(by paco)今週も、先週に引き続き、政策提案の意味合いについて考えていきます。
(4)再生可能エネルギーを増やすにはどうしたらいいか。
◎取り上げたい意見
・太陽光発電によるキャップアンドトレード
・太陽光普及をNPOに委託
・太陽光の普及(固定買い取り/バッテリとセットで使い切り)
・太陽光パネルの普及
・太陽光パネルを市内小中学校に設置
ソーラー発電パネルについての提案は、たくさん受けました。そして、可能な限り早く、大量の普及が実現するように、政策面、予算面で、支援する必要があります。
ソーラーパネルについては、国もようやく重い腰を上げて、設置費用の補助再開に踏み切り、来年度からは助成が始まります。一方東京都では国の助成が決まるより一足早く、都の助成を決めていて、さらに都下の区や市も独自の助成を予算化し始めました。これにならって、県や市で助成するところも増えてきています。こういった助成のほとんどは、重複して利用ができるため、今年はパネルの普及が一気に広がると思います。
横浜市でも助成は検討することになりますが、方法は検討するべきです。購入に際して、1KWで数十万円という助成を行う方法はわかりやすいのですが、別の方法もあります。東京都では、一律でお金を出すのですが、そのお金は助成ではなく、パネルで発電された電気の「環境価値」を都が買い上げるという形を取っています。
買い上げた電気の環境価値(カーボンクレジット)は、都がいったんプールし、削減義務を課された企業に販売する計画です。都ではCAP&TRADE方式の排出量取引を実施することにしていて、大規模排出事業者に排出上限(CAP)を貸し、自助努力で削減を促します。自らの努力で削減しきれない分を、都が都民から買い取ったカーボンクレジットを売却することで回収しようというしくみです。
横浜市は、先行する東京都とも連携して、CAP&TRADEの導入を検討していますが、それに向けて、太陽光パネルの設置助成も、カーボンクレジット方式にするべきか、という点が論点のひとつになります。
すでにCAP&TRADEの実施準備が着々と整ってきている東京都に対して、横浜市など周辺自治体は、準備が数年分遅れています。最短で後を追うにしても、タイムラグがあるため、クレジットの買い取りから売却までの間をどう考えるか、十分議論を深める必要があります。
かつては、環境にいいものなら税金を使ってでも普及させようという考えが普通でした。今でもそういう場面がたくさんあります。しかし、税金を使うにしても、ただだしっぱなしにするよりも、何らかのしくみを社会に定着させ、市場原理や民間のアイディアが活かせるような方法をとることで、同じ税金がより多くの効果を生む可能性があります。
その一方で、そんな議論をしているヒマがあったら、とにかくさっさとお金を出して普及させるべしという考えもあり、それも理解できます。
何を実現するために、どんな方法をとるのか。貴重な財源(税金)をどう活かしていくのか、委員と職員の知恵の見せ所です。
・グリーン電力の固定価格買い取り制度
この場合の「グリーン電力」は、横浜のような市街地の場合、ソーラーパネルが主流にならざるを得ないのですが、小型風車や、次で触れる太陽熱も忘れることができません。制度設計や政策立案では、その時の流行やトレンドを押さえつつも、長期の運用に堪えるものをつくっていくべきで、間口を広げておくことも重要です。
小型風車は、僕がここ数年注目し、普及を目指しているツールです。小型風車の性能は急速に進歩していて、小風力で大きな出力が得られるものが開発されてきました。また系統連係といって、電力会社の送電線に接続できるシステムも開発され、ソーラーパネルとコスト的にも同等かそれ以下が可能になってきました。ソーラーパネルが日中しか発電しないのに対して、風車は24時間発電が可能であること、屋上緑化都競合せず、緑化しつつ風車を設置することができて、ヒートアイランド対策と両方を実現できること、高層ビルのビル風を提言し、かつ発電できることなどを考えると、大都市に向くシステムと言えます。グリーン電力をソーラーパネルに限定しないという考え方は、重要な意味を持ちます。
・太陽熱利用の普及
太陽エネルギーの利用は発電だけでなく、単純に熱として利用する方法もあります。屋根に黒いゴム袋を設置し、そこに水をれておけば、日中の光で暖められて、夕方には50?70度ぐらいになり、風呂などに使えるというソーラーシステムは、低コストで、70?80年代にかなり普及しました。しかしメンテナンスが滞り、使われなくなったまま、屋根に置かれているものがふえてしまたこともあり、いつしか顧みられなくなりました。
今手に入る太陽熱温水器は、以前と同じ、水を直接温める方式のものと、熱媒を使うものの二種類です。熱媒を使う方式は、屋根に載せるパネルの中を通す熱媒(不凍液など)をいったん太陽熱で暖め、その暖まった熱媒をガラス管を挟んで水道水と摂食させて、お湯にする間接加熱方式です。この方法だと、直接水を温めて利用するより、お湯の品質が保てるため、安心して長期間利用でき、メンテナンスも楽です。システム価格は高価になりますが、それでもソーラーパネルの数分の1であり(住宅用で100万円以下)、コストパフォーマンス、エネルギー効率ともに、有利で、世界的に注目されています。
では太陽熱利用はどのような方法で普及させるとよいのでしょうか。
ソーラーパネルと同じように、つくったエネルギーをクレジット化して買い取る方法が東京都で検討されていて、横浜市でもこれに習うことになるかもしれません。初期コストが安いので、同額の税金を有効活用できますが、新築時や給湯設備の更新時でないと設置が難しいのが難点。その点、ソーラーパネルは、既存の建築物にも設置できる利点があり、太陽熱温水器と棲み分けることになるでしょう。
太陽熱温水器にはもうひとつ弱点があります。温水をつくることで、どの程度のCO2が削減できたか、カウントが難しいのです。ソーラーパネルの場合は、発電量が正確にメーターでカウントできるので、それを元に削減量が算出できます。温水器も、太陽熱でどの程度のお湯がつくれたかまではわかるのですが、それが利用し切れたかどうかは判断しにくいのです。システム的には、太陽熱だけでは冷めてしまう可能性があるので、都市ガスの加熱器をつけるのが普通です。日中、充分に暖まったあとで、すぐ使えばいいのですが、深夜まで保温の状態で放置し、再加熱して風呂に使うと、実際の削減量がわかりにくいのですね。この問題はシステム上つきまとうものなので、ある程度割り切って、概数で削減量を図るしかないだろうというのが、トレンドになっています。
・木質(剪定木)バイオマスのエネルギー利用
これは以前から僕が提案してきたもので、市民からの提言もあったので、ぜひ実現に向けて、答申にも盛り込みたいところです。
・エコ宝くじ
このプランは、市内の大学生チームからの提案で、すでに市のスタッフを含めて真剣に検討されています。300円の宝くじを温暖化防止を前面に押し出して販売し、予定の1000万枚(1セットという単位で呼ばれる)が完売すれば、数億円の余剰金が市に入る、というしくみです。問題は、1000万枚という単位が完売するかどうか。これまでの販売データなどをもとに、検討が進められています。
(5)事業活動
◎取り上げたい意見
・産業政策との連携→小口CO2削減分の取引
・ワンウェイ容器の禁止←韓国では法制化
・燃料電池/エコジョーズの普及
・組合単位でグリーン電力証書を購入制度
・電力監視システムの導入補助金、省エネ機器の導入に補助金を
・大規模事業者の協定書制度←環境計画書制度の届け出の拡充
事業活動全般にCO2削減をどうやってやらせるかという観点では、すぐ上にある「環境計画書制度」を軸に推進する手法が、かなり一般的になってきました。計画書制度は、まず大規模な排出事業を対象に、削減の「計画」をつくり、計画書を「提出」することを義務付けることから始めます。最初は提出すればいいのですが、当然、削減目標は、市全体の目標と整合性をトルコとが推奨されます。市の目標は、2025年(16年後)に30%削減なので、最初の3年の計画でも、5?6%程度の削減量が必要です。
その後、計画期間が終わる段階で市がチェックし、削減量が不足したり、計画が甘い企業は、立ち入り検査や企業名の公表などの実質的なペナルティを科すことができるという制度が、先月の市議会で通過し、成立しました。カバー率もかなり高くなったので、企業には厳しい自主目標が課されることになり、その計画の中で、上記のようなしくみを自主的に取り組むことになります。
助成などの支援策がどの程度必要なのかも、計画書の運用をベースに進めることになると思います。
◎採用が難しい意見
・省エネ機器への助成
・企業の環境活動に市からの助成金がほしい
・夜間営業規制(コンビニ、ゲーセン、TV、自販機)
・屋内の自販機の照明消灯を促進する
一方、こういった意見については、現段階では難しいと考えています。省エネ機器への支援はしたいのですが、基本的には省エネによって削減できるエネルギーコストで回収するのが本筋であり、初期コストを低利で貸し出すことで、回収しやすくするのが、王道です。
深夜営業や自販機の照明を自粛するといった方法は、市が制度で強制するより、削減目標をクリアするために、それぞれの企業が何に取り組むかという観点で選択すべきことで、方法論まで市が支持することはよくないというのが、委員の意見です。
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3回に渡ってざっくり見てきたとおり、市の政策立案までにはさまざまなプロセスを経ていく必要があります。他の市ではここまでていねいにやっていないところもあると思いますが、横浜市は環境モデル都市の立候補の段階で、「市民との協働」を掲げていて、こういう意見聴取もその一環です。
聴取後、最初の審議会が先週あり、上記のような議論が、各委員からだされました。このあと、僕ともう1人の委員で議論をもとに、審議会の答申のドラフトを書くことになっていて、作業に入ります。
この答申の作業が4月いっぱいで終了すれば、実効監視のフェーズに入ることになり、いよいよ本丸です。
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