(by paco)371シュフの料理(2)

| コメント(0) | トラックバック(0)

(by paco)前回に引き続き、料理ネタを続けます。前回の最後に、包丁の話を書きました。そんなわけで、まず道具の話を。

出刃包丁は、イサキをよくさばくようになって、自分で買いました。そうしたら、叔母が柳包丁(刺身用の長い包丁)をくれまして、なぜ長いかというと、3枚におろした身を、一気に引いて切り分けるために長いのです。生の魚の身は柔らかいので、刃を前後に往復させて切ると、身が崩れやすいのです。押して切れば身がつぶれてしまうし、刃の切れ味ですーっと切り落としていきたいので、あまり下方向には力を入れずに、刃の切れ味と自重で切れていくのがいい。そうなると、長い刃が必要で、柳包丁という形が生まれたのですね。出刃も柳も、家庭にあるとかなり野蛮な感じですが、こういう葉ものの切れ味は、ちょっと男の料理っぽくて好きです。

とはいえ、こんな刃物を使うのは、ごくまれ。ふだんは、逆に小さな包丁を愛用しています。僕はもともと手が小さいので、大きな包丁は握りにくいと思っていたので、あるとき、ペティナイフを買ってみました(リンク先の中程「藤次郎 粉末ハイス鋼割込(口金付)シリーズの135mm」を使っています)。よく「果物ナイフ」として売られているような形とサイズで、刃渡りは10?15?ほど、牛刀型(刃先がとがっている)の洋包丁ですが、小さいので野蛮な感じはしません

いくつか使ってみて、結局僕の使い方で手頃だというのが13センチの合わせ刃のタイプです。合わせ刃とは、刃の部分が3階層につくられているもので、中心には比較的やらかな(さびやすい)鋼(はがね)を使い、その外側両面に堅くてさびにくい鋼を貼り合わせたものです。柔らかな鋼は研ぐと刃が付きやすく、鋭く研ぐことができます。しかしさびやすいのですぐに黒っぽくなってしまいます。また小型の刃物だと刃が薄いので、全体に華奢な包丁になってしまいます。これを防ぐために、堅くてさびにくい鋼を貼ると、表面はさびにくくて美しい状態が保ちやすく、また堅い鋼なので、薄くてもしっかりした強度が出ます。しかも刃の部分は柔らかめの鋼なので、鋭く研ぐことができ、切れ味は抜群です。13センチぐらいと、普通の20センチ級の牛刀や菜切り包丁になれていると、かなり頼りなく感じますが、しっかりしたペディナイフなら、小型でも、切れ味、握り加減も、力強く、信頼できます。お値段はいろいろですが、僕はだいたい1万円前後のものを買い、数年で使い倒す、という感じの使い方です。刃物は消耗品です(研いでいると、刃が薄くなってしまい、使いにくくなるのです)。

ペティナイフのよい点は、軽く、小型で慣性重量がないので、手の動きによく追従することで、作業を軽快に進めることができます。特に、皮をむくこと、薄い輪切りや千切りのように、サクサク切るときは、ての上下に合わせて包丁がリニアに追随するので、実に気持ちがいいのですね。

逆に、カボチャをざっくり切るようなときは、重量も刃渡りも足りないので、辺けるの分厚くて大きな牛刀(これももらい物)を使いますが、それ以外は、ほぼすべての作業がこれで済みます。狭いキッチンで料理の途中、おいといても邪魔にならず、間違っては先に触れてしまう可能性も小さい。

刃物は、よく研ぎます。だいたい1か月に1回は、研いでいるでしょうね。たまに人の家に行って料理をすると、刃物が切れないのに愕然として、研いできてあげたりもします。砥石はキッチンに常備し、切れ味が悪くなると、まずはダイヤモンドやセラミックの簡易型の研ぎ器でさっくり研ぎますが、これはしょせん、その場しのぎ。付く刃の角度が鋭角ではないのと、両刃に付いてしまうので、すぐに切れなくなってしまうのです。砥石で研げば、非常に鋭角につけることができるし、右利きに合わせて片刃に刃が付くので、切りやすい。片刃とは、右利き用で言えば、持って左側(おやゆび側)の刃が平らで、右側(人差し指側)の刃が下に向かって左に回り込むように角度をつけること。こうすることで、切ったときに、切り落としたものが右に離れていき、左に残った野菜や肉の断面が垂直に残るようになります。スイカのような大きなものを切るときは、左に曲がって切れ込んでいくので、あらかじめやや右斜めに(外寄りに)刃をむけておかないと、うまく切れませんが、やはり片刃の包丁の方が切りやすいのです。砥石で研げば、刃の付け加減を自分の好みにできます。

僕は父親が建築士だったので、子どものころから家に大工などが出入りしていました。父も簡単な作業は自分でできる人だったので、大工道具一式があり、かんなやのみを自分で研ぐついでに、家の刃物もの研いでいたのです。それを見ていて、研ぎ方を覚えました。見よう見まね、というやつですね。特に教えられたわけではありませんが、僕が見ていると、父は「こう持つんだよ」「ここに気をつけてやれば大丈夫」などと、簡単に教えてくれました。「やってみろ」とは言わなかったのですが、見ていればわかるものです。子どものころは、石に刃物をこすりつけると、なんで水が茶色になるのかわからなかったし、なんで水をかけながらやるのかもわからなかったけれど、なんか儀式めいた動作がおもしろくてよく見ていました。

刃を研ぐのは難しいと思っている人もいるようですが、難しくはありません、まずは自分でやってみて、その結果、切れ味がどうなったか、確かめては研ぐ、を繰り返して、指先で覚えるのです。

その際、覚えたいのは、刃の付き加減をおやゆびで「見る」というやり方です。刃に親指の腹を当てるので、はじめて見る人は「手が切れる」とびっくりするようですが、「まっすぐは似当てれば切れない」と父は教えてくれました。「刃に沿って、前後に引いてしまうと、簡単に指が切れるから、絶対に刃に沿って動かさない」のです。逆に、刃に対して垂直に、指紋で刃の鋭さを感じるように動かせば、指を切ることもないし、刃がどのぐらい鋭くなったか、指紋で感じることができます。もちろん、そっと当てておいてくださいね。これも、指先だけで切れ味を感じられるようになるには熟練が必要なので、研いで、指先で確かめて、実際に野菜を切ってみる、の繰り返しをして、切れ味と指先の感覚を覚えるのです。はじめはうまく研げないでしょうが、それでも研げば確実に切れるようになるので、繰り返していけば、うまくなるのに総時間はかからないでしょう。ちなみに僕は、皮付きの柔らかめのトマトを切るのに、すっと切れなければ、研ぎ時と判断します。トマトは、皮がけっこう固いので、ぬるい刃だと滑って皮の断面がきたなくなるのです。

さて、刃物の次に、鍋の話。鍋もいろいろ持っていますが、僕のお気に入りはフィスラーのステンレス鍋です。高級鍋はいろいろなメーカーがありますが、断然フィスラーでしょう(^^;)\。

ドイツ製のこの鍋は、底がステンレスとアルミの貼り合わせで1センチ近くあり、重いのですが、それ故のメリットがいろいろあります。底が熱いので、火にかけたときに熱のまわりが均等なので、焦げ付きにくく、熱を底のアルミがしっかり蓄熱するので、弱火でも充分加熱できます。

この結果、少量の水でもゆでものができるのですね。水を5ミリぐらいの深さに入れて弱火でわかし、底にほうれん草などの葉物や卵を入れる。すると、蒸気で短時間に火が通ってしまうのです。もちろん焦げ付かないし、水が少ないので、野菜のうまみも逃げにくい。フタには蒸気抜きの穴やスキマがない構造なので、弱火だと蒸気が抜けないので、わずかながら圧力鍋の効果もあり、これが火の通りをよくするのです。忙しいあさごはんの時に、あと1品ほしい、というタイミングに、葉物をさっとゆでておひたしをつくる、というような場面には最適です。

また、煮込み料理にも最高。にんじんや大根などの火の通りにくい野菜も10?15分ぐらいで柔らかくなるし、蕪(かぶ)のような火の通りの速い野菜は、気をつけないとすぐにに崩れてしまうほど。カボチャ、里芋、ジャガイモ、ごぼう、サツマイモなど、根菜類の煮物が、普通の料理のようにすぐにできるので、まったく苦になりません。夕食のしたくでも、30分あれば、けっこうちゃんとした料理ができてしまうのです。

もちろんシチューなんかは得意中の得意で、ブロックの肉を軟らかく煮るので、シチューでもカレーでも、豚でも牛でも鶏でも、普通の鍋の半分以下の時間です。また、火のまわりがいいので、最初以外はごくごく弱火でよく、早めに火を止めて余熱で最後の煮込みをすることもできるので、エネルギー節約にもなっている感じ。

いちばん使うのは、16センチのキャセロール(やや平たい鍋)で、これはもう使わない日はありません。これに20センチのシチュー用のキャセロールがあれば、料理の幅が一気に広がります。厳密にいうと、時間がかかる料理が短時間でできるので、つくることに抵抗がなくなるのですね。忙しい、仕事を持つ家庭のシュフにはまさに強い味方です。

そうそう、フィスラーももうひとつの美点が、汚れがよく落ちること。火が付いていることをうっかり忘れて、時には中身を焦がしてしまうこともあるのですが、どんなにひどい焦げ付きでも、しばらく水を入れておき、火にかけてわかしてしまえば、焦げ付きが浮いてきます。強いステンレスなので、ジフでごしごしこすって、ピカピカにすればいいし、10年使ってもまったく古くならないのがすごい。そんなわけで、少しずつ買い足して、東京の家と六兼屋とそれぞれ大小2個ずつ使うようになりました。

その一方で、フライパンは、長く使えるものに出会えず、テフロン加工の安めの鍋を消耗品として使いつぶしています。だいたい1?2年でテフロンがはがれて焦げるようになるので、そのあたりが寿命でしょうか。もうちょっと高性能のテフロンか、焦げにくいステンレスのフライパンがあるといいのですが、この点はフィスラーのフライパンでもいまいちのようで、長く愛用できるものに出会えていません。でも新品のテフロン加工のフライパンは、油が気持ちよくころころして、肉も焦げ付かないので、うれしくなります。

さて、料理のあとは食器。料理人は食器にこだわらないと、という気持ちはあるのですが、今のところ、「保管しやすい食器」が中心になっているのが、自分でも不満。デザイン性の高い食器は、収納性が悪いことが多く、重ねても場所をとるので、食器棚に収納しきれないのです。それでも、つい買ってしまう食器が増え続けているのですが、基本は、シンプルな形でスタッキング性がいい食器を5?10枚ぐらいまとめ買いして、日常に使うという形にしています。こうすることで、洗ったりしまったりの効率がいいので、作業時間を最短にできるのです。趣味の料理ではないので、なかなか食器にまでこだわれません。

とはいえ、子育てもだんだん楽になり、慌ただしく料理をつくる必要も少しずつ無くなってきました。これからは、料理も余裕をもってできるのではないかとちょっと期待しています。そのあたりは、また次回、書いてみようかと思っています。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://w1.chieichiba.net/mt/mt-tb.cgi/192

コメントする