(by paco)536地域の合意形成のしくみを育て、地域のエネルギーとして広げる

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(by paco)再生可能エネルギーは、密度が低いために、広い地域に分散せざるを得ない。風車にしても、太陽光、小水力、いずれにしても、狭いところで一気につくるような、これまでの発電システムとは異なる、分散型のエネルギーだ。

このことから、地域でつくったエネルギーを地域で使う「エネルギーの地産地消」がよく言われるのだが、その点については、後半で考えたい。

それ以前に、まず、「地産」、つまり地域で再エネ設備を導入するときの方法論について考える。

■地域のエネルギー開発を、地域で決める

これまでのエネルギーシステムは、原子力発電所にしても火力発電所にしても、大型プラントであり、工業施設としての手続きに従ってつくられてきた。環境アセスメントや地域自治体との協議、地域住民への説明会など。

とはいえ、特に原発では、地域の自治体、住民の理解が得にくいために、選挙の争点になって地域が二分されたり、説明会をスムーズに運ぶことが主な役割として、安全性を強調することを任務にしている「御用学者」が幅をきかせたりして、一連の手続きさえ、本来の機能を果たしてはいなかった(九州電力の説明会でのやらせ問題はその象徴である)。

そのため、原発では特に、地域住民や議会、首長を納得させるために、補助金や税の優遇など、さまざまな特典を用意して、プラントの是非ではなく、お金で解決しようとしてきた。逆に言えば、それだけ、大型発電プラントは儲かったとわけだ。

では、再エネ、分散電源になった場合、このやり方をどう変えればいいのか。

税金や御用学者を動員して、無理やり地域を黙らせるようなやり方は、まったく民主的ではなく、当然、やめるべきだ。地域住民が合意のもとに、再エネプラントを導入しないと、「原発」が「たくさんの大型風車」に意趣替えしただけになってしまう。

また、再エネはもともとのコストが高いために、さらに地域を無理やり黙らせるような余剰資金を生みにくい。いずれにせよ、方法は変えなければならない。

代わって重要になるのが、地域の合意形成のしくみだ。

地域住民が集まり、風車などの導入について議論し、合意を取りながら導入していく民主的な社会に変えていく必要がある。

このような合意がとりやすい背景が、再エネにはある。コストがかかる大型風車でも、1基数億円程度であり、一基当たり数千億円の原発や火力発電所と比べればずっと低予算でできるので、地域の資本が加わりやすいのだ。

地域住民が数万円から数百万円を再エネ発電に出資する仕組みをつくれば、風車は誰かが勝手につくった迷惑なものではなく、自分の財産を殖やす楽しみがある地域の宝になる。出資するのは住民だけでなく、自治体や地元の金融機関も含まれるので、風車をつくることが地域を潤す仕組みがつくれる。

風車にしても太陽光パネルや小水力にしても、それ単体では「なければないほうがいい」ものかもしれないが、自分たちに富をもたらすなら、積極的に関われるだろう。

原発では、「富」が「税金や電力会社からのプレゼント(迷惑料)」の形で行われたので、地域住民のマインドが受け身で従属的になった。出資して適正配当を分かち合う形なら、従属的にならずに住む当同時に、配当を得るためには、電力が十分つくれないような甘い計画をチェックし、監視することができる。

まず事業としての再エネプラントに、地域が出資として参加できる点が、原発や火力発電所との大きな違いであり、それによって、地域の合意がとりやすくなる、といえる。

次に、出資の有無にかかわらず、地域住民が合意形成に参加できるようなしくみを、各地域につくるべきだ。

具体的には、欧州由来の「コンセンサス会議」や「グランドワーク」といった手法がある。実はどちらも、手法としては未完成であり、これらを導入しさえすればうまくいく、というものではない。これから日本で改良を施す必要もある。しかし、合意形成手法のベースになる方法なので、参考にしていきたい。

グランドワークについては、静岡県三島市で活動する「グランドワーク三島」が先駆的な活動として実績を上げている。

いずれも、以下の点で共通性がある。

(1)地域住民の代表やNPOが中心になる。
(2)自治体がこれに協力的に関与する
(3)専門家が入り、技術的、社会的な知識と将来予測を提供する。
(4)現地を視察するなど、フィールドワークが組み込まれる。
(5)議論のプロセスが定型化され、進めやすい。

コンセンサス会議やグランドワークの手法をベースに、日本での合意形成にふさわしい具体的な手法はこれから開発していかなければならないが、それは十分可能なことだし、日本人の賢明さがこういう場面で現れるのが、いちばん望ましい形だと考えている(具体的な合意形成アクションや手法開発に、僕自身、コミットしていきたい)。

■地方でつくったエネルギーを大都市に「輸出」する。

ここからは「エネルギーの地産地消」について考えよう。

地産地消はひとつの理想ではあるものの、実はこれだけでは足りない。

地産地消にこだわれば、たとえば秋田県や北海道のような、風力発電に向いたところは地産地消が実現して自給でき、東京や大阪は地産地消しても需要が満たせずに、結局大型発電所をつくることになる。

再エネは広く薄く存在するものの、エネルギー需要は都市や工業地帯に集中しているために、地産地消だけでは、日本という国全体で見たときに、さらに世界全体で見たときに、再エネ利用が十分進まないのだ。

そこで、地産地消は進めた上で、さらに「需要プル」「地域間連携」という考え方をとる必要がある。

需要プルとは、大きなエネルギー需要を持つ東京のような大都市が、エネルギー需要の「引っ張り」によって、再エネポテンシャルの高い秋田県や北海道に再エネプラントをたくさんつくるように方向付けることだ。

「地産地消」から「需要プル」に切り替えれば、たとえば秋田県は、自前のエネルギーを満たしたあとも、東京(とは限らず地産地消では需要が満たせない地域)に電力を売ることによって、さらに経済を潤すことが可能になる。一方東京は、エネルギーを得るために中東などの外国に稼いだ外貨を流出させるのではなく、秋田県などの国内に富を還流させることができる。

需要プルを実現するために、東京と秋田県が戦略的につながることを「地域間連携」と呼び、両者はセットで語るべきキーワードである。

ここに、反論が生まれる。

「秋田県の風力発電は、中東の石油でつくる電力よりコストが高いので、東京は経済力を失うことになり、この方法ではうまくいかない」

この反論に再反論するなら、安い中東の石油で発電して利益を上げたとしても、日本では秋田県など過疎地域に対して、東京はたくさんのお金を、税金の形で還流させている現実がある。東京の個人所得税、法人事業税などの税が、地方交付税交付金などの形で過疎地に還流しており、これが地方を支えている。

再エネの購入料金という価値で秋田県に東京の富が還流すれば、秋田県が豊かになり、地方交付税交付金などを減らすことができるだろう。とすれば、東京から流出する富の総和は変わらず、日本に残る富の総和は増えることになる。

再エネは、過疎地に資源が多くあるという特徴によって、大都市と過疎地との関係を再構築するツールになり得るのだ。

そのためにも、地方につくられる再エネプラントにその地域の住民や企業が投資して、配当を得ることが重要になる。中央の大企業が再エネプラントに投資してしまえば、富は地方を潤さずに大都市に還流してしまう。再エネプラントをつくる際には、地域住民や地元資本が50%以上など、一定比率になることを義務付けると言ったしくみを合わせてとる必要がある。

以上、再エネを使いこなすには、社会の仕組みそのものを変えるようないくつ可能重要な要素をインストールする必要があるが、それらはすでに実用化され、十分機能しているものばかりで、導入に大きな障害はない。

大きな社会変革を実現しようという意思があれば、エナジーシフトをきっかけに、日本をよい方向に大きく変えることさえできるのだ。

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