(by paco)482レンジファインダーでシステムをコンパクトにする

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(by paco)3週続きで写真ネタです。しつこくてすいませんが、もう1回書かせてください。

レンジファインダーカメラでフィルムで写真を撮る、という話を書いてきたのですが、ではフィルムで撮るにしても、なぜレンジファインダーなのか。

前回、

ライカがつくったこの一連システムは、「レンジファインダー式の35ミリカメラ」と「LマウントまたはMマウントという公開規格のレンズ群」で構成されています。この方式は、日本でも、というか、世界で、1950?60年代頃に主流になったものの、その後、一眼レフや、ほかの小型カメラに次第にシェアを奪われて、すでに「過去のもの」というのが一般的な認識です。しかし、実際には80年間、一貫してつくられ続け、しかも、非常に高価にもかかわらず、一度も製造が止まったことがないという、今も支持される製品群なのです。

という説明をしたのですが、あまり説明になっていません。

僕が写真を始めた1970年代に、すでにレンジファインダーは主流ではなくなっていて、一眼レフ全盛の時代になっていました。そういう意味では、僕はレンジファインダーの黄金期を知らず、一眼レフこそ、カメラの王様、という時代を活きてきたわけです。しかし、改めてそれから時間を経てみてみると、なぜレンジファインダーが時代を超えて生き残ってきたのかがわかってきました。

大きくいうと、レンジファインダーのメリットは3つあります。あくまで、画質のよい写真を撮るための魅力、ということですが、ひとつは、一眼レフと比べて小型軽量、特にレンズが小さく、携帯性に優れること。もうひとつは、ファインダーがクリアで見やすく、独特の作画感覚があること。3つめは、特に人物を撮る場合、撮りやすいこと。

◆小型軽量でシステムが軽快

一眼レフとレンジファインダーの機械的な違いは、一眼レフは文字通り撮影用のレンズと構図用のファインダーが、同じレンズを通していること。レンジファインダーは撮影用レンズとは別に、構図用のファインダーが別についてます。

一眼レフは、レンズからの光をファインダーに導くために、ミラーがあります(レンズをはずすとすぐ見える)。レンジファインダーにはこれがない。ミラーは45度の角度で置かれ、シャッターを切るとこれが跳ね上がって、ファインダーは一瞬真っ暗になり、代わってフィルムに光が届きます。

このミラーの跳ね上げ機構がスペースを取るために、一眼レフは大きく、重くなるのです。レンズマウントからフィルムまでの空間をフランジバックと言いますが、一眼レフでは40ミリプラスぐらい。レンジファインダーでは20ミリ台ですから、これだけ見ても、コンパクトであることがわかります。

IMGP9722.JPGこの結果、レンズ後端からフィルムまでの距離が小さいために、レンズ自体も小型化することができます。僕もライカのレンジファインダー用レンズを初めて手に取ったときは、その小ささにびっくりしました。今5本のレンズを持っていますが(ほどなく1本は売却予定)、すべて持ってもポシェットサイズぐらいのバッグで済み、総重量は1.5kgぐらいでしょう。一眼レフで同じものを持つと、2倍以上のバッグになり、重量は3kg近くなりそうです。複数のレンズを持って狙った写真を撮ろうとすれば、差は歴然としてきます。

一眼レフでは、これをズームレンズによって克服しようとしてきました。1本で数本分の焦点距離をカバーすれば、システムはコンパクトになります。しかし、ズームレンズはどうしても画質が悪くなりがちで、高画質にすればレンズ自体はさらに大きくなる。手ぶれ補正があっても手ぶれしやすくなり、矛盾が克服できません。レンジファインダーは、基本、単焦点レンズですが、1本ずつが小さく軽く、かつ個性があるので、複数持つことで、さまざまな写真をとることができる、というわけです。

ズームレンズになれてしまうと、レンズ交換が面倒に感じられますが、一眼レフにしても、単焦点レンズの画質を味わってしまうと、やはりズームの利便性に引き替えにできないことに気づくものです。

(ズームと単焦点のいちばんの違いは、開放絞り値です。開放が明るいほど、ボケ味がよく、レンズの個性が出ます。写真はカメラではなく、レンズで撮るものなので、個性のあるレンズを使うためには、開放が明るい単焦点レンズの方が優れているのです)

◆ファインダーの感触が独特

ふたつ目の特徴であるファインダーですが、一眼レフではレンズ交換すると、ファインダーの視界そのものが広くなったり(広角)、狭くなったり(望遠)します。すでにファインダー自体で世界が切り取られています。レンジファインダーでは、レンズ交換してもファインダの視界は変わりません。その代わり、撮影範囲の目安となる白い枠が表示される。広角なら大きな枠、望遠なら小さな枠。つまりファインダーを覗いていると、広い世界を見ながら、自分がどのレンズでどの範囲を切り取っているのかという見方で写真が撮れる。

一眼レフの方が、余分なものが見えないぶん、集中する感覚ですが、レンジファインダーは周囲が見えている分、余裕を持って構図を考える感覚になります。これは好みの問題もありますが、実のところ、まだレンジファインダーの感覚になれきっていないので、何が違うのか、完全にはつかめていない感じです。

一眼レフでは、解放値が暗いレンズを使うと、ファインダー内も暗くなり、ピントが合わせにくくなります。レンジファインダーでは、撮影レンズとファインダーは別ですから、レンズを変えても見え方は変らず、明るくてクリアです。暗い部屋でのピント合わせは、レンジファインダーの方が楽です。

今、普通に使われているコンパクトデジカメでは、起動すると広角で広い範囲が映り、ズームさせて切り取るし、そもそもファインダーがないので、覗くのではなく、モニターに見えたまま撮る、ということになります。これはこれで別の切り取り方なのですが、覗かないと、作画に集中できていないというのは間違いありません。失敗してもいいので、どんどん撮ることになるし、どこにピントを合わせ、どこをぼかすのかを考える必要もなく、そもそもほとんどの場所に合ってしまうようなカメラですから、「絵をつくる」感覚ではありません。そういう写真を撮りたいときにはいいのですが、僕が作品を撮りたいカメラではない、という感じです。

レンジファインダーの弱点は、焦点距離が長い、遠くのものを引き寄せられるレンズが使えない、という点です。広い視野の中で、映る部分があまりに小さくなると、ピントもわかりづらく、フレーミングも不安定になります。実際には90mmぐらいが限界で、コンパクトデジカメで換算すると、3倍ズーム以上の「テレ」側は難しい。遠くの小鳥を捕りたい、舞台上のアーティストの表情を撮りたいというニーズには対応しません。

実際には、近くに寄せて撮るときは、こちらが近づいて撮ればいいので、それほどとするものが制限されるわけではありませんが、やはり対象を選ぶのは事実です。

大賞を選ぶと言えば、実は望遠かどうかより、最短距離が長い、寄れない、という方が問題です。レンジファインダー用のレンズでは、ほとんどのレンズの最短距離が70センチ?1メートル。ぜんぜん寄れません。これが撮影の制約になり、ここに慣れて、対象を選ぶことがいちばん難しい。焦点距離が短くても最短距離はだいたい70センチなので、逆に、90ミリなどの望遠レンズを使った方が、1メートルの距離からだと、対象を大きくアップでとることができます。僕が持っているのでは75ミリが最長ですが、それでも花をアップにすることはできません。構図の取り方で、浮かび上がらせるというテクニックが必要です。

◆人物の撮りやすさ

シャッターの瞬間、ミラーが上下する一眼レフでは、シャッター音が大きく、大げさな感じがします。レンジファインダーでは音が小さくて優しいので、普通に人を撮るときに安心感があるというのは、意外に心理的な効果が大きいのだなと使ってみて実感しました。昔からレンジファインダーのメリットとして、音が人に優しいと言われていたのですが、そんなに違わないだろうと思っていました。撮ってみると、移っている人の表情が優しい感じがします。不思議です。

カメラが小さめで、レンズも小さいので、威圧感がない、というもあるでしょう。

それ以上に、今どきのカメラっぽくないので、興味を持ってもらえる、撮ってもらいたい感じがする、というのも大きい。ライカのレンズです、60年前のレンズです。フィルムです、ちゃんと映るかどうかわかりません、ピントもぼけます、といって撮ると、おもしろがったり、安心したりするようです。

実は長年写真を撮ってきたのに、人を撮るのが苦手な僕なのですが、少しずつ人を撮る機会を増やしています。

それと、映りすぎない、というのもいい。最新のデジタル一眼では、取り立ててアップにしなくても、映った画像を拡大すると、まつげの毛穴や白目の血管まで、きっちりくっきり見えていまいます。医学書みたいです。つけまつげのズレなんか、もちろんくっきり映る。

でも、そんなお肌の状態を撮りたいわけではなく、肉眼で見えているわけでもないものは映らないぐらいの画質の悪さ、精細さが内ぐらいがちょうどいい。フィルムは解像度が低いので、どうやっても毛穴は映らない。それが人物を撮るときのよさになります。ピントをちゃんと会わせても、肉眼で見たのに近い、ほどよい細部の映り加減になる。

今、デジカメでは「美肌モード」がありますが、あれは精細に映った肌のきめを、あえてならして整える化粧の効果です。つまり、カメラが写した細かな毛穴をあえて消し、整った肌にしているのです。フィルムならはじめから映らない。

VL115_KP8_03.jpg猫を撮っても、毛の1本1本がくっきり映るのがデジタル一眼、ふわふわっと柔らかなかたまりでとれるのがフィルムカメラです。

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ということで、レンジファインダーとフィルムカメラをなぜ使うのか、書いてきました。最近では、ライカもM8、M9というデジタルカメラを出して、レンジファインダーだけれど、超高精細、というカメラが登場しています。さすが、ライカの意地でつくった高価なカメラだけに、どこまでも映ります。それはそれですばらしいことです。

自分が撮りたいものを撮るという目的と、カメラの性能向上が比例する時代は、完全に終わりました。そのぶん、自由に写真が撮れる時代です。それなのに、みんな9800円の1000万画素のコンパクトデジカメを使っているのは、なんだかもったいない。綺麗に映っているだけなら携帯でもできるので、ちょっと変ったカメラを1台、持ってみるのも、楽しいものです。

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