(by paco)今週はオムニバスでお送りします。
●モチベーション格差が広がりつつある
先週、社会人1年生の女性、2人とあっていろいろ話をしました。RさんとAさんとしておきましょう。
Rさんは有名大学を出て、今年リクルートグループに入社し、半年間の営業研修を終えて、制作の仕事に配属になったばかり。僕とは学生時代からの付き合いで、就職の時点でも少し相談に乗っていて、まずは仕事の力を付けて、自分のやりたい道に進むのがいいよ、という話をしてきました。本当は環境関係の仕事をしたいのですが、いきなり環境の仕事に就くことは難しく、また時期的にも、あと数年したほうが環境の仕事のチャンスも増えそうだったので、環境以外の知識と能力を付けた方がいい、と考えたわけです。
そのあたりは彼女自身もよくわかっていて、営業研修がつらかったとか、そういうことはまったくないのですが、今の延長に本当に未来があるのか、ちょっとぐらついているようでした。話を聞くと、当初の予定通りのラインに乗って能力を身につけている感じだったので、このまま進んでだいじょうぶだし、すでに半年分の力は付けているから、ちゃんと前に進むべき人です。
20代前半で自分が何をしたいのか、将来をしっかり持っている点もすばらしいし、そこに向かうべく、企業を自分の能力開発の場として利用しようとしているのもさらにすばらしく、こういう賢明な行動が取れるのも、彼女自身が自分の未来をしっかり見据えて、意欲を持って前に進もうとしていることが、背景にあります。
Aさんの方は、同じく環境関係の仕事をやっていきたいという希望があり、Rさんと同様、将来に向けて力を付けていくタイミングと考えています。Rさんと違うのは、今仕事についているのが小さな制作会社で、NPOや社会起業家の取材をするという、将来彼女がやっていきたい仕事に直結したことをやっている点です。自分がやりたい分野の仕事ができているという点で、Rさんから見ればうらやましいと言うところもあるのですが、一方で、Aさんは雇用が不安定で、給与も低く、立場も弱いということで、やりたいことには近くても待遇面で不安を抱えています。
2人とも、将来の夢に近づきつつあるものの、本人としては手放しで喜べるほど順調ではないという自覚があり、このままでいいのか、このままで未来が切り開けるのか、ちょっと不安というところが共通している感じです。
でも、僕から見れば、彼女たちはとても頼もしく、将来は十分明るいと感じられていて、なぜかと言えば、環境のことをやっていきたい、そのために自分は仕事をしているのだという明確なモチベーションを持っていることが大きな理由なのです。
若く、自分の力を信じられないのはやむを得ないこと。そういうタイミングでは、仕事の力をつけるしかなく、この仕事はちゃんとできるという確信がないことが、どこか現状に不安を感じさせているのでしょう。不安があることは事実ですが、でも不安を克服するためにも、自分の力を付けるしかないし、社会人としての実力のうち、最初のステップの力を付けるために、2?3年かかるのは仕方のないこと。今はしっかり力を付ける時期で、力が付けば、不安の半分は解消していくはずです。それより重要なことは、環境のことをやりたいという思いとモチベーションで、これをいかに維持するかが、実は一番大切であるということに、彼女たち自身が気がついていないという図式でした。
一方話変わって、グロービスの受講生の話。RさんやAさんよりキャリアは長く、会社でやってきた仕事については、自分でも一定の満足感を感じている人がほとんどですが、ではモチベーションという点ではどうかというと、自分はこれをやりたい、やっていきたいという希望を持っている人が少ないなあという印象。特別講義で「人生のwhat?を見つける」という話をしていることもあり、「ただ会社から言われたことを、少しレベル高めにこなせればいい、というだけではだめらしい」というあたりまでは感じていることが多いのですが、では実際に何をしたいのか(what?)という点については、「これまでそんなことを考えたこともなかった」と正直に言う人もけっこういて、僕は、なるほどなあと思いつつも、ちょっと愕然とします。自分が何をしていきたいか、考えたこともないと自覚しているというのも、なんとも情けないなあと思うのですが、それが現実です。
日本では、子どものころから大学まで、自分が何をしたいのか、するべきなのかを、考えたり、ましてそれを言語化する機会がほとんどなく、夢がなくても就職には差し支えないし、夢を話さなければならないときでも、どこかの誰かが言いそうな「借り物」を少しアレンジすれば十分でした。それ以上を期待されていないという言い方もできます。
仕事の実力はまだまだ不足していても、自分がやっていきたい夢をしっかり持っている人と、仕事はちゃんとできるのに、自分が何をやっていきたいのか見えていない人。
果たしてどちらが幸せで、どちらがよい人生なのでしょうか?
一方で、夢を持ってしまったがゆえに、不安も抱えてしまった人が。もう一方で夢を持たないがゆえに、現状の満足度は高いけれど、やりたいことがないことにも気づけない人たち。
それぞれ欠けるものがあり、双方で補完できればいちばんいいかもしれませんが、そうもいきません。もし僕が彼らの年齢やポジションにまで戻れるなら、どちらの立場を選ぶかと言えば、もちろん、夢を持った人を選びます。イライラさせられたり、不足を感じて不安になることも多いものの、やはり将来やっていきたい何かを持っている人の方が、ずっと幸せだと感じるからです。そして壮だったからこそ、今僕自身が感じている満足感が得られたということを知っているからです。
何をしたいかが見つからない人が、それを見つけるのは、なかなか容易なことではないらしいということは、最近、Life Design Dialogueをやっていて思うことですが、充実感を感じられるかどうかが、モチベーションや夢のサイズと比例すること、そしてそれは今会社でいいポジションについているかどうかとはほとんど関係がないのだということは、自覚していいのではないかと思います。
●働かない男たち、頼りない男たち
20代の失業率が上がっていて、正社員になれない率は40?50%にものぼる自体になってしまいました。なぜこうなったかのかといえば、小泉内閣が、無条件の自由を経営者に与えるところまで、「改革」を進めたことに大きな理由があるのですが、そのあと、有権者がどういう判断をするかは、程なく行われるであろう総選挙の結果で見えてくると思います。
こういう「正社員になれない若者たち」というデータが、若い男女に影響を洗えないはずはなく、こんな話を聞くようになりました。
最近彼氏と別れたCさんが別れるときに男にたたきつけたひとことは「働け!」。彼女は一応正社員として原いているのですが、相手の男性はアルバイトを断続的にやる程度で、定職に就こうとせず、付けない雇用関係をいいわけにしているようですが、そういう状況の中で、定職に就けない男が付き合っている女性にお金を借りたり、食事をおごってもらったり、彼女のマンションに居候状態になることも多いようで、そんな関係に嫌気が差したひとことが、「働け!」だったのです。
大学生を見ていても、男子の方が頼りない印象は常に感じます。もちろん、これは一般論というか、平均値ですが、大学1年生ぐらいだと特に、男子の行動は、高校生並み、と感じることが多々あります。1人の学生が、仲間内の別の男子の名前を大きな声でいって「先生、D君を差してください」といって、D君に恥をかかせようとしたり(D君が恥をかくかどうかはわかりませんが、指名されたD君がうろたえるのを見ておもしろがるつもりなのでしょう。こういう流れの中で、男子学生数人が、仲間内の学生をいじめているという話も、女子学生が話してくれました。大学でもそういうことがあるのかとびっくりしますが、僕もそれに相当するようすをクラス中に目撃してきたので、彼女たちのいっていることは本当なのでしょう。
最初の話題の、夢を持っているかどうかという点でも、あくまで印象ベースですが、女性の方が夢を持って前進しようとしている人が多いように感じます。男たちからエネルギーが失われているような印象です。
ちなみに、大学生が着るような服は、細身のフォルムが流行しているのですが、試しに来てみると、おなかまわりははいる程度の余裕がある服でも、肩や腕、袖ぐりが入らないとか、きつい服が多いのです。脇から腕は、贅肉が付きにくい場所ですから、ここが入らないということは、かなり筋肉が少ないと思われ、そういう視点で若い男たちを見てみると、痩せているだけでなく、体つきが華奢です。
「ヤマガラの森」に来る若い人たちも、女性より男性の方が、ミドルエイジより若い男が速くバテる傾向にあります。はじめのころは、単にサボりたいのかなとか、たまたま寝不足とかで作業する気力がないのかなと思ってみたのですが、本人たちに聞いてみると、「これで限界」という気持ちがあるようで、なぜと聞いてみると、「だって日常生活で力も体力もいらないじゃないですか」とのこと。そういえば、駅のエレベータに並んでいるのも若い世代が多いなあと気づくのです。
学生?20代前半ぐらいの男性の力が、夢やモチベーションを失っていて、実際に将来につながるような仕事に就けていない場合が多く、体力的にも貧弱となると、いいところなしなのですが、ここではあえて、いいところには目をつぶっておくと、体力、実力、夢、体格ともに、頼りなくなっている傾向は見て取れます。
そんな状況の対応して、若い女性も相手を探すのが難しくなっていて、それに対応するかのように、結婚する人はわりと早めに結婚する傾向があるように感じます。頼りない男たちの中から、この人ならだいじょうぶかもという男性に出会えたら、あまりいろいろ探さずに結婚しないと、一度逃したら、男はたくさんいても、頼れる(頼れなくない)男は少ない、と感じているようです。
そんなわけで、いいで合いができた男女は20代前半でさっさと結婚してしまう。その背景に、男女とも仕事を持っているので、共同生活に支障がないということがあげれます(僕らの世代では、結婚退職も珍しくなかったため、男が経済力を持つ年齢までは結婚がしにくかった)。早く結婚する男女野ピークが過ぎ、20代後半から30歳前後まで独身になると、あとは相手が見つけにくくなり、そのまま独身を通すか、晩婚になる。そんな行動パターンを感じます。
夢とモチベーションの格差、そして頼りない男たち。
きっとつながって起きていることなのでしょう。
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