなく、全体の仕事に対して、全体の報酬だ。
無償の情報発信をしていれば、こちらがアウトプットしているものの方が、もらっている報酬より多くなる。つまり赤字になる。赤字になっていることはとても重要だ。なぜなら、こちらが赤字の状態は、相手が黒字になっていることであり、相手は少ない対価でたくさんのものを得ていることを意味している。つまり相手が得している。特をさせてもらったら、人は嬉しく思う。特をさせてくれた人をいい人、すごい人だと思う。すると、もっと得をしたくて、僕に仕事をくれるようになる。別の言い方をすれば、こちらが多く出しているということは、本来受け取れたかもしれない報酬の分を相手は払わずに、相手の中に貯金していることを意味している。こちらにお金をもらって自分で貯金するか、こちらにはもらわずに、相手に貯金してもらうか。こちらが赤字だということは、実は相手の中に貯金しているのと同じなのだ。
ということで、僕は情報発信を自分の仕事のなかに、きちんと位置づけている。
ではなにを情報発信しているのか。
基本的には、すべてを発信しておきたい、という気持ちが強い。隠しごとなし、フルオープンでいい。しかし実際には、お客さんの意向もあるし、物理的に何もかも出せるわけではない。受け取る方も、逐一発信されても、うっとうしいだろう。
発信すべきものは大きく3つある。
(1)やったこと、実績
(2)やっていきたいこと、展望、先読み
(3)直観・感性で見たこと、芸術
それぞれ、深めよう。
(1)やったこと、実績
研修ひとつとっても、実績をそのまま公開することには意味がある。僕が論理思考の講師として、それなりに仕事をしていることはわかっていても、具体的にどんな企業で、どんな頻度、やっているかはわからない。たとえば週1社、月に4社、4日間の研修をやったとして、その事実を見て、あの会社でやっているならうちでもやりたいと思う企業が出てくる可能性がある。
ロジカルシンキング研修と言っても、実はいろいろなバリエーションがある。カスタマイズしたもの、特定の目的に特化したもの、実験的なもの。同じ研修でも、課題を変えていることもあり、課題ややり方に関心を持つ企業もある。たとえば、イシューを学ぶのに、VTRを使う場合があるが、こういったやり方に興味を持つ担当者もいるだろう。
講師の仕事は、形に残らない仕事だ。日々の記録だけが、実績として意味を持つ。発信する価値は実は大きいのだ。
実績を発信する場として、「水族館文庫biz-web」http://szb.bz をつくった。実は、多忙のあまり、最新情報を発信できていない。コミトンを終了させる理由は、こういったできていない情報発信に力を入れるためでもある。
(2)やっていきたいこと、展望、先読み
ひとつのことをやっていると、いろいろ課題が見つかり、改良や改善を加えたくなる。少し横にある、別のカテゴリのことをはじめて見たくなることもある。たとえば、<おとなの社会科>で新しいテーマを取り上げたい、と言ったことだ。
今、<おとなの社会科>で取り上げたいと思っているテーマとして、オウム真理教問題がある。これまではやや避けて通ってきたことがあるが、避けて通れないと感じるようになった。なぜか、その理由や、どのように扱うかといったことを、発信しておきたいと、今感じている。
ロジカルシンキング研修も、違うコンセプトでリニュアルしたいと思っている。これまでは1日という通常の研修の単位で設計していたが、半日でもできるのではないかと思っている。半日分は自習、半日指導で、1日分の内容を行う。半日分の自習は各自、終業後にやらせてもいいし、会場に拘束してやらせてもいい。
次にやってみたいことを、発信する場として、仕事に直結するものとしては「水族館文庫biz-web」http://szb.bz で、やや実験的なものは「L-Side(左脳サイド) 」http://lside.me のいずれかを考えている。
ビジネスに直結しなくても、将来展望や世界観をつくるための情報などがこれにあたる。コミトンも、このカテゴリのものとしてずっと書いてきた。今後は、「L-Side(左脳サイド) 」が内容的に、役割を担う。
(3)直観・感性で見たこと、芸術
日常的に僕が何を見ているのか、という情報は、親近感を与えたり、コンタクトをとるきっかけになるので、重要だ。この機能は、言葉よりビジュアルのほうが効果的だと感じている。そこで、日々、スマートホンやデジタルカメラでさっととって発信する場として、「pcxToday」http://pcxtoday.biz をつくった。ここは文字通り、日常生活で目にしたものを並べていく。またここの写真は、同時にfacebookにも直接アップしている(ここ以外はサイトからアプリでfacebookとtwitterに連携)。facebookは写真は直接アップされたもののほうが大きく、きちんと表示され、反応も大きい。めんどうだが、「pcxToday」だけは、連携ではなく、直接アップしている。
「R-Side(右脳サイド)」rside.meでは、撮っている写真の中でも、作品としてとっているものをアップしている。基本的にフィルムカメラで撮って、スキャンしたもので、速報性はないが、作品性を持っているものがここになる。また「R-Side」では写真に言葉を添えているが、言葉は写真を説明するものではなく、写真と言葉の相乗効果を狙った、やや私的な、より右脳的な言葉を添えている。このサイトでは、ぜひ写真とともに、言葉も楽しんでもらいたいと思っている。
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ということで、情報発信について、今やり始めたことを書いてみた。現在のところ、「水族館文庫biz-web」での発信が滞っていることを除けば、ほぼねらい通りに進められていて、発信力の整理はだいぶ付いてきた感じであり、気持ちがいい。
次回は、発信をしやすくする技術的な方法について、書いてみようと思っている。
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