(by paco)GWですね。今週のコミトンは休載にしようと思ったのですが、休載のお知らせを書くならちょっとだけ書いてみてもいいかなと思い至り、いつもより短めの縮小版ということでお願いします。
■食糧危機、本格化?
今日のasahi.comに、文末のようなニュースが。今、世界的に食糧危機が大きくなっています。原因は、記事のあるとおりいくつか考えられ、「温暖化による干ばつ」「中国など新興国の食糧需要の増大」「肉食の急増(牛肉1kgの生産に穀物5kgが必要)」それに伴う「穀物相場の上昇」「輸送に必要な原油高」など、さまざまな要因があります。
しかし、本質的には少量需給が次第にぎりぎりになってきていたというここ20年来の世界の状況にあり、環境問題のリーダーのひとり、レスター・ブラウン(アースポリシー研究所)は、もう何年も前から、食糧危機の到来を予言していました。今、それが現実のものになってきました。
このあたりの事情は[知恵市場 Commiton]346食糧自給率を、どう捉えるか?にも書いたので、そちらも参照してください。
日本では「少々高くても買える」という経済力に裏打ちされた事情がありますが、それが今後とも通用するかどうかはあやしいものの、すでに起きていることとして、食糧を買う現金が乏しい途上国で、実際に「食えていた人々」さえ、「食えなくなっている」という現実が起きているということです。金を出せば買える日本人は、すごく幸せでラッキーですが、食糧需給が厳しくなれば、現在の食糧輸出国も食糧禁輸措置にでるわけで(記事中ではインド)、ほしくても買えない、または政治的な取引を求められることも充分ありえます。たとえば、中国が「食糧がほしければ、チベットに対する弾圧を容認する発言を政府が行え」というようなものです。
僕らの食生活はすでに大半を海外に頼っているのですが、その付けが、もしかしたら政治的日本が弱い立場に追い込まれることを意味している、という可能性もあります。注意深く見ていく必要があります。
■米国大統領選挙、どこへ行く?
今年は米国大統領選挙の年です。米国は共和党と民主党の二大政党制で、それぞれが候補を出し、本選挙に臨むというスタイですが、すでに共和党はマケイ候補で一本化、民主党は、ヒラリー・クリントンとオバマの一騎打ちの決着がなかなかつきません。
現在のブッシュ大統領は共和党で、すでに2期めなので、今期限り。昨年の中間選挙(米国議会)では、ブッシュの共和党が惨敗し、時代の趨勢は民主党なので、民主党の候補選びが注目されてきました。
初の女性大統領(ヒラリー)か、初の黒人大統領(オバマ)か。
いずれにせよ、米国民は新しい風を求めているように見えます。しかし、その決着がなかなかつかないという状況を見ると、これから米国がどこに進むのか、国民自身が迷っている、というより、米国内部にいくつものまったく異なる指向の人々が存在して、大統領選挙を通じてその内部クラスタがあぶり出されているのがわかります。
読者の中には米国系企業で働く人、取引や付き合いのある人も多いと思います。米国人としてひとくくりにして考えがちですが、今の民主党候補選びを見ていると、米国内のクラスタの多様さと、思考のバラバラさ加減が、多様性というより、分断を常に内包してきたのだということがわかります。
最新号の「国の原罪としての人種問題」(2008/05/03)では、米国の「原罪」を人種差別だと示し、この問題を米国は奴隷解放から130年たってもまったく解消できていないとしてきします。奴隷解放以前、米国では黒人奴隷は白人の「所有物=財産」と見なされ、人間として認められていませんでした。さらに奴隷開放政策後も差別政策は続き、1960年代まで、学校や乗り物、協会など、ほぼすべての社会的なインフラは人種差別によって運営されてきました。白人専用の学校に初めて黒人が通ったとき、数名の黒人生徒を白人の迫害から守るために軍が出動したほどです。差別が撤廃され、形式的に社会参加が平等になってからたった40年。現実はまだまだ平等とはほど遠く、黒人として生まれただけで、経済的にも教育の面でも就職でも、差別され続けています。その一方で、貧富の差が広がり、白人の低所得層も広がっているのですが、書いていくと長くなるので、このへんで。
こういった社会的な背景をもとにした選挙レポートは、テレビや新聞の報道を見ていてもわかりません。僕が情報源としていちばん信頼しているのは、冷泉彰彦の米国レポートで、村上龍が発行しているJMM(Japan Mail Media)です。さまざまな記事が配信される中で、週1ぐらいのペースで冷泉さんの記事が届くので、ぜひ読んでください。米国内部というのはこうなっているのかというのがよくわかります。
バックナンバーはJMMサイトにありますが、基本がメルマガですから、サイトへのアップは結構あとになります。JMMで登録することをおすすめします。
http://ryumurakami.jmm.co.jp/
こちらの下の方に冷泉レポートへのリンクがあります。
ということで、短いですが、今日はこのへんで。
Enjoy! Holiday!
▼asahi.comより
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食糧暴発 止まらぬ高騰、空腹に乱れる世界
2008年05月04日02時58分
世界の食糧高騰が止まらない。途上国の消費増、生産国の大干ばつ、原油高……原因は複雑だ。貧困国がまず苦境に陥ったが、影響はおそらく、そこにとどまらない。
■がまんして給食持ち帰る子どもたち―ケニア
ケニア・ナイロビ。
泥壁やトタン張りの粗末な家がぎっしりと並ぶ。狭くぬかるんだ路地が入り組む、迷路のようなキベラ・スラム。80万人が住む。日雇い労働で暮らすアイエコさん(37)は、次女ダナさん(10)が通う小学校の春休みが間もなく終わるのを待ち望んでいる。小学校では月曜から金曜まで、世界食糧計画(WFP)の支援で朝食と昼食が支給されるからだ。
主食ウガリの材料であるトウモロコシ粉はいま、1キロ32ケニアシリング(約54円)。1年前は20シリングだった。朝食はもともとミルクティーだけ。昼・夕食用に週5キロ買っていたのを、4月から3キロに減らした。病気がちの妻と、子ども3人。一家は、3メートル四方の借間で空腹をこらえている。
ダナさんががまんして学校から持ち帰る給食が、助けになっている。小学校のウオウェ教頭は「給食を残して家に持って帰る児童が増えている」と言う。
同国西部、穀倉地帯のエルドレト。トウモロコシ畑は雑草が伸び放題だ。1月、大統領選を機に民族衝突が各地で起き、農民の多くが国内避難民になったのが直接の原因だが、情勢が落ち着いても、人びとは畑に戻らない。
トウモロコシと小麦を2ヘクタールずつ作っていたアグネスさん(40)は「小麦はこれから種まきだから時期は間に合う。でも、肥料が値上がりして手が出ない」とため息をついた。昨年1袋(50キロ)1800シリングだった肥料が4千シリングになった。町なかのピーターさん(33)の肥料店には、在庫が山のように積まれていた。例年の2割しか売れていない。「アメリカ製の肥料なんだが、なぜこんなに値段が上がるのかわからない」
農業省によると、輸入肥料の価格が倍増し、ガソリン高騰で輸送費が上がったところに大統領選後の混乱があり、穀物価格が跳ね上がった。ケニアはトウモロコシを自給してきたが、今のままでは8月に在庫が底をつく。
■価格高騰、各地で騒乱相次ぐ―アフリカ
西アフリカ・ブルキナファソの首都ワガドゥグ。3月、コメ高騰に抗議するデモ参加者が暴徒化した。今も、壊された信号機やタイヤの燃え残りなど、暴動の「痕跡」が残る。市中心部の穀物卸店は閑散としていた。店番の男性は、「コメが3カ月で2割上がった」と嘆いた。
水不足に悩む同国では、コメはインドなどからの輸入に頼る。政府はコメ値下げ令や輸入関税停止などの手を打ったが、そのインドが自国のコメ不足・価格高騰で輸出を禁止してしまった。
アフリカでは各地で食糧高騰が騒乱を呼んだ。カメルーンでは2月、首都ヤウンデなどで食糧と燃料の値上がりから暴動が起き、少なくとも7人が死亡。コートジボワールでは3月末、2都市で群衆と警官隊が衝突、十数人が負傷した。ギニア、マリ、モーリタニアでも暴動が起きた。
■コメを求めて首都圏から「疎開」―フィリピン
アフリカだけではない。
世界有数のコメ輸入国フィリピン。マニラ首都圏から南東へ300キロ、ルソン島南部のレガスピ市の食糧庁倉庫前で、政府供給米を買う人びとの長い列に並んでいた女性(73)は、3月に首都圏から息子を頼ってやって来た。
マニラでは、自由価格の流通米が急騰し、市民が雪崩をうって品質は悪いが安い政府米に切りかえた。その結果、政府米も極端な品薄に。それでこの女性は「コメ疎開」を決断したのだ。「ここなら、1時間も並べば1日3キロまでは買えるから」
バングラデシュ・ダッカ。昨年サイクロンや冷害に見舞われた同国は、米作が大打撃を受けた。だが、頼みの綱のインド米が止まった。何時間並んでもコメは買えない。政府は、価格が安定しているジャガイモを主食として食べるよう、奨励し始めた。(ナイロビ=古谷祐伸、ワガドゥグ=土佐茂生、マニラ=木村文、ダッカ=高野弦)
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