(by paco)あなたは自分自身のプロモーションをしたことがありますか?
会社員の場合、転職のときに、自分の職務経歴書をつくって、面接でアピールするのはセルフプロモーションのひとつです。転職しなくても、社内公募に応募するとか、移動願いを出せば、同じような体験ができるかもしれません。
僕のようなフリーランスの場合、プロモーションは通常「営業」と呼びます。この場合、具体的に仕事を出してくれそうな相手先に、訪問したり、メールを送って、「ヒマなんですけど、仕事ありませんか?」「こんな仕事ありませんか?」「こんな仕事ができます、暇なんでお安くしておきますよ」というメッセージを送ることを指します。広告業界では、こういう営業はごく普通のことなので、暇になると営業の電話をかけたり、メールを投げたりということは今でもやっていると思います。
先日、若い後輩と話していて、改めて感じたのですが、フリーランスになって20年、これと行って「営業」をしないで仕事を続けてきました。これまで、仕事がなくて困ったこともあれば、来すぎて困ったこともあるのですが、決定的に追い込まれることもなく、決定的に仕事をあふれさせて信用を失いこともなく、やってこられたことに改めて気がつきました。これはびっくり、奇跡的なことです。
もちろん、仕事がなくて困ったことは、一度ならずあります。バブル崩壊後の95年前後は特に仕事が足りなくて、子供も小さかったし、けっこう追い込まれました。助けてくれた人もいて、何とか生活を維持しつつ、その後の仕事の波に乗ることもできました。決して順風満帆だったわけではないし、それは今も同じです。
2009年末というこのタイミングでいうと、仕事量は不足気味で、もうちょっと仕事を獲得していく必要があります。不況ということもあるでしょうが、僕の仕事の収益構造が論理思考系の研修仕事にシフトしすぎて、偏りが生じていることも理由だと思います。やはりひとつのことに重点が置かれすぎると、その領域の波がそのまま仕事全体の波になってしまうので、生活は安定しなくなります。
稼ぎ頭の論理思考系の研修をもっと獲得するために努力するのは重要です。やはりコアになる仕事はしっかり押さえておくべきです。でも、それだけでは足りない。仕事の運にかげりが見えるときほど、これまでの仕事にしがみつくことなく、次の仕事に展開するチャンスと捉えて行動することが大切です。ということを、論理的にも、これまでの経験的にも、学んできました。
で、そろそろちゃんとセルフプロモーションする時期かなと思っているのが、2009-2010というタイミングです。
◆これまでのセルフプロモーションは、「やったことの発信」型
もちろん、これまでもセルフプロモーションはやってきました。やらなければ、これだけたくさんの仕事を依頼されることはありません。しかし、ここ10年ぐらいは、こちらから積極的なアクションをとらなくても、ある程度満足のいく仕事が来ているというよい循環がありました。その循環を維持するためにやってきたのが、これまでのセルフプロモーションです。
その中核は「やったことを発信しておく」ということです。毎週書いている「this week」はその一例で、これはいわば週報として、今週何をやったのかを発信しておく、と言うものです。ただ書いておくだけなので、誰がどのぐらい見ているかはまったく管理していません。興味のある人は読んでいるという感じですが、実際にはなじみの取引先の人と会うと、「this week」にしか書いていないことを話題に出されたりするので、読んでくれている人も意外にいるのかも、と思います。
ちょっと興味深いことをやったり経験したときには、知恵市場に記事を書きますが、これはメルマガになって1300人ぐらいの方に届くし、これとは別に僕が直接名刺交換した方向けにMailnewsを流しているので、こちらでもどんな活動をしているか、おおむねわかります。これも1300名ぐらい。
相手先から見れば、受け取るメルマガは多いので、ほとんどの方は読まずに捨てているのだろうなと思うのですが、それでも「環境の勉強会をやっている」こととか、「行政刷新会議で仕分け人をやった」こととか、会ったときに話題にしてくれる人も多いので、タイトルぐらいは見てくれているのだと思います。
まるやまうぇぶで書いていることや「ヤマガラの森」のイベント情報などもけっこう知っていてくれる人が多い。
とはいえ、これらの情報発信は、ばらばらとはいわないまでも、あまり戦略的にまとまっているとは言えません。どちらかというと、そのときどき、やったことを発信しているという感じで、受け手の方から見ると、たまたま目にしたメルマガや、ときどきサイトに寄ってみると、あ、こんなこともやっているのかとランダムにインプットしているという感じで、そういう距離感で今までやってきました。
これまでの10年ぐらいは、それが結構うまく機能していたらしく、仕事の量、バリエーションともに、わりといい感じで推移してきたのです。これ自体、奇跡的だし、ありがたいことです。
でも、今というタイミングは、このやり方を変えるときかもしれないと感じ始めている、というところです。
◆何を、どう考えてやってきたのかを整理する
セルフプロモーションを始めるにあたって、やらなければならないことは、過去の整理です。通常は「キャリアの棚卸し」と呼ばれていますが、僕の場合は棚に乗っているわけではなく、あちこちにとっちらかっているので、回収する必要があります。
幸いなことに、NPOから業務履歴を送ってほしいという依頼を受けたので、これを期に整理してみました。
こういう情報の整理は、まずどのようなカテゴリーで整理するかを考える必要があります。このファイルでは、「著書」「連載」「講演」「企画」「行政審議会等」「研修」という5つのカテゴリにしましたが、単純に時系列にする方法もあるでしょう。また、基幹があるものと無いものもあり、これをどうするかも悩ましい。開始時期のみの記載にすると、やたらに古い情報になったりしますが、今も進行中のものだと、息の長い仕事になります。このあたりを考慮して、どのように記載するかを考える必要があります。
何をやったのかも、ある程度内容を書く必要がありますが、あまり長くなると一覧性がなくなります。統一感も問題になります。正確な名称にこだわると、それだけで行がいっぱいになってしまうこともあるので、うまく省略することも重要でしょう。
どのぐらい古いものをのせるかも問題です。業務経歴は20年以上になりますが、書記は広告案件ばかりなので、今これを載せることには意味がないと判断し、ここでは過去10年ほどに限定しています。ただし、本だけは最初の本である1995年から入れています。
実際にどのようなことをやったのかは、記憶をたどってということになりますが、そうはいっても全部覚えているわけはありません。僕はいくつかの方法で仕事を整理しているので、それをベースに探しました。ひとつは、PCのハードディスクにある仕事のデータファイルです。僕は過去20年以上のファイルをほぼすべてそのまま取ってあり、仕事の案件ごとにフォルダに分けています。古いものは「保管箱」などのフォルダにまとめていますが、いずれにせよ、見るべき場所はわかっているので、フォルダを探せばどんな仕事をしたかわかります。中にあるパワーポイントのタイムスタンプを見れば、いつの仕事かもわかるので、これでほぼすべての仕事リストがわかります。
さらに、うろ覚えの仕事の場合は、「日記」を見ます。日記は、メールソフトのBecky!の「予定表プラグイン」を使って、毎日前日やったことを記録してきました。これが2003年6月からあるので、かなりさかのぼれます。それ以前は、アウトルックには行っていますが、こちらは純粋に「予定表」なので、会議などの予定が入っていない日は空白です。それでも職務履歴をみるには十分です。
こういう情報は、やはりきっちり付けておくとあとになっていいことがありますね。同じソフトで書き続けることが大切で、アウトルックを使っているのも、これなら一番アプリが長持ちするだろうと読んだからです。Becky!の「予定表プラグイン」は記録用なので、アウトルックで今後の予定を入れて、Becky!予定表で実際にやったことを入れていく。まれに予定と食い違っていることもあるし、当然Becky!予定表のほうが詳しくなるのですが、これは情報を二重化する意味もかねてやっています。アウトルック、Becky!、どちらかのデータが壊れたり、アプリそのものを使わなくなっても、他方は活きていることを期待しているわけです。
ちなみに会社員の皆さんは、会社のPC上で管理している人が多いと思いますが、必ず個人的な予定や日記を残しておくべきでしょう。会社はいつ辞めることになるかわかりません。データを持ち出すことは困難ですから、自分の職務履歴の記録は、自分で持つべきです。グーグルカレンダーなど、ウェブサービスを使う人も多いと思いますが、これもいつサービス終了になるかわかりませんから、手元のPCに書き戻せるものを選ぶといいでしょう。グーグルは手元のアウトルックの予定表と同期させるソフトが用意されているので、僕はアウトルックとグーグルカレンダーを同期させています。
細かいことのようですが、こういう整理をある程度きちんとやらないことには、自分のプロモーションの方針も決まりません。
◆アイデンティティを再構築する。
情報が集まったら、現状の何が不足していて、どのように改善すればいいのかを考えます。
やはり感じるのは、やっていることが幅広く、多彩で、かつ業務経験も長くなってきたので、何をやっている人なのか、どのようにやっているのか、どのような思想の元にやっているのかがわからなくなっている、という点です。自分のアイデンティティの全体像を明確にすることはとても重要ですが、僕のような仕事のやり方をしていると、これが難しい。数年ごとに、自分のアイデンティティの再構築が必要です。
今使っているのは、「論理思考/環境/ライフデザイン」の3領域を、「講師/著述/メンター」の3つの仕事の形態で行っているという表現をしてきたのですが、これを考えたときはずいぶんまとめられてよかったと思ったのですが、それでもやや広がりすぎで、もっとはっきりしたアイデンティティを打ち出す必要があるのではないかと思っています。これについては、この冬休みの僕の課題なので、もう少し考えてみます。
次に、実際に何ができるのか、潜在顧客にとってわかりやすい提供サービスと効能を明らかにする必要があると思っています。実のところ、定番のロジカルシンキングセミナーにしても、どのようなカリキュラムなのか、何を目的としているのか、ほかの同種のものとどう違うのか、実施の手順や料金などは、ウェブに載せてきませんでした。それ以外のいろいろな仕事についてはさらにひどくて、やってはいるけど、なぜ僕にそれができるのかも説明がなく、何でも屋というか、像が結びにくくなっていると思います。これまでは曖昧なところがひとつの売りとして考えてきましたが、これからはもうちょっとクリアにやるべきことを打ち出していきたい。僕自身の仕事の方向がさらに進化・特化したこともその背景にあります。
問合せ方法や、実施までの考え方についても、より情報量を増やして、新設にする必要があるでしょう。こうしてまとめた情報を、まずはウェブに掲載し、それをメルマガなどで告知するのが、年明けの課題。その上で、何らかの機会をつくって、潜在顧客の皆さんにプレゼンテーションする機会を用意しようかと思っています。また、講師の紹介サイトというのがネット上にいくつかあり、こういったところにも登録してみようと思っています。これまでもいくつものサイトから掲載を打診されていたのですが、多忙を理由に放置してしまっていました。今後、僕がやっていく方向に合わせた形で、こういったサイトにも情報を入れていこうと思っています。
こういった作業の上で、今年後半にやってきたwhat?セミナーや、知恵市場の今後の方針を位置づけていこうと思っていて、なかなか雄大な話になりそうです。せっかくの年末年始なので、こんな作業に時間を使おうと思っているので、年明け、1月10日ぐらいまでには、形にしたいと思っています。
何ができるのか、どのように仕事を進めるのか、といった情報を明確にして、それを僕を知ってくれている皆さんに提供することで、これまでとは違った新しい仕事、新しい想像につなげていきたいと思っています。
と同時に、読者の皆さんにも、自分は何者なのか、どのようなことをやってきて、これから何をやりたいのかを明確にするためのヒントが個々に提示できたらいいなと思って書いてみました。そうそう、写真もよく求められるのですが、かなり前の写真でお茶を濁してきました。髪型も変わっているし、今回は新たにプロフィールように撮り下ろしています。セルフポートレートにしてみました。
ということで、もろもろ仕上がったらお知らせしますので、しばしお待ちください。
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