(by paco)453<おとなの社会科>特別授業「チョコとココア」

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(by paco)いつもはわりと重たいテーマでやっている<おとなの社会科>ですが、ちょうど軽いテーマで考える機会があったので、書いてみます。

クリシンの受講生とのやりとりで、「ココアとチョコレートはどう違うんだろう?」と話していたら、

> しかも調べてみてチョコレートとココアの製法が途中までは一緒だと始めて知りまし
> た。
>
> http://www.chocolate-cocoa.com/dictionary/process_all.html

ということを教えてくれました。とてもおもしろい、というかよくわかる説明なので、じっくり楽しんでください。

 ★ ★ ★

見ました?


まず、もともと僕が漠然と感じていたイシューについて確認しておきます。

「チョコとココアはどう違うのか?」

というのはあるのですが、ほかにも、

「ホットチョコレートとココアはなぜ別の飲み物なのか?」

→ちなみに、カフェオレとカフェラテは、フランス語とイタリア語の違いで、入れているものは同じ(濃いコーヒーと牛乳)、でも製法が違う(カフェラテは蒸気で圧力をかけている、アワにしている)と言うことでいいのかな。)、

別のイシューとしては、

「なぜおいしいチョコレートはベルギーとか、ヨーロッパ産なのか?」
「産地(原産地?)であるアフリカにおいしいチョコやココアがないのはなぜ?」

どうでしょう、チョコレートひとつとっても、いろんなイシューが考えられます。実はここから<おとなの社会科>が始まるのですが、出発点はお菓子でも音楽でもスポーツでもなんでもいいのです。

 ★ ★ ★

では、上記のサイトからわかることを確認してみましょう。

(1)カカオの原産地は南米である!

知らなかった?カカオといえばガーナをはじめとする西アフリカ諸国産だと思っていたのですが、原産地は南米なんですね。アフリカ発祥の飲み物としては、コーヒーがありますが、こちらはエチオピアなど東アフリカ。ココアは、コーヒーのようにアフリカで飲まれていたと思っていたのですが、違うんですね。となると、上記のイシューの「産地であるアフリカにおいしいチョコやココアがないのはなぜか?」に対する答えがひとつ出るのでした。

カカオは中南米で王族の飲み物として飲まれていた、ということですね。それが、スペインの中南米王朝の征服によって、ヨーロッパにもたらされる。ふむふむ。

(2)カカオからチョコレートやココアをつくったのはヨーロッパ人である!

中南米で飲まれていたカカオ由来の飲料と、ココアやチョコレートは、似ているのでしょうが、やはり違うようです。製法のところで、ふたつの発明が画期的だったとありますが、細かくペースト状にしてからカカオバターを分離する、というような製法を発明したことが、今のチョコやココアを生んだのでしょう。原産地とは別のところで、新たな発展をすることはよくあることです。日本の寿司も、カリフォルニアに行くと海苔とご飯の巻き方が逆になったり、タイでは「スキヤキ」といって似て非なる料理になっています。日本の「とんかつ」も、もともとの「カツレツ」とはだいぶ違うし、インドのカレーとヨーロッパのカレー、そして日本のカレーライスは、けっこう違います。人間はよその食べ物が好きなのに、アレンジするのも大好きで、そこから文化が生まれるのですね。日本人はアレンジの天才で、チョコレートは日本製が欧州製よりおいしいと言われています。

(3)チョコとココアは、ココアバターの比率である!

この話は上記サイトの製造工程の説明をよく読まないとわからないかもしれませんが、こういうことです。

もともとのカカオを粉末にして練ってから(カカオマス)、これをざっくり言うと半分に分けて、一方をココア用に、もう一方をチョコレート用にする。ココア用に分けた方をさらに機械にかけて、脂分を分離する。この分離した脂肪分が「ココアバター」。残ったのが「ココア(脂の抜けたカカオ)」。

一方チョコレートは、カカオマス(ココア分と油脂分が混在している状態)に、ココアバターをさらに加えている。つまり、カカオよりさらに油脂分を濃くしているわけですね。言ってみれば、カカオよりカカオの油脂分の濃度を上げたのがチョコの原料と言うことになります。そこに牛乳や砂糖を加えて練っていくと、チョコレートになる。だから、チョコは高カロリーなのか。

ココアは、カカオバター(油脂分)を抜いているので、単体ではカロリー控えめ。そこに牛乳を砂糖を入れてココアという飲み物にするわけですが、いずれにせよ、カカオバターの成分は抜けたままなのがココア。

一方、ホットチョコレートは、カカオバターの成分がたっぷり入っている(牛乳、砂糖が含まれるのは飲み物のココアと同じ))。

ということで、ざっくり言うと、ココアとチョコの違いは、もともとのカカオの油脂成分であるカカオバターが豊富に入っているかどうか、ということになるわけでした。

(4)なんでアフリカでカカオがつくられている?

ついでももう少しイシューを深めておきましょう。アフリカ原産だと思っていたカカオが、実は実は中南米原産。ではなぜアフリカでつくられているの(今は80%以上アフリカ産)。おそらく、ヨーロッパ人がアフリカに苗を持っていって、アフリカ人につくらせたんでしょう(プランテーション)。だからアフリカはカカオの産地ではあっても、チョコやココアの産地ではないのです。

おそらく、黒人を奴隷として使って、安くつくらせたんでしょうね。

(5)なんでチョコの名産地はベルギーなの?

ベルギーのチョコはおいしい、ということになっていますが、なぜ?? サイトの情報を見ると、スペインに入ったカカオは、次にベルギーやオランダに入っています。間のフランスには後から入っているのはなぜ? 

スペインが中南米を支配したのは16世紀(1500年代)。カカオがヨーロッパに入ったのもこの頃。この頃、オランダやベルギーは、スペインの支配下で、植民地だったのですね。16世紀後半に、オランダはスペインを相手に独立戦争を80年も戦って、17世紀半ばに独立を果たしています。

そんなわけで、スペインからオランダやベルギーにカカオがもたらされ、職人の国としてカカオをチョコレートに改良したのではないかと推測されます。ベルギーやオランダでカカオがチョコレートに作りかえられるようになってから、おいしい!ということでフランスやイギリスに広まったということじゃないでしょうか。

ちなみに、オランダがスペインと戦った独立戦争を、「80年戦争」または、「オランダ独立戦争」呼びます(1568年から1648年)。

お?世界史。

この戦争の途中、オランダはスペインから統治権を奪回して実質的に独立し、世界に乗り出していくのですが、日本にもやってきます(長崎の出島にはオランダ船の来航だけが許された)。

なぜかというと、スペインはカトリック、オランダはプロテスタント(新教)の国で、宗教対立も独立の背景にあるのですね。そして、日本はそのころ、安土桃山時代で、当初はフランシスコ・ザビエル(スペイン人)の布教を許すわけですが、カトリックの強引な布教が嫌われるようになり、豊臣秀吉はカトリック宣教師を追放、徳川家康は禁教とした上に、スペイン船などの渡来を禁止(鎖国)。かわりにオランダ船だけを許可したわけですが、オランダは新教でスペインに勝って独立した国なので、カトリックより「商売優先」で、政治的野心(植民地にしちゃおうかなという)が少ないから、付き合ったのでしょう。

で、カトリックとプロテスタントの関係については、<おとなの社会科>04のユダヤのときにも話しているので、こちらも参考までに。

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ということで、チョコとココアから始まった<おとなの社会科>の旅はこの辺までにしておきましょう。

では、らたまいしゅう。

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