(by paco)僕のライフワークのひとつ、「Life Design Dialogue」。今、何人の人が来ているのかカウントしていないのですが、だいたい20名ぐらいです。
今週は、Life Design Dialogueって実際のところ、どんな風にやっているの? という話をしましょう。
■スタートはゆるく
「あなたは今日からLife Design Dialogueのメンバーね」というような仕切をしていることもなく、たとえば昨日まで仕事上の付き合いの人が、「相談に乗ってもらえませんか?」という感じで始まるので、契約書を交わすワケでもなく、いつからいつまで、というような約束をすることもありません。「今日は自分の仕事や生き方の話を聞いてもらうために会いに来た」と思っている人は、僕にとってはすべてLife Design Dialogueのクライアント、ということになります。
けじめなく始めてけじめなく進む、という感じですが、もともとけじめという言葉自体あまり好きではなくて、けっこうゆるい方が好きな人なのです。仕事の場合は、けじめがあった方がやりやすいことが多いので、たとえば研修の時は、「おはようございます」や「こんばんわ」でスタートして、「おしまいです、お疲れ様でした」で終わるというやり方ですが、儀式性はなるべく少なくして、おっ、始まったのか、さくっと終わったなという感じで、盛り上がらない方がいい感じです。
Life Design Dialogueは個人ごとの対応ということもあって、余計に決めごとなく、さらっと始めます。なるべく自然に、構えなく話し始められるようにすることを意図している、という感じですね。
実際のところは、「こんなことを話したいので、時間をください」というメールが届き、お互いに時間を合わせて、喫茶店やレストランなどで話をするのことが多くなります。先週は偶然も重なって3名お会いしたのですが、ひとりは恵比寿ガーデンプレイスの和食店「音音」で夜に、2人目は自由が丘のイタメシ「ラ・ボエム」でランチ、3人目はまたまた恵比寿GP内のカジュアルフレンチ「MINA」でランチという感じです。僕のアクセスを少し優先してもらって、自由が丘から大崎、目黒、恵比寿、渋谷あたりで会うことが多くなっています。
おいしいお茶や食事をとりながらというのは、やはりリラックスできるし、楽しくていいものです。
■まず、状況を聞く
実際に話し始めて、まずすることは、状況の確認です。
これまでのキャリア、年齢、仕事のコアコンピテンシー。そしてこれからやりたいキャリアプラン、生活面でやりたいこと、独身なのか、結婚しているのか、予定はあるか、子育てなどの状況。
とはいえ、これも一つ一つ根掘り葉掘り聞いて、メモをとるようなことはしません。メールの段階でわかっていることも多いし、わからなくても、わからないなりに進めることもよくあります。年齢や学歴など、通常のキャリアコンサルティングでは必ず細かく聞かれ、コンサルタントがヒアリングシートにメモするようなことも、あまり聞きません。年齢は、仕事の経歴を聞いたり、用紙を見ていればだいたいわかるものだし、正確にわかる必要もありません。30歳なのか、32歳なのかはたいていの場合、本質的ではありません。5歳違うと、アドバイスの内容が変わることがありますが、いちいち聞き出さなくても、5歳違って勘違いすることはまずありません。たとえば、「バブル入社組」「バブル崩壊後の就職氷河期に入社」などと聞けば、だいたい3?5年の誤差でわかるものです。
このあたりも、カウンセリングというより雑談に近く、なるべく話し手が話したい順番で話してもらうようにしています。その方が、ラクに話せるし、本当の気持ちが出てくる。大事なことはクライアントの本当の気持ちを知ることで、僕はそこにフォーカスして、僕との関係が信頼の置けるもの、話しやすく、自然に自分のことをどんどん話せる状況をつくることに集中します。そのためには、話の順番が入れ替わったり、話す内容が論理的に整理されている必要はなく、きちんと話そうとすることで、気持ちがこわばってしまうことこそ、もっとも避けるべきことなのです。
クライアントに論理的な思考を求めることはほとんどありません。なぜだと思いますか? 僕はこのDialogueの半分は、僕の論理思考力のレンタルだと思っています。クライアントが自分のことを論理的に分析するのはかなり難しい。仕事とのイシュー(営業成績や組織のことや)ならまだしも、自分のこととなると、きちんと論理立てて考えるのは余計に難しくなります。論理思考を学んでもらい、そのやり方を自分自身に応用して、自力で考える力を付けるのは一番ですが、自分の外部にある仕事のことさえ難しいのに、自分の気持ちの奥に入って分析するのはさらに難しい。だからこそ、その難しいことを僕が本人に代わって代行して、「こういう論理で結果をしたいという話でいいのかな?」というように、提示することで、整理し、全体像を把握することが、僕の役割になってくるわけです。
こういったインタビューのやり方を、僕はコピーライター時代に身につけました。インタビュー相手に以下にスムーズに、気持ちよく話してもらうか。そのためには、相手のペースや話し方のクセを早く把握して、それに合わせて聞き出すことだということを体験を通じて学んできたわけです。
もうひとつ、話をするときに、メモをとらない、というのもあります。メモをしてもたいていメモを見返したりはしないものだし、メモをとられていると相手は落ち着かないものです。きちんと聞き、自分の頭で味わい、状況をイメージすることで、メモをとらなくても話の核心部分はちゃんと記憶に残ります。
その代わり、細かいところは記憶しません。相手が銀行出身だとして、メガバンクということぐらいは覚えますが、それがみずほなのか三菱なのかと言ったことは、無理に覚えない。わからなくてもたいてい困らないし、必要ならその時に聞けばいい。最低限で頭に入れるべきことを、脳の中にマッピングするようなイメージで、覚えてしまうのが基本です。
■話ながら、聞き出す
僕のやり方のもうひとつの特徴は、僕の方から話ながら聞き出すというやり方です。たとえばコーチングでは、コーチは質問することに徹して、クライアントの言葉が自ら出てくるまでだまって待つというやり方をします。
これに対して僕のDialogueでは、こちらから積極的に話しかけます。しかしこの話し掛けは、僕の考えを相手に伝えることが目的ではありません。僕からの情報を相手がどのような反応を返してくるか。その返し方を見ることで、相手の知識レベルやアクションプランを知ることができます。
環境など、僕がわりとよく知っている領域についてのことなら、僕からの話の内容をすでに知識として持っているなら、「よくわかっている」という判断になるし、よく知らないことについてなら、知っている領域について話してから、「同じようなことはあなたの領域にはないんですか?」というように、付け加えることで、僕がどういった深さのことを聞きたがっているかをそれとなく伝えていきます。
こういうやり方も、コピーライター時代のインタビューで身につけてきたことで、単に質問するより、こちらから例示するような話をしてから聞いた方が、ずっとスムーズに聞けるということを実践で学んできたのです。
■ゴールを確認する
だんだん核心部分に入ります。
Life Design Dialogueでもっとも重視しているのは、クライアントが本当にやりたいこと、実現したいことは何かという点です。どこかの段階で、これを明らかにしながら進める必要があります。とはいえ、すでにある程度明確な人と、「福祉関係の仕事」というぐらいで、仕事内容はもちろん、働くスタイルや雇われたいのか独立もありなのか、ということも含めて、漠然としている人が多いのが現実です。
漠然としているものを、こちらがいくら考えてください。決めてくださいと言ってもうまくいきません。
自分が何をめざして生きていくのかを決めることは、簡単なことではありません。特に日本人の場合、自分のゴールを決める邪魔をしているのが、「選択肢を広げる」「可能性の幅を広げる」という考え方です。
可能性を広げた方がいいのは、20代前半ぐらいまで。それ以降は、広がりすぎた可能性をどうやって狭めるかを考えた方がいいのです。
環境のことをビジネスにしたいとひとくちに行っても、森林関係もあれば、金融もあれば、環境商品、環境技術の開発など、さまざまな領域があります。環境金融という領域を考えたとしても、SRIのようなファンドもあれば、ベンチャーキャピタルやエンジェルの側に立って、環境ビジネスに投資する仕事もあるし、銀行で環境ビジネスに対する融資を行うこともできるし、寄付の窓口機能をつくる方法もあります(僕が関わっているPresent Treeもこのしくみのひとつ)。
環境×金融という領域に、どんな範囲が含まれるかという要素出しは充分にしておく必要があります。その結果として、はじめはSRIファンドを運営する投資信託会社に入ると言うぐらいしか思いつかなかった人が、上記のようなさまざまな仕事もあることに気がつくというところまでは「視野が広がっている」ことになります。しかし広がったままではどこに行けばいいか決まらないので、もっと狭めておく必要があります。
間口を広げておけば、仕事とで会う可能性は上がります。しかし出会った仕事が自分が求めている仕事じゃない可能性もあり、せっかく求めた仕事なのに、がっかりと言うこともよくあるのです。
間口は広げただけではだめで、「ここは行くべきではない」という道を見つけ出し、その道をふさいでおくことも重要です。
Life Design Dialogueではどんな幅があるかという話と同時に、どうやって狭めていくかの話をしていきます。ひとつの方法は、求人広告に応募して実際に企業から話を聞き出し、自分が望む仕事・会社かどうかを検討することです。仮に、その会社から採用通知がもらえそうという手応えを感じても、採用されればいいという受け身の姿勢になることなく、本当にその会社の仕事が自分の求めているものなのか、自分を主語にして考え抜くことが重要です。
いうまでもなく、ゴールとは会社に入ることではありません。今はすぐ取り組める仕事のことでもありません。大事なことは、その仕事の延長に自分がやっていきたいことがあるのかを注意深く吟味しなければなりません。
Life Design Dialogueではこの作業に特に力を入れています。「こういう会社に入れば……」「こういう仕事に就けば……」と考えるクライアントに対して、そのやり方で到達できそうな場所を示した上で、「それがあなたの望みなのか?」を繰り返し聞き、本当のゴールを探していくのです。
自分がめざすゴールがどこにあるのか。短期間で見つかる人は少ないのですが、ゴールを探すことを意識して行動をとっていくというのはどういうことなのかがわかるように、いろいろな角度から説明し、そしてもちろん、そこに行けるまで、中途半端な状態にたえつつ、学んでいくことこそ、Life Design Dialogueの本質と言えます。
人によっては、ゴールがひとつに定まらずに、しょっちゅう変っている人も多いのですが、変っていくことも含めて、ゴール(自分が何をしていくのか)にフォーカスを当て続けることが、Life Design Dialogueの最も大切にしている点です。
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