(by paco)384日本経済は踏みとどまる+環境ビジネスがブレイク直前

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(by paco)今週も、2本立てていきます。

★日本経済は踏みとどまる

以前、原油相場についての先読みをして、コミトンの記事を書きました。150ドル前後で、原油はピークアウトしているので、今後は下がることはないと言われていた時期です。このときの原油高は投機マネーによって上がっているので、いずれ、特にサブプライム問題の表面化に伴って下がる、ということを書いたのですが、実際原油価格は下降して、予想した60-80ドルラインに達しました。しかし、現実はさらに大きく下落し、今や40ドル台、さらに下落して30ドル台もありそうな気配です。そういう意味では、下落は当たりましたが、予想を超えて下がってしまったので、大はずれです、トホホ。

で、さらにしつこく、今後のことを予想してみたいと思います。原油価格は、おそらくこれ以上大きくは下がらないでしょう。サウジが原産を検討しているし、一方、ドル自体が暴落してくので、ドル建ての原油価格を見ても、価値がよくわからなくなるからです。

そこで、今回は、景気全般について考えてみます。

世界経済は「100年に一度」の危機とか言われていますが、それについてはよくわかりません。日本経済はどうでしょうか。

株式相場は乱高下しつつも下落傾向で、すでに40%ほどの金融資産を失ったことになります。主要企業の収支は一気に悪化して、レイオフも始まりました。日本の場合のレイオフは、期間工や派遣、請負の労働者を切り捨てることを意味していて、数百人、数千人単位のレイオフが発表されているので、影響は大きいと思います。正社員の早期退職勧告も始まっています。もちろん、経営者が見る景況感は悪化してます。

では実際の景気は今後どうなるでしょうか。

全体に悲観的な予想ばかりを目にすることが多いのですが、僕はこの景気悪化は、日本については、そう長くは続かないのではないかと見てます。だいたい、来年2009年の4?8月ぐらいには、一応持ち直し、安定するのではないかと思います。その後、再び上昇気流に乗るのかは、わかりません。下げ止まって低位安定かなと思えますが、世界経済の状況を考えると、意外に、日本経済は堅調になるのではないかとも思います。

その理由を考えてみましょう。

今回の景気後退は、国内要因ではなく、サブプライム問題に始まる海外からの圧力がきっかけです。しかし日本はサブプライムの不良債権を直接大量に持っているわけではなさそうなので、間接的な影響に留まります。株式相場の下落による資産縮小はありますが、それ以外の資産そのものが一気に縮小しているわけではないので、株式相場の下落が落ち着けば、デフレ圧力は小さくなると思われます。

その一方で、円高が進み、110円から90円にと、20%アップしているので、これによって、輸入による購買力は上がっています。原油相場が一気に下がっていることと会わせると、エネルギーコストはピーク時の5分の1程度に下がっているので(原油150→40ドル、円相場110→90円)いることは、日本経済にとっては大きなゆとりを生んでいます。また、金属など地下資源も、原油と同時に大幅に上がってきましたが、世界的な景気後退で相場が下がりつつある(金のような資産につながる金属は上がるでしょうが)ので、これも大きな効果になるでしょう。

食料品が下がることも大きいでしょう。今年は穀物相場が大幅に上がりましたが、これも、世界的な需給の逼迫以外に、原油に流れたのと同じ投機マネーが穀物市場に流れ込んだことが大きな理由です。サブプライムの爆発でマネーが縮小したので、穀物相場は本来の需給バランスに則った相場に落ち着くでしょう。そこに円高の恩恵が加わり、輸入コストは下がっています。

その一方で、今年は原油と資源、食料品の輸入価格の上昇に伴って、小売価格も大幅に値上げが続きました。企業はまだ価格の転嫁がすべてすんだわけではないものの、すでに値上げ前の状態にコストが下がっているものもあると思われるので、値上げした価格では、ものによっては大幅な利益が出始めるでしょう。食糧、物流を中心に、利益率が高まっているはずです。実際、ガソリン価格は、ピーク時の180円/Lに対して、すでに100円程度に下がってきているところもあるほどです。物流産業の場合、この価格差がすべて利益に回るのですから、不景気と言われつつも、ほくほくしている企業も多いのです。

円高になれば、国内の輸出産業は利益がふき飛ぶのですが、日本企業はここ20年かけて生産を海外に移していて、為替相場の上下に比較的影響されない体質をつくってきています。世界的な景気後退と消費原則で、需要は減るものの、円高による影響は以前のような直接的なものではありません。

僕がおつきあいしているさまざまな企業の人たちに、状況を聞いてみると、現段階で景気が大きく悪化していると応える人は意外に少なく、「影響はこれからでしょうか」という感じの話が多い印象です。景気の不安はあるものの、こういう時代だからこそ、人材への投資は縮小できない、という意見も聞きます。景気悪化で新卒内定者を内定取り消しというとんでもない企業も出ましたが、厚労省がいち早くこういう行動を牽制するという「よい規制」も機能しました。影響を大きく受けるのは、海外、特に欧州と米国での消費に頼った企業はやむを得ないでしょうが、アジアマーケットや国内マーケットが中心なら、軽微な影響か、むしろプラスになる要素もあります。

こういった、日本経済のファンダメンタルズが支えになって、国内経済がある程度持ちこたえていくと、今度は世界の中で日本経済が「大きな傷を受けていない」ことに注目が集まりはじめ、投資や消費刺激を含め、海外からのよい影響が日本に集まり出す可能性があります。すでに米国や欧州では、日本が「無傷」でいることを、敬意の目で見ていますから、このまま大きく崩れずに景気が持ちこたえれば、日本が魅力的な市場に見え、さまざまな投資やビジネス機会を求めて世界が集まってくる可能性もあります。

その一例が、携帯ビジネスに見て取れます。携帯電話サービスはこれまでは基地局インフラを自社で整備することが条件のように考えられてきたために、新規参入は莫大な投資と時間が必要と考えられてきました。しかし今年あたりからは、インフラをレンタルして、サービスだけを提供するキャリアが現れ始め、来年は世界の携帯電話界のリーダー、NOKIAがキャリアとして日本市場に入ってきます(ドコモの回線をレンタル)。端末の面でも、Windows Mobileを軸に、スマートフォンという新たなカテゴリが広がりはじめ([知恵市場 Commiton]382愛すべきモノたち(2) Touch Diamond、Scan Snap参照)、このところ安定期に入って目新しさがなかったケイタイの世界に、小さな二段目ロケットが転化する可能性があります。来年からは、1人2台目の市場が形成される可能性があります。NOKIAが成功すれば、ほかのビジネス領域でも新しいマーケット形成を狙って新規参入が起きるでしょう。

このように考えてみると、日本経済は必ずしも暗くはありません。というような理由で、今の不況に見えている状況は来年後半には別の展開になるのではないかと僕は見ています。

と書いておいて、また数か月後に、どうなるか、書くネタにしてみたいと思います。


★環境ビジネスが、いよいよ点火、発進しそう

さて、次も近未来ネタです。

環境ビジネスに関わって長いのですが、その間、ずっと「環境ビジネスは将来有望、早く研究を始め、チャンスをつかむべし」と言い続けてきました。もちろん、そうは言いつつも、実際に広くビジネスパースンが環境ビジネスに関わるようになるにはまだしばらくかかるという前提で、まずは研究しておくべし、という話でした。

それが、ここに来て、環境ビジネスに関わることが、誰にでも起こりうること、という状況に一歩近づき、年明けぐらいからは、本当に動きが出てきそうな感じになってきました。

政府も、環境ビジネスを○○兆円産業にするとか、計画だけは出していますが、これも現実味のある話に近づきつつあります。

先日、ある企業に研修に行き、ランチタイムに雑談していたのですが、景気後退と産業像の成熟化で、既存のもうけ頭の利益があやしくなってきた、新しいビジネスが真剣に求められていて、自分もその担当になっている、というのです。僕が環境のことをやっていると話しておいたので、「環境分野の可能性はどうなんでしょうか?」と聞かれました。

僕は、たいていの業界で、どんな環境ビジネスが可能になるかのネタを持っているので、その業界にあった話をしたのですが、非常にくいつきがよく、それならうちでもやるべきだ、と頷いていました。

すこし前なら、可能性は十分あるというところまでは感じてもらえたのですが、「うちでもできそう、やるべき」と社員が即答するところまではなかなかいかず、まだ少し時間があるな、という印象でした。今回は、ごく普通の20?30代の社員が反応がよかったので、環境とビジネスがつながるとか、マーケットに環境を受け入れる要素がある、ということを、彼らなりに実感しつつあるのだと感じたわけです。

この会社は金融系なので、カーボンオフセット付きの環境商品やその作り方、商品の付加価値の付け方をざっと話したのですが、それだけでイメージができる状況になっているのです。1年前なら、カーボンオフセット自体が認知されておらず、同じ話をしても、今ひとつぴんと来ていないという人が多かったのですが、今のタイミングなら、自分の仕事の対象として、カーボンオフセットや、それによって提供できる対顧客価値を、一般社員も実感できるレベルにまでなってきたのです。

ここまで来れば、社内で提案したり、可能性を打診したりということが具体的に起きてくる可能性が高くなります。僕のような環境コンサルタントが提案して受け入れられるという時代から、企業の社員が進んで検討しはじめ、可能性を担保するために、コンサルタントに確認するという時代になってきたことを意味しているわけで、受け身から主体へと、時代が舵を切った感があります。

日本人は、懐疑的、保守的なところがあり、新しいものに疑ってかかる態度に出ることもあるわけですが、いったん納得すれば、熱しやすいキャラクターが表に出てきます。同時多発的にブームになる可能性が高まっている、と感じられるできごとでした。

僕は、こんな感じで、ほんの数人の反応から未来を考えていくことを大切にしています。大手メディアの調査がどう出ているかより、現場の個人が(たとえ人数が少なくても)どう考えるかの方が、ずっと未来を見通す望遠鏡になるのです。もちろん、サンプル数が少ないのは当然なので、この発見を、これからしばらく、ほかの人たちにも広げて、同じような反応が返ってくるかをワッチしていくつもりです。

ドイツでは、すでに環境ビジネスが自動車産業を超えて、ドイツ最大の産業になると予測されるまでになっています。日本でも同じことが起きること自体は間違いなく、そのことは、僕がミレニアムプロジェクトとして環境事業を発進させてから、一貫して持っている革新です。問題は、いつそのタイミングになるか、ということだったのですが、そろそろ、それが見える時期に入ったような気がします。

この点も、また数か月後に、再レポートしようと思います。

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