(by paco)448米国のユダヤ人が政府を動かすメカニズム

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(by paco)[おとなの社会科セミナー]04ユダヤと米国 のday3が終わりました。今回はユダヤ人たちがどのように米国政府を動かしているか、そのメカニズムの発見です。

前々回確認したとおり、米国にいるユダヤ人は550万人ほどで、人口の2%にも満たない勢力です。そのままでは大きな影響力を行使することはできず、米国の外交政策もユダヤ人よりになることはまずありません。しかし実際には米国のユダヤびいきの行動は度を超しており、第二次大戦後、国連の安全保障会議で行使された拒否権の半分以上が米国によるイスラエル支持のためのものです。それほどの「ひいき」を、ユダヤ人たちはどのように実現したのでしょうか。

彼らの行動は、決して奇抜なものでもないし、非合法なものでもなく、実にオーソドックスです。しかし、考えられるあらゆる方法と徹底的に実行することで効果を上げている。この、あらゆる方法をとること、それを徹底的に実行すること、というあたり前のことをやりきれるかどうかが、結局のところ、小が大を動かせるかどうかの決め手になるのです。

その方法を具体的に見ていきましょう。

最上流工程としては、シンクタンクによる調査と論文があります。ハンチントン教授が書いた「文明の衝突」という本がありますが、キリスト教文明とユダヤ文明が対立を深め、文明同士が衝突して、世界の状況が一変するというような内容です。あくまで論文ですから、事実を積み重ね、推論して、将来こうなるだろうという予測を書いています。

このような長期的展望を書いた論文と並行して、もっと短期的な情勢を分析した論文が多数です。たとえば、イラクのフセイン元大統領が密かに核開発をしていて、武力を背景に周辺産油国を支配する意図があるとか、イランが核開発をしているとか、イラクにアルカイダがいるとか、そういう類の分析論文がたくさんだされます。

こういう分析は、AIPACというユダヤ系のシンクタンクを筆頭に、外交問題評議会とか、ブルッキングス研究所など、大小数十あるといわれるユダヤ系のシンクタンクにいる数千人に上る外交や経済の分析者が次々と書いて発表していきます。並行して、情報のリークも行われ、ホワイトハウスで大統領補佐官をしているユダヤ人、国務省(外務省)で情勢分析をしているユダヤ・シンパなどが、「イラクがテロを企んでいるのを未然に防いだ」というような情報を「政府筋の話」などとして、メディアにリークするのです。

数十年先の未来を予測する専門書、数年単位ぐらいを見越した論文を出したところに、ちょっとあやしげなリークネタをメディアに流すと、メディアは「実はこの未遂事件は、○○という論文に、起こりうると指摘されていた」などと書いてくれます。専門家のお墨付きをもらったようなものなので、リークネタはあたかも真実のように見えるのですが、実際には根も葉もないねつ造だったりします。

実際、2003年、ブッシュJr.政権下でイラク戦争に突入する際、当時のパウエル国務長官が国連で説明した「イラクに大量破壊兵器がある証拠」というプレゼンテーションは、根拠がない話だったことがわかっています。

真実であるかどうかは、そのイシューによってさまざまですが、場合によっては真実ではなかったとしても、あたかも危険が迫っているかのように見せて、あるいはアラブ側の萌芽より悪い、というような説明を示して、ユダヤ人(イスラエル)の行動が正しいのだと強引に理解させてしまうこともやってしまうのです。

もちろん、すべてが嘘というわけではないにせよ、嘘や拡大解釈も辞さない、という姿勢が見て取れます。

ではなぜ強引なロジックであっても、政治家がそれを受け入れてしまうのでしょうか。

ひとつは、ユダヤ系シンクタンクの研究者が、政治家(国会議員)との間に、日常的な信頼関係を構築している点があります。政治家は、国会で法律を作るのが仕事です。米国の最新兵器をアラブの国に売ってもよい、というような法律を作ることもあります。アラブは産油国ですから、米国のエネルギー戦略上、アラブに最新兵器を提供することは意味があるのです。しかしこれはイスラエルにとっては反対に脅威ですから、何とかやめさせなければなりません。この法案に賛成するか、反対するか迷っている議員に対して(米国では基本的に判断は個々の議員であって、党議拘束ではありません)、この法案によってアラブに兵器が渡ることがいかに危険か、データとロジックを提供してくれる人がいれば、そちらの考えに傾くのは無理もありません。AIPACはじめ、ユダヤ系シンクタンクは、政治家に密接に関わってこういった情報を提供したり、場合によっては研究者を政策補佐官(日本でいう、政策担当の議員秘書)になって、情報を議員にインプットするので、議員は自然にユダヤよりの政策を支持するようになるのです。

事情はホワイトハウスでも同じで、ユダヤ系シンクタンク出身の補佐官がホワイトハウスに入ることが多くなるにつれて、ユダヤよりの外交政策がとられるようになりました。

このような状況は、1960年代のケネディ大統領のころから始まり、70年代以降、民主党政権のときに顕著になってから、80年代以降は共和党政権でも、どの政権にも見られることになります。

特にブッシュJr.政権は、父親のパパ・ブッシュの失敗に学び、特にユダヤよりの政策を採り続けました。パパ・ブッシュは、政権後半に中東和平を支持してイスラエルに厳しい政策をとったために、2期目を争う戦況に「反ブッシュキャンペーン」をユダヤ人たちに貼られて、大きな失敗もなかったのに、1期で退任することになりました。ブッシュJr.はこの轍を踏むまいと、8年間、一貫してユダヤよりの政策を採り続けたのです。

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前回までの内容と合わせてみると、ユダヤ人の戦略が見えてきます。

まず、米国の多数派「キリスト教右派」と同盟をくみ、きわどいながらも、キリスト教右派からつよい支持を獲得したこと。これで数を抑えることに成功しました。

次に、長期的、中期的な世界展望についての論文をシンクタンクを通じて発表し、ユダヤより(イスラエルより)の政策をとることが米国や世界平和にとって重要だということを、長期的で抽象度の高いメッセージとして打ち出す。

政治家や大統領を補佐をする立場を獲得し、具体的な外交政策や外交関連の法律をつくる際にユダヤよりのものになるように情報をインプットし、実際に法案や政策を実現してしていく。

さらに、こういったユダヤ寄りの政策や法案に反対する政治家に対しては、選挙区に「刺客候補」を送り込み、資金を集中投下してアンチキャンペーンを張って落選させてしまう。同じようにユダヤ寄りの政策を否定する情報を流すメディアに対しては、街頭デモを行ったり、反論メールを大量に送りつけるなどして、びびらせる。トラブルを抱えるメディアには一般に広告が付かないので、メディアは早急に方針を転換させてしまう。このような方法で、実際にメディアの報道方針を変えさせ、大物政治家を何人も落選させているのですから、政治全体がユダヤ寄りになるのも無理からぬことです。たった2%のユダヤ人が、世界最強の米国外交に、もっとも強力な影響を与えているのです。

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このようなユダヤ人の行動から、何を学ぶべきなのでしょうか。

もちろん単純に、「ユダヤ人はとんでもない身勝手な人たちだ」と考えることもできるでしょうが、ほかにもいろいろあるはずです。

次回day4では、受講者に自分なりの学びを持ち寄ってもらい、ディスカッションする予定です。そのまえに、僕の考えを少し書いておきます。

1つ目は、ユダヤ人のしぶとさです。少数派であっても、偏見を持たれていても、自分たちの正当性を信じ、腐ることなく、主張し続け、自分たちのあるべき状態(イスラエルの存続と成功)のためにできることはやり切ろうとする姿勢があげられます。ユダヤ人たちも最初からうまくやったわけではなく、失敗や敗北もたくさんしているのですが、そこであきらめずに、そこから学び、次の成功に向けて手を打ち続けてきました。しかも、狙っているものが大きく、世界最強国の外交に最大の影響力を与えるというスケールですから、壮大さにびっくりします。

2つめは、レバリッジの効く方法を常に探している点です。最大のユダヤロビーであるAIPACでさえ、職員は300名ほど。議員だけでも上下院で600名以上ですから、300名という数が多いとは言えません。しかし600名の議員のうち、外交政策に影響力があるのは、いわゆる外交畑にいる一部の儀異であり、ほかは、専門家のいう方向になびきがちな人も多い。つまり、ユダヤロビーのねらいは外交につよい議員への影響力であり、だとすれば、300人という数は決して少なくないのでしょう。もちろん、キレモノをそろえてパワーアップしているはずです。一方、シンクタンクを機能させるコストは、300名の組織を寄付などで運営するのはたいへんであるにせよ、富豪の寄付で養う人数としては決して多すぎません。十分可能でしょう。もっとも高家庭ナ方法を徹底して行っているのがわかります。

3つめは、特定のヒーローが不在だという点。これだけのアクションをとるには、普通なら強いリーダーシップがあったと考えがちですが、ユダヤ人には誰もが知るようなヒーローは不在で、何人かのキーパースンが交代で登場するのみです。特定の人が表に出すぎることで、悪玉ヒーローのようになることを防ぐ目的があると思われ、おそらくそのように仕向けているのだと思います。

今、この「おとなの社会科」を次の僕の主力ビジネスにすべく推進中ですが、しぶとく、レバリッジを狙いながら、お山の大将にならないように進めていこうと思っているのですが、これも僕がユダヤから学んだこと、なのかもしれません。

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