(by paco)352仕事を効率よくやる(2)

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(by paco)先週に引き続き、仕事の効率化の話です。

前回、「まずやるべきなのは、ひとつひとつの仕事にかかる時間を短くする努力をすべき」という話をしました。「ムダ取り」で有名な山田日登志(やまだひとし)さんは、NHK「仕事の流儀」で実に細かなムダ取りの技を見せてくれました。見ていない方のためにちょっと紹介しておきましょう。

飛騨高山の家具工場。「曲げ木」という工程は、3人の職人が担当していました。これを山田さんは1人で、かつ半分の時間でやるように指示します。3人が4つの行程に張り付き、それぞれの仕事をしていたのですが、それぞれの行程では機械が処理している時間は職人がやることはありませんでした。ただ見ているだけです。実際に動いている時間を計ってみると、3人がそれぞれ別のタイミングに、半分の時間だけであることがわかったのです。そこで、担当を1人にしてほか2名をはずし、1人で機械の作業を待っている時間に、人がやることをやることにしました。部品を機械に入れる、出す、検品する、磨くといった一連の動きの中で、1メートル、2メートルというちょっとした移動の回数が多く、これがムダになっていることに気がつき、機会や作業台のレイアウトを変え、動作を変えていくと、実際に1人で半分の時間で同じ作業をすることが可能になったのです。見ているとあたりまえといえばあたりまえのことなんですが、担当の本人から見ると、夢を見ているような劇的な変化でした。

毎日あたりまえだと思っている所作の中にムダがあり、それが効率を落としている。山田さんのムダ取りはそういう発想から始まります。ムダを取り、人と場所を減らす。すると、仕事をしていた人は、ちょっとでも工夫しようとしていきいきしてくる。実際、上記の担当者は、最初の「むっとした表情」から、どんどん目が輝いてくることが、テレビで見ていたもはっきりわかりました。

余った人と場所はどうするか? リストラするのではなく、新しい製品を作るために使う。製品のバリエーション、新カテゴリーの製品を作り、売上を上げていくわけです。ムダがなくなり、人がいきいきし、売上利益が向上する。そして、そこには何も魔法めいたことはなく、単純なムダ取りの積み重ねです。

では僕らのようなオフィスワーカーの仕事はどうやって短時間ですませればいいのでしょうか? あくまで僕がやってきたこと、見て来たのこと一例をお話しします。

■作業時間を短くする

作業時間を短くするには、作業時間を正確に把握することが最も重要です。この場合の「作業」とは、僕で言えばこうして原稿を書くとか、企画書を書くとか、資料を読むとか、そういう作業をさします。

あなたは、今いちばんよくやっている仕事の所要時間を、ぱっと言えるでしょうか?

たとえば、毎週のコミトンの原稿は、4000?6000字程度です。原稿用紙で換算すると、10?20枚程度になります。僕はこの原稿量を60?90分で書きます。書くことが決まってしまえば、原稿を書く時間はこの程度です。この所要時間は、以前と比べるとかなり速くなっているのですが、たとえば、僕が20代後半で独立したころ、A4パンフレットの原稿を1日で6ページ分書くのが目標でした。当時のパンフレットは、標準的に1ページ500?1000字程度だったので、6000字ぐらいがマックスになります。これを1日、7?8時間で書いていたのです。今は速ければ60分を切ります。自分でもびっくりします(^-^;)。

まず重要なことは、僕は独立する以前から自分の生産量を常に意識して把握してきたということで、単位時間当たりの生産性を上げる努力をしてきました。ちなみに独立前の入社1?2年目のころは、30分で500字ぐらい書くとヘトヘトして休憩していました。

「書く」という仕事の生産性を上げるために、まずやったことは、手書きからワープロ、パソコンに道具をかえることでした。右手しか使わない手書きは、どうしても量産には向きません。手が疲れて、書きたくても書けなくなるし、消しゴムを使うとか、ムダな作業が増えます。ワープロや漢字変換は、どんどん漢字の辞書登録をし、変換に関するキーをカスタマイズして、手をホームポジションから動かさずにどんどん打てる環境を整えました。この頃のカスタマイズ項目は辞書は、今もシステムを変えて移植しているので、こうしてPCを買い換えても、何台のPCを並行して使っても、歴代の鍛え上げられた辞書と使い慣れたインターフェイスはまったく共通になっています。漢字変換は、かつてはWXGを使っていましたが、ここ10年ほどはずっとATOK。カスタマイズ性が高く、辞書の移植も用意なので、毎年のバージョンアップに付き合って使い続けています。

道具だけでなく、原稿を書くための基礎的な分析もしてきました。たとえば、ひとつ前の段落は40字×10行で、400字。人煮物を伝えるために最適な「意味の固まり」はどの程度がよく、どの程度が書きやすいのかを研究してきたのですが、40字を1行とすると、5?7行程度、多くても10行ぐらいが適切で、それ以上になると読みにくくなります。1センテンスは60?120字程度、つまり2?3行が標準がよく、1段落、3?7センテンス程度が標準です。こういったことを、原稿用紙に書いてきた時代から考え、おおよそこういうルールに則って書けばいいというスタイルを身につけることで、スピードをあげることができるようになりました。

速く書くためには、実は書き始めるまでの準備が重要です。何を書くのか(イシュー)、どんな結論になるのか、どんな内容にするのか(わく組)、ネタは揃っているのか(取材)。ピラミッドストラクチャやロジカルシンキングで使うツールですが、教えるために自分で学ぶことになったより以前から、こういった方法を考え、それに乗っ取って情報を集め、書き始めるときにはすでにすべて揃っているという状態をつくるようにしてきました。企画から現行アップまでのどの段階でどこまで揃っていればいいのかを考え、標準化する努力は、漢字変換の辞書登録やカスタマイズも同じですが、ある日まとめてやるのではなく、気がついたその場で、仕事をしながらどんどん改良していきます。その時、その日の仕事の効率は落ちますが、気がついたときにやれば確実に変更できるし、そのあとすぐに効果が出るのです。

今は原稿書きよりパワーポイントをつくることの方が多くなりましたが、パワポの場合も、テンプレートをつくり、全体の構成を考えてテンプレートを使って先にからのスライドを必要ページつくってしまいます。その後、一気に入れていく方が、順番に考えていくより効率がよくなります。書いているときは細部にこだわらずに、全体がおおむねつながるように雑に書いておき、じょじょに細部の仕上げをしていくのがいいようです。

あなたの仕事のなかでは、どうでしょうか? 

何に時間がかかっているのか、それは本当に短くできないのか、1割2割の短縮なら必死のがんばりでどうにかなりますが、半分、3分の1にまで減らすためには、大幅な業務フローの見直しが必要です。まず、何にどのぐらいの時間がかかっているのか、明日から時間を計ることから初めて見るといいと思います。

■会議の時間を短くする

会議に時間をとられるという人も多いでしょう。僕も少なくはないのですが、以前から僕は会議の時間は少なめでした。僕を呼ぶと会議が短くて済むので呼ばれていた、と思われることもありました。

会議を短くするいちばんいい方法は何か? 自分が会議の主宰者になることです。人が主宰する会議に参加すると、主宰者の仕切で話が進むことになり、ムダな進行があってもなかなかやめようとは言えません。自分が主宰すれば、進め方や所要時間は自分がコントロールできます。短くしようと思えばできるし、回数を減らそうと思えばできる。こういう状態にしておくことが重要です。

次にやることは、イシューの明確化です。何を議論する会議かを明確にして、そこにフォーカスする。そのうえで、そのイシューについて議論できるように準備を充分に行います。その際、重要なことは、その会議が「議論」をする会議なのか、「役割分担」をする会議なのか、「状況確認をする会議」なのかを、など、集まって話す目的を明確にしておきます。企画を作るために議論をするブレスト的な会議なら議論のベースになるネタを集め、それにふさわしいメンバーを集める必要があるし、時間もある程度かかります。役割分担の確認や状況確認の会議なら、何ができればいいのか、ゴールを明確にする。つまり、ゴールが明確にはないブレスト的な会議と、ゴールが明確な会議を切り分け、後者には時間をかけないことが重要だし、リーダーの立場なら、こういう会議はサブリーダーにやってもらい、自分は参加しなくてもいいかもしれません。

結局のところ、その会議で自分は何を得たいのかに徹底的にこだわり、それにふさわしい時間をかけるということに尽きるわけですが、ここにこだわれない人が多いのです。ちなみに、僕がこういう形で仕事ができるのは、会社に属していない「外部の人」の立場だから、ということもあるでしょう。外の人が来たから、きちんと会議をしようという緊張感が出る、ということが大きいと思います。逆に言えば、ふだんの社内の会議が緊張感無く進んでいるということを意味していて、改善の余地は大きいのです。

もちろん社内での会議でも、「あの人の主宰する会議はしっかり進行する」という人はいるはずです。まず自分がそういう人になるべく力をつける。そのうえで、力のない人が会議を主宰できないような仕組み作りをする。こういった効率化への努力がなければ、会社に取られている自分の時間は戻ってこないのです。

■人にやってもらう

さて、「会議を部下に任せる」というような、他の人に仕事を任せうことも、自分の時間を確保するために重要です。というより、「サラリーマンの仕事は自分の仕事をなくすこと」と言ってもいいでしょう。ところが、自分の担当の仕事を握りしめて、人に任せられない人が多いのです。なぜ自分の仕事にこだわるのか、今ひとつ僕にはよくわからないのですが、おそらく、自分の仕事が自分自身でもわかっていないことが原因だろうと思います。

仕事を人に任せるためには、自分の仕事がどのような内容で、どんなプロセスをとって、どんな結果を出せばいいのか、小さなパーツに切り分けられていることが必要です。要するに、こういうことをやっているんだよね、と説明できるようになっていれば、そのすべて、または一部を人に任せられるようになります。

この、仕事の分割化、内容の切り分けの作業はいつやるのがいいのでしょうか? 一般的には、業務になれて習熟したとき、と考えるわけですが、Noです。最初に作業を始めるときから、マニュアル化をしていくのがベスト。たとえば、顧客向けのメルマガを発行するという仕事なら、企画から編集、発行作業まで、最初の1号をつくっていく中で、どんな手順でやったかを記録しつつ、手順書をつくってしまいます。仕事をする作業とマニュアルを作る作業を同時にやるのは、仕事が倍になるわけですが、逆に言えば、これをやるだけですでに自分の時間効率は倍になっています。第2号をつくるときには半分の時間ですむでしょうし、3号目には4分の1か、すでに他の人に仕事を任せられるようになっているでしょう。

自分が作業に習熟してしまうと、逆に無意識にやっていることが多くなり、マニュアル化しようとしても何をやっているのかつかみにくくなります。初めてやったときにマニュアル化すれば、ひとつひとつの作業が新鮮なので、マニュアルも充実します。ウェブベースの仕事なら、たとえば発行画面にログインするIDとPWは、最初の時に入力すれば、次回からは入力が省けることがあります。こうなると、あとからマニュアル化しようとすると、IDとPWを探さなければなりません。最初の段階でつくっていれば、マニュアルの中にIDとPWを書き込めるのです。

これは仕事のクセのようなもので、慣れてしまえば、初めての仕事に関わるときには、手順やファイル管理のルール造り、関係者の連絡リストなどを並行してやっておかないと気持ちが悪いという状態になります。

自分の仕事を人に任せるために準備をしても、実際には任せる相手がなかなか見つからない、外注させてもらえないということもあるでしょう。しかしマニュアル化しておけば自分の作業効率は圧倒的に速くなり、ムダがなくなり、正確になります。時間短縮と品質向上が図れるので、残った時間を別の仕事に回すことも、自分のライフに当てることもできるようになるのです。

ということで、今週は、仕事の効率化について、少し具体的なことを話してきました。次回、もう少しこのテーマを続けようかなと思っています。

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