(by paco)481レンジファインダーカメラから、アンチ使い捨て文化を考える

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(by paco)今週も趣味の写真ネタです。フィルムで写真を撮る楽しみについて、先週書きました。今週は、カメラについてです。

携帯にカメラがつき、しかも1000万画素を超える性能になっているので、もはや「カメラ」という機械そのものが無用のものというか、わざわざ別に持つ必要があるのか悩ましい、という時代です。そして、もちろん、それで十分なのです。

ただ、そんな中で、過去の遺物に見えるカメラに魅了されていて、そういう人がどうやらけっこういます。古いカメラは、ちょっとした流行です。ノスタルジー(古いものを懐かしむ気持ち)で古い道具を手にする人はいつの時代にもいるのですが、今の「カメラブーム」は、ほかの意味合いを含んでいる。それは何か、今週は、カメラという機械について、考えます。

デジタルオンリーだった僕の写真ライフに、フィルムカメラが久しぶりに戻ってきたのは、去年の夏。ペンタックスのフィルム一眼レフをオークションで落としたのが始まりでした。

ペンタックスを選んだのは、デジタル一眼レフをシステムでそろえていて、フィルムカメラとレンズが共用できるためです。

フィルム一眼レフとデジタル一眼レフは、形は似ていますが、35ミリフィルムとデジタル一眼の感光素子ではサイズが違うため、デジタル一眼用のレンズは「デジタル専用」と「フィルムと共用できる」ものとあります。今日できるレンズを何本か持っていたので、それをそのまま使おうとフィルムカメラもペンタックスの一眼レフを選んだわけです。

「PENTAX ME Super」という70年代の一眼レフに、現行モデルのレンズである「FA Limited 43mm F1.9」や「FA Limited 77mm F1.8」というすばらしい描写のレンズをつけて取ってみると、確かにとてもよい写真が撮れました。

しかし仕上がりを見ていると、だんだん「解像度がいまいちの古いデジタル一眼レフで撮った写真」みたいに見えてきました。

35ミリフィルムに定着できる画像は、今のデジタル一眼と比べるとかなり低画質で、いわゆる画素数で言えば400?600万画素程度です。同じレンズをデジタル一眼につけても撮って、フィルムでも撮ると、フィルムはフィルムならではの発色や階調表現になるのですが、一方で、やはり写真はレンズを通して撮るものなので、基本的に同じ「絵」であり、同じ絵なら、精細にとれるデジタル一眼の方がきれい、というように見えてくるのです。

もちろん、フィルムで撮ったものににはフィルムなりのよさがあります。しかし、デジタル画質に見慣れてしまうと、フィルムで撮った写真の何がいいのか、かえって見えづらくなり、ついデジタルと同じものを求めている自分、フィルムのよさを見ない自分がいることに気がついたのです。それ以前に、長年使っているFAレンズの映り味を見慣れてしまい、慣れてしまった、ということもあります。

これでは、せっかくのフィルムのよさが何か、わからなくなると思い、別の路線を考えました。

カメラの最高峰と言えば、昔からドイツのライカと決まっています。もちろん、日本のキヤノンやニコンやペンタックスも文句なしの高性能です。というか、高性能なら日本製です。しかしそれでも、昔からライカだけは特別、と写真愛好家から見られてきたのです。

中学生から写真を続けている僕は、もちろんそのことはよく知っていたのですが、一方で、ライカのカメラを使ったことはなく、ライカのどこがいいのか、自分の目と頭では納得できていませんでした。ライカで撮ってみよう、本当に優れているのか、何が魅力なのか、納得してみようと思い立ち、例によってオークションで手頃なものを探し始めました。

実際、探してみると、さすがにライカ、品数からバリエーション、クオリティ、どれをとっても幅が広く、実におもしろい。7月に初めて買ってから、すっかり楽しませてもらいました。まだまだいけそうです。

ライカと言ってもいろいろなカメラ、レンズがあるのですが、いちばんライカらしいのはやはりレンジファインダーという方式のカメラと、それに使うLマウント、Mマウントというレンズのシリーズです。

「バルナック型」と呼ばれる、このタイプの最初のカメラをライカが世に送り出したのは、1930年代。以後、現在に至るまで、80年にわたって基本的に同じタイプのカメラを作り続け、それ用のレンズをそれこそ無数に発売し続け、高い評価を受けてきました。

ライカがつくったこの一連システムは、「レンジファインダー式の35ミリカメラ」と「LマウントまたはMマウントという公開規格のレンズ群」で構成されています。この方式は、日本でも、というか、世界で、1950?60年代頃に主流になったものの、その後、一眼レフや、ほかの小型カメラに次第にシェアを奪われて、すでに「過去のもの」というのが一般的な認識です。しかし、実際には80年間、一貫してつくられ続け、しかも、非常に高価にもかかわらず、一度も製造が止まったことがないという、今も支持される製品群なのです。

一般民生の用の機械で、これだけ一貫して支持されているシステムは、他には例を見ないでしょう。では、いったい何が、これだけの支持を集め続けているのか。その理由を探る旅は、今のようにモノやサービスの変遷が激しい時代のアンチテーゼを知る上で、とても重要な作業になると思っています(半分はそこにひかれているのでしょう)。

さて、このライカが作ったシステムは、実はライカだけのものではありません。レンジファインダーという方法は、人間が立体するのに近い方法で、ファインダーの中に小さな別の窓から取り入れた像が重なって映っていて、ピンとリングを動かすと、二重になった像が重なるところでピントが合う、という方法です。二重像合致式と呼ばれています。

え? 自分でピントを合わせるの? はい、そうです。しかも、ピントが合っているかどうかを見る場所は、画面の中央だけです。ほかは、ファインダーを覗いても、素通しのガラスのようなものです。オートフォーカスがあたりまえの今の時代では考えられませんが、自分で合わせたい場所にピントを合わせることで、自分がつくりたい絵をつくることができるのです。

このレンジファインダー方式は、特許もすでに切れているし、基本技術は枯れているので、光学機器メーカーならどこでもつくることができます。ライカ自身も現行モデルを持ってますが、日本でもコシナという長野県の光学機器メーカーが、フォクトレンダーというドイツのブランド(をレンタルして)でつくっています。

ちなみに、ライカがつくっているフィルムカメラの現行モデル「M7」はボディのみで52万円、標準レンズ付きで62万円です。え?ありえない。ただのカメラなのに。そう、ただのカメラなのに。でもどうしてこういうものを買う人が今の時代にいるのか、気になりませんか? そこに、価値というもの源泉があるのです。

でも、もっと安くつくれるはずだよね、と考える日本人がいて、コシナはフォクトレンダーブランドで「BESSA(ベッサ)」というシリーズをつくっています。こちらはずっとお安く、7万円台。やす!って安くないですね。旧式のカメラなのに。でも、ライカと基本機能、性能はほとんど変わらず、このお値段です。

80年間もつくられているシリーズだし、お値段相応に頑丈なカメラなので、古いカメラでも中古でいくらでも手に入り、実用に耐えます。中古品はものによりけりですが、2?3万円台で十分な性能、もっと安くても運がよければ、使えるものが買えるでしょう。古くても、古いなりの別の魅力があるし、最新がいいとはいいきれないので、中古もよい選択です。

レンズはどうでしょうか。新品ライカでは、最低でも15万、高いと50万円以上もザラ。でも中古も戦前のものを含めて多数流通していてい、こちらは使えるもので1万円以下から。ライカ以外にも、コシナやキヤノン、ペンタックス、ニコンなどの日本勢、そしてこの分野はロシア製のコピー商品が欲で回っていて、性能がよいものもあります。

最新のレンズはもちろん高性能ですが、さすがライカという高性能のものが多いし、古いレンズは今のレンズにはない撮り味、要するに技術不足から来る限界や画質の差の変化があります。同じレンズでも、絞りや光の当たりかげんで、かなり違う映り方をする。しゃきっとした絵にもなるし、ほんわりとした絵にもなる。

どんな条件でもおなじように高画質に映ることをめざし、実現した今のレンズでは、どうとってもレンズのほうがよい結果を出してくれます。古いレンズでは、写してみないとわからないばらつきがあり、それが魅力になるのです。

色味についても同じことが言えます。古い時代は、モノクロが基本だったので、発色のよさは評価の対象ではありませんでした。それ故に、へんな色になるかというとそんなことはなく、非常にしっかりした色になりつつも、今の時代にはない個性がある。最新のレンズでは、正確なカラーチャートを正確な色温度の照明で撮って、再現性を厳密にあわせようとしますが、古いレンズではそもそも計測器もないので、感覚的につくられている。でも、それ故にレンズを通してしか出ない色味や見えなかったグラデーションが映るのです。

最新のレンズより、むしろ古いレンズを使いたい。それによって、デジタル写真のクリア&正確な描写という「常識」から解放されたい、というのが、レンジファインダーカメラにはまった動機だったのです。

今使っているのは、日本のコシナ製の「フォクトレンダー BESSA R2A」と、古いライカのレンズ2本(35mmと50mm、50年前のレンズ)、そしてコシナ製の新しい設計のレンズ2本(15mmと75mm、最新の設計)です。

コシナ製の新しいレンズは、安心感があります。どんな場面でも、綺麗に写してくれるし、画質もいい、小型で軽い。撮っていると、このシリーズのほかのレンズも使ってみたい、と思えます。

しかし、一方で、古いライカのレンズは、いろいろな発見をくれます。僕があまり好きではなかった、コントラストと発色が悪い写真もフィルムに写っているので、スキャンの時にもっと発色を悪くしてぼ?っとしたものにしようか、眠たい写真にしようかと考え、少しでも好くように考えてデジタル化すると、あとで自分が撮っていないような新鮮さがあります。明らかに、写真の好みの幅が広がってきました。

かと思うと、新しいレンズで撮ったのかと思うほど、シャープでくっきりした正確な描写になったり、深い深い、見たことのない色を映し込んでいたりします。

その結果として、1枚の写真を見ている時間が長くなりました。デジタル一眼で撮った写真は、拡大アイコンで拡大して「あ、ちゃんと映っている」と思っておしまいだったのに、レンジファインダーカメラで撮ったものは、拡大したりせずに、全体をじっくり見ていたくなる。

ということで、フィルム写真はこちらをご覧ください。
http://rside.me/muscat1/
http://rside.me/muscat1b/http://rside.me/banana/

これこそが、フィルムを再度撮り始めた動機だったのでした。

ライカというメーカーが提供してきた画像の深みという、分厚い文化が見えてきます。実用品ではなく、高性能を安くではなく、新しいものほどいい、ではなく。何を大切にするのか、徹底的に考えてものを、写真を提供し続けると、ひとつの製品コンセプトが非常に長寿命になる。そして古いものもさまざまな人の手に渡って、使い続けられる。こんな幸せなものが生まれるのです。

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