(by paco)このところ、おとなの社会科ネタで、堅い話が多かったので、柔らかめの話を書こうと思います。
「Commiton444 幸せ」の号で、ものを買う幸せについて書きました。そのすこし前に、「Commiton441 フィルムカメラ」で「古いカメラを売買する」という話を書いたので、その続き、という感じの話です。
今は新品は売っていない古いものを手に入れるためには、中古店かオークションを利用することが多くなります。オークションでのやりとりを中心に、こういった取引をどうやって使いこなせばいいのか、考えてみます。オークション自体はすでに日本でも広く、結構長く利用されているし、僕よりずっと経験豊富な人も多いと思います。とはいえ、改めてオークションの使い方と、その意味を整理しておくのも悪くないのではないかと思います。
◆オークションでは新品から中古まで扱っている
オークションではあらゆるものを売っているわけですが、ヤフーオークションを見てみればすぐにわかるとおり、中古品から新品まで、あらゆる物が売られています。一般的にはオークションは、競り市ですから、最低価格から始まって、ほしい人が入札を繰り返して、一番高い入札をした人が落札、というのが基本ですが、新品の場合は、「即決価格」が表示されて、その額を入札すれば、その場で落札、購入決定ということが多くなります。
となると、これはネットショップで買うのと基本的に同じですから、値段と、品物が間違いなく通常の新品商品か、送料がどうなっているかを見れば、オークションで買うか、ネットショップで買うか、選ぶことができます。実際には、ネットショップよりずっと高い値段で即決価格を付けているオークションも多いので、「何でまた、こういう値段で売っているんだろう」と思うわけですが、まあこういうのには関わらないで放置です。
同じ新品でも、普通のネットショップでは売っていないものもたくさんあります。カメラのレンズキャップだけ、と言うようなものは、ショップではわざわざいちアイテムとして扱っていないことが多いので、手に入れようと思うと、リアルの店で「取り寄せ」を頼むことになり、オークションで即決価格で買った方がいい、ということもあるわけです。同じようなものに、すでに販売中止になったものの、まだ在庫品があるというもので、ちょっと古いレンズなどにこういうものがよくあります。これもオークションでないと買いにくいものです。
新品で有効なのは、セミオーダーの商品で、先日は革製のカメラストラップをオーダーで買いました。色と長さ、接続の金具が選べて、注文から4?5日でつくって送るというもので、個人が受注し、コツコツつくって送っているようです。ショップで同じようなものを買うより、2?3割安く、かつ色や長さをオーダーできるし、手作り感もあるので、こういう個人商売のものをうまく見つけるとうれしくなります。
まだ十分使える中古品、それもすでに販売中止になって久しいものは、オークションで買うのがいちばんよいカテゴリに属します。古いフィルムカメラなどは最たるものです。とはいえ、オークションで中古品を買う場合は、値段に激しい差があるので、商品を見極める力が重要になります。
「動かないのでジャンク品」というものの中にも、ちょっと直せば十分使えるものもあるし、部品と利用のものもある。先日、使っているカメラのパーツが落ちてなくしてしまい、昨日には問題がないのにかっこわるいので、ジャンク品の同一機種を500円で落としたのはいいのですが、部品をはずすのが以外に難しく(ただのねじなんですが)、まだ目的が果たせていません。部品をはずして、もうひとつに取り付けたら、オークションで売りに出すつもりなんですが、美観上よろしくないと売れないので、1台のジャンク品を犠牲にして、動くカメラを売却して、誰かに使ってもらうわけです。捨てるジャンクカメラから取ったパーツで、難あり品が良品として売れるのですから、これってけっこうエコだと思います。ものの寿命を延ばし、使える限り使うわけですから。
古いカメラのような商品の場合、きちんと動いて美観が悪くなければ、売買を繰り返しても値段が落ちることはあまりありません。10000円で買ったものなら、また売却すればそのぐらいで売れる。ちょっと直したり、自分で撮影して確実に移ることが確認できれば、それを描くことでさらに高く売れることもあるので、手堅い買い物なのです。
しかし、逆に、買ってみたけれど、「きちんと動かない」ということもあります。外観の方は写真を見ればおおよそ外れないのですが、動作ははっきりしないことが多い。これまで何台も買ったのですが、予定通り動かないものが数台ありました。こういう場合は、出品者の商品説明を再度よく読み、「きちんと動く」という意味のことが書いてあれば、「それなのに動かない」ということで、返品交渉をします。ノークレーム・ノーリターンとあっても、事情を説明すれば、返品に応じてくれることが多いです。もちろん、返品を約束しているわけではないので、ジャンク品をつかまされて「高い勉強料」ということもありますが、そういうことを防ぐためにも、自分が気になるところはしっかり読むか、出品者に質問して、言質(げんち)を取っておく。そうすれば受け取ってから不具合があっても、返品できるはずです。
オークションはあくまでも「相対取引」なので、こちらの考えが正当だと思えば、はっきりいうべきなのです。また、相互が取引終了後に「評価」するので、相手の対応が不条理なら評価を落とすことで対抗できます。出品者が数多くの出品をしていれば、オークション会場での信用が重要と考えているので、悪い評価を付けられないように誠実に対応してくれるものです。もちろん、こちらも同じように評価されるので、不条理なクレームは付けないようにする必要があります。双方が悪い評価を付けても、相打ち状態でいいことはありません。ちなみに、返品を受け付けてくれた場合は、僕は最高評を付けています。
◆オークションの買い方・売り方
オークションで売買するときは、売るにしても買うにしても、適切な値付けと情報提供(受容)が決め手になります。そのためにも、その商品がどのような取引をされているのか、良品と不良品の境界線がどこにあるのかを知っておく必要があります。いちばんいいのは、そのカテゴリの商品を継続的に見ておくことで、いくらぐらいで、どの程度の商品が落札されているのかが参考になります(市場価格、市場品質)。
特に重要なのは、そのカテゴリの商品ではどのあたりがトラブルになるかを知ることで、カメラの場合、露出計がきちんと動くのか、モルトと呼ばれる遮光スポンジの状態など、いくつか重要な点を知っておき、自分で直せるようにするか、そういった部分にトラブルを抱えていないものを買うことが重要です。そうすれば、買ったものが自分の期待と外れていても、再度売却してあまり損を出さないことができるし、当然、売るときも自信を持って売れます。
ということで、買う時から、売却の可能性を予想して情報収集と取引をすることが重要なのです。購入したら、箱や梱包材、付属品はなるべくそのまましばらく取っておくことも重要です。トラブルがあれば返品する必要があるし、ものがよくても、使ってみたら期待はずれで、さっさと売る可能性もあります。早く売れば、値段差もあまりなく、損も出にくいのですね。
先日、40年前のドイツブランドのカメラ「ローライ35」を落としました。気になっていた機種なのですが、わりと高いので、手を出さなかったのです。10000円スタートで出ていたものがあり(なかなかきれいだった)、中古ショップでは35000円から40000円の値付け。絶対ほしいというわけではなかったので、20000円程度の額を入れて、終了日まで放置しておいたら、落札できてしまったのです。ラッキーと受け取ったのですが、露出計が不良。夜部屋の中で図るとほぼ適正なのですが、昼間、ピーカンの元では、かなりアンダーになる。古いカメラにありそうなトラブルだったのですが、受け取った翌日にピーカンでテストができたのが幸いでした。ほかのカメラの露出計のデータを集めて確認し、売り主に連絡を取ったら、返品OKということで、このカメラは戻しました。その間、数本のフィルムをテスト撮影したのですが、これで完全に魅力に参ってしまい、ぜひ再度手に入れることに。オークションとショップを比較して、程度がよく、整備済みの機種をちょっと高めだったのですが、落とすことができました。露出計も、ほかの機械部分も調子がよく、毎日使っています。
オークションの相場よりは1万円程度高い感じですが、専門ショップよりは1万円ぐらい安い、という感じの値段で、こういう値付けのものが一番品質はいいのですが、リセールを考えると買いにくい。ショップなら一応保証も付くので、安心感があるものの、リセールでは絶対に損をするので、使い続ける覚悟が必要。一方、オークションの平均値(この場合、2.5万円ぐらい)だと、リセールでも損をしない代わりに、今回の値付けだ(3.5万円)とオークションでもリセールで損が出る可能性が大きい。もちろん品質はいいので、損しない額まで上がる可能性もありますが、目利きが落としてくれるかどうかによります。今回は失敗のないものを買いたかったのと、一度使ってもののよさはわかっていたので、すぐに売ることはないと思い、長く使うこと前提で落札しました。こういうように、どの品質の、何を、いくらで、買うか、かなり知的な研究が必要だし、それがおもしろさでもあります。
逆に、新品をショップで買うときにも、リセールを意識するようになりました。売れそうなものなら箱や付属品を取っておく、なるべくきれいに使う、ことで、自分にとっての旬が過ぎたら、こだわらずに売ってしまおう、というねらいです。こういうものの買い方が自然にできるようになったのは、オークションになれてきたひとつの成果で、以前なら買ってしばらくはどんどん使っても、状況が変わったり飽きたりして使わなくなるものがあったのですが、今はそういうものは、どんどん売ってしまおうというモードになっています。
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モノの価値を楽しみながら、使い捨てにはしないというのが、今っぽいかなと思うのですが、企業から見ればこういう取引はあまりうれしくないのだと思います。社会的にも、こういうやりとりはGDPにあまり効かないので、新品をどんどん消費する社会の方を望んでいるのでしょう。しかし、生活の質としては、使いたいもののは使いつつ、不要になったら人に使ってもらうという方が合理的で、ムダも少ない。使わないモノがため込まれていく社会を「GDPの成長が高い社会」と呼ぶなら、「オークションをうまく使う社会」を「質の高い豊かな社会」と対比してもよいはずです。
だとしたら、オークションが賑わう社会が、新品がどんどん売れる社会より、「寄り豊か」という判断になってもよく、こういう質の深まりを、これから僕たちはどう捉え、納得していくかが重要になると思います。生活と社会の質の高さとは具体的にどのようなものなのか、それを測る場面がたくさんあり、加点方式でスコアが伸びるようなことをするべきではないのか。GDPに現れない豊かさをどうカウントするかが重要、ということまで考えさせられる、ヤフーオークションでした。
あなたも、ぜひ、オークションで買ったり売ったりしてみてください。少し、世の中のことが深く理解できるのではないかと思います。
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