(by paco)381愛すべきモノたち(2) K20D、DA14

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(by paco)先週に引き続き、物欲特集です。


★K20D

先週はレンズの話で終わってしまったのですが、今回はカメラ本体の話から行きましょう。

デジタル一眼レフはここ数年で一気に進歩して、本当の意味でフィルムの一眼を超えたと言えます。ブランドとしては、やはりフィルム時代からのブランド力もあってCANON、NIKONが圧倒的に強く、これをSONY、LUMIX(Panasonic)、OLYMPUSなどが後に続き、PENTAXはそんなフォロアー・ブランドのひとつになります。SONY、LUMIXなど家電系ブランドが伸してくる中で、PENTAXは古くからカメラ専業に近いブランドとして、独自の地位を築いてきました。ちなみに日本には、コニカとミノルタという古くからのカメラブランドがあったのですが、経営不振から「コニカミノルタ」として合併して、ブランド力があるミノルタブランドが生き残ったのですが、これも生き残れず、SONYに事業ごと売却、「α」ブランドだけがSONYの一眼レフ名として残っています。OLYMPUSはカメラ以外の光学機器・医療機器も以前から幅広くラインナップしているので、生き残りやすく、PENTAXのポジショニングが現状いちばん厳しいというところでしょう。実際、すでにペンタックスもHOYAに買収されて、HOYAは医療機器などに興味があり、カメラ部門は捨てるよう交渉していたぐらいなので、いつまでPENTAXブランドが生き残れるか、まさに崖っぷちという状況です。ミノルタブランドが消えたことは、PENTAXの将来にも暗い影を落としています。ちなみにシェアは、トップ2のキヤノン、ニコンが新機種を出すたびに競り合って、両者合計で70?80%。残りをSONY、LUMIX、OLYMPUS、PENTAXで分けているのですが、SONYがじわじわリードしつつある感じでしょうか。オリンパス、ペンタックスは検討しているものの、シェアを減らさないようにするのがやっとというところで、苦しい戦いです。

そんなシェア争いとは別に、性能面ではどうかというと、ニコン、キヤノンはフルライン戦略で高級機から普及機までを持っているのに対して、他社は普及機から中級機で勝負しています。高級機とそれ以下との最大の違いは、カメラのフィルムに当たる感光素子のサイズです。

高級機では35mmフィルムと同じ24mm×36mmサイズ(フルサイズ)なのに対して中級機以下ではAPS-Cと呼ばれるひとまわり小さいサイズ(16mm×24mm)を使います。感光素子はもっとも高価な部品ですから、このサイズが面積比で1.5倍ということは、価格は数倍になるわけで、これが高級機の数十万円という値段に跳ね返っているわけです。ちなみに、レンズ交換ができないコンパクトデジカメの場合は、長辺でも6ミリ程度と比較にならない小ささです。

写真は感光素子ではじめて像になり、どんなに広大な風景を撮ってもせいぜい3センチ程度のサイズの中に映し込むわけですから、この感光素子のサイズと性能は決定的に重要です。最近は手のひらサイズのコンパクトデジカメでも1000万画素クラスが登場していますが、同じ1000万画素でもわずか数ミリの中に作り込まれた1000万画素と、30ミリ四方に作り込まれた1000万では、1素子あたりに届く光の量がまったく違うので、同じ画素数でも一眼レフの方がずっと豊かな画像を得られるのです。

現在、デジタル一眼レフでは、フルサイズとAPS-Cの両方のサイズが存在していて、それぞれ、用途に応じて性能を競っています。フルサイズはやはりプロ用機であり、レンズやストロボなどが従来とほぼ同じ環境で使うことができるために、プロの間では標準になっています。一方、APS-Cサイズは、カメラ自体も小型につくることができ、価格もずっと手頃です(数十万点→10万円クラスの違い)。レンズやストロボなどは基本的に35mmフィルム一眼と強要することができますが、換算値があります。

フルサイズデジタルでは、換算が不要ですが、APS-Cではレンズの焦点距離がフルサイズの1.5倍になるのです。フルサイズ(フィルム一眼)では標準レンズが50mmになりますが、APS-Cでは50mmだと1.5倍の75mm相当になるために中望遠レンズになります。逆にAPS-Cでは標準レンズは33mmぐらいです。ということは、望遠レンズを使う場面では、APS-Cはより焦点距離が短いレンズで、小型軽量にとることができますが、広角系ではかつての代表的な広角レンズである28mmでも換算すれば42mmになり、ほとんど望遠レンズです。つまり広角レンズを使いたいような場面ではレンズが限られてくるし、レンズの設計も難しくなります。実は、他にもいろいろな素子のサイズがあるのですが、詳しくはこちらを参考にしてください。
http://takuki.com/gabasaku/CCD.htm

そんな違いはありつつも、価格、サイズのメリットを活かして、今後ともデジタル一眼の主流はAPS-Cになっていくでしょう。感光素子の価格は下がるでしょうが、カメラのサイズが大きく、重くなることを考えると、一部のプロ用を除いて、デジタル一眼はAPS-Cというのがデファクトになると思います。

そんなAPS-Cクラスの中で、PENTAXは、技術的にはかなり健闘しているマシンです。もともとPENTAXは普及機から中級機の専門メーカーで、そんなポジショニングの中でもユニークなテクノロジーを開発して、ハイエンドなアマチュアカメラマンをうならせるブランドでした。そんな伝統を背負って、今もオリジナリティある、かつ有効性の高い技術を盛り込んで、PENTAXのカメラの評価はなかなか高いものがあります。

PENTAXがデジタル一眼レフに投入した新技術には、ボディ内蔵の手ぶれ補正技術とダイナミックレンジ拡大機能があります。

手ぶれは写真の仕上がりを左右する大問題です。これまでは手ぶれを防ぐには三脚を使うのが原則で、あとは筋力を鍛えるとか、脇を締めてホールドするとか、原始的なものばかりでした。デジタルカメラでは、手ぶれ補正がコンパクトクラスから開発されはじめ、手ぶれの動きをGセンサーで感知してそれと逆位相の動きにレンズを動かして補正したり、感光素子のデータをデジタル処理によって解析して、動いていない像を画像処理で造り出したり、感光素子自体を手ぶれと逆位相に動かしたりといういくつかの方式が開発されました。

デジタル一眼レフの開発途中では、この「デジタルならではメリット」である手ぶれ補正技術は無視されてきたのですが、PENTAXはボディ内の感光素子を手ぶれに合わせて動かすという技術を開発して「シェイクリダクション」として商品化したのでした。ちょうどこの頃、キヤノンでは、レンズ内に手ぶれ補正を内蔵する方式を商品化したのですが、この方法では手ぶれ補正機能が組み込まれていないレンズでは効果を発揮しません。PENTAXの方式は、最新のレンズから30年前の「フィルム時代」レンズまで、取り付け可能なすべてのレンズで手ぶれ補正が効く点で圧倒的に優れています。PENTAXは現行のレンズラインナップではキヤノンやNikonにまったく立ち打ちできませんが、レンズマウント(取り付け部の形状=Kマウント)を20年以上変えていないために、古いレンズでも取り付けができ、問題なく撮影ができるのです。Kマウント以前にはM42と呼ばれるスクリューマウントが使われていたのですが、これも簡単なアダプタで使えるために、過去のレンズ遺産がいっさい無駄にならずに、最新のデジタル一眼で使えるのが優れた点です。またKマウントの仕様が公開されているために、リコーなどサードパーティのレンズも使える上に、M42はライカやカールツアイスなどの古いレンズにも使われていた仕様なので、使えるレンズが非常に多いのです。ボディ内蔵の手ぶれ補正は、こういったPENTAXの特長を活かすために開発された技術だったわけです。

実際「使えるか?」どうかといえば、あるとないとは大違いで、大きく重い一眼レフでも手ぶれをほとんど意識せずに撮れる安心感は絶大です。特に夕方や夜景など写しにくい条件でも、びっくりするぐらい止まった画像が撮れます。僕が一眼を再開するに当たって決定打になったのも、この技術があったからでした。

もうひとつの昨日である「ダイナミックレンジ拡大」も、非常に強力な機能です。フィルムに比べると、デジタルの画像はダイナミックレンジが小さいという弱点があります。ダイナミックレンジとは階調表現のことで、真っ暗から明るい太陽までを1枚の写真の中に、どのぐらいのきめ細かい快調で写すことができるか、その豊かさをダイナミックレンジと呼びます。たとえば明るい昼間に白い花やシルバーのクルマをとると、日が当たっているところはまっ白に写って、快調がなくなる(白飛び)状態になってしまいます。逆に日陰の部分は真っ黒につぶれてしまう。そこで、白飛びをなくすために、露出補正を行ってアンダー(暗め)の画像にすることで、白やシルバーの中に快調を残すようにして、逆に黒の部分はツブレを覚悟することで、自分のめざす表現を実現しようとしました。逆に、影の部分を表現したいときは、白くなるところは思い切ってあきらめるわけです。

ダイナミックレンジ拡大は、こういった問題を最小限にする技術で、ひとつの写真で白飛びしそうな部分だけ、デジタルの画像処理技術でアンダーに補正して、白も黒も飛ばない写真を実現しようとするものです。この機能は最新の上位機種K20Dに搭載されたと思ったら、最近登場した廉価版モデルK-mにも搭載され、びっくり。もともとラインナップが少ない弱小メーカーなので、機種ごとにヒエラルキーを付くってけちけち機能を搭載する必要がなく、いいもの、コスト的に見合うものはどんどん載せてしまおうと惜しげのないところが、PENTAXの気前のいいところです。

もうひとつ、今僕が使っているK20Dには、「カスタムイメージ」という機能があります。これは、コントラストや色相、色味などを特徴のある何種類かの異なるモードが選べるもので、ちょうど撮影対象に合わせてフィルムを選ぶ感覚で、モードを選ぶというものです。フィルム時代にも、しっとりとした画像や派手な色味、赤に強い、青に強いなど、フィルムによって特徴があり、好みと撮影目的に合わせて選んだものです。カスタムイメージはこれをデジタル技術で実現したような感じで、同じ風景を撮っても、ハデ目に仕上がる「風景」「あざやか」、しっとりした深い色味が得られる「みやび」、肌がきれいに撮れる「人物」など、特徴ある数種類を選ぶことができます。さらにこれをベースにカスタマイズすることもできるので、自分の好みの「フィルム」を使うことができるのもおもしろいところ。ちなみに僕はK20Dで「MIYABI」と「ダイナミックレンジ拡大」をデフォルトの仕様に設定しています。

K20Dは1400万画素の画像が得られ、画素数的にも今のデジタル一眼のトップクラスですが、手ぶれ補正、色再現性、カスタムイメージなどによって、非常に高品質な画像を得ることができ、実力はキヤノン、Nikonの上位機種にも迫るとプロカメラマンからも評価されています。売れ行きも、弱小メーカーとしては検討していますが、トップブランドの牙城を崩すところまで入っていません。やはりブランド力というのはパワフルで、同じ性能であれば、何割か高い価格でもずっと多い台数を売ってしまう力があるのだということが、デジタル一眼を見ているとわかります。

写真を初めてずいぶん長いことキヤノン派だったのですが、今はキヤノンのこそくな売り方もよく見えるようになりました。それに比べればPENTAXやオリンパスの、なんとまじめなモノづくりをしているコトよ。

★SMC PENTAX DA14mm F2.8

ところで、先週のレンズのところで書き忘れたレンズが1本あるので、付け加えておきます。「SMC PENTAX DA14mm F2.8」です。

前述の通り、APS-Cサイズのデジタル一眼では広角系のレンズが少なくなりがちで、このレンズの焦点距離は14mm。フィルム一眼に換算すると、1.5倍で21mm相当になります。よく使われる広角レンズが28?35ミリですから、1.5倍換算でもかなり広角のレンズになります。以前のフィルム一眼なら魚眼レンズになりそうな超広角の焦点距離なので、被写体は凹レンズの効果でどんどん曲がってしまうのですが、このレンズは魚眼の効果を狙ったものではなく、あくまでゆがみはなるべく少なく、最小絞りは明るく、広角らしく広い範囲の細部をきっちり映し込むために開発されたレンズです。

実際にとって見ると、雄大な山の景色などを本当に細部まできっちり撃つことができる描写力には驚かされます。1400万画素の一画素ずつに違う光りを送り込むことができ、しかも周辺に来て模造がゆがみにくく、その上、周辺光量の落ち込みが非常に少ない。絞り開放でオートフォーカスでとっても肉眼で見えないような細部まできっちり、かつクリアに写る。

その一方で、最短距離に花などをおいて手前にピントを合わせれば、背景はきれいにぼけて、広角なのに被写界深度が深すぎず、手前の被写体を浮かび上がらせる描写もできます。

発色のすばらしさも特筆もので、自然な色味なのにコントラストが高く、普通の見えるのに実在感がある。こういう広角レンズは特に貴重です。PENTAXのレンズは、前回紹介したFA77 Limited、FA43 Limitedという名機の評価が高く、ほかのレンズは「普通」と評価されてしまうことも多いのですが、なんのなんの、このDA14mmは、本当に実力があります。デジタル一眼専用レンズで、小型化が図れる条件にありながら、あえて小型化は狙わず、巨大な前玉(最前面レンズ)、400グラムを超える重量、大きなフードで威圧します。でもそれに見合う性能が仕掛けてあり、とってみると実力の高さにびっくりするのも、PENTAXらしいところでしょう。

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