(by paco)某大手企業でワーク・ライフバランスをテーマにコンサルティングしているのですが、抵抗もあってなかなかスムーズに進みません。知恵市場はQuality of Lifeがテーマですから、仕事と生活のバランスは重要なテーマのひとつ。ということで、今回は、いつもよりノウハウ面に振って、ワークとライフのバランスをとるために、まず仕事の効率を上げてみましょう、という点について考えてみようと思います。
今回のテーマの直接的なきっかけになったのは、その名もずばり、株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵さんのインタビュー記事です。
http://pre-cam.jp/msn/express/080201/vol03/talk1.html
http://pre-cam.jp/msn/express/080201/vol03/talk2.html
聞き手になっている今西さんが、「特に会社員は“残業は美徳である”と思いがち」「残業をやめてからのほうが、以前よりいい仕事が出来るようになって、私自身が驚きました」と発言していますが、この点がものごとを変えていく重要なポイントかなと思い初めて、書いてみることにしました。
■基本は仕事の時間効率アップ
ワークライフバランスをとるには、単純にいって仕事の時間を減らし、ライフに充てられる時間を増やすしかありません。この点は、あたりまえのことではあるのですが、つい、ここから視線をずらしてしまいがちなので、十分注意が必要です。
仕事はやっているとけっこう楽しいものです。会社は自分の第二の生活の場になってくるし、実際、滞在時間という点では、自分の家、自分の部屋を上回っている人も多いと思います。仲間がいて、居場所があり、自分の存在価値が感じられる。そうなると、会社にいる時間、仕事の時間は自分にとって「よい時間」「減らす必要のない時間」というように思ってしまう傾向があるのです。
職場が「居場所」になり、「自分のライフそのもの」というような実感値になっていると、職場にいる時間を減らすことが、「自分の人生を減らす」かのような印象になり、「減らすことに意味があるのか、減らしたら何がよくなるのか」という感想があたまをもたげてきます。こういった思いの結果、「仕事をするのは悪いことなのか?」「仕事をやることも人生を充実させることのはず」といった考えになってくるのです。
もちろん、仕事をすることはなかなかいいものだし、人生が充実します。しかし、ここで考えるべきことは、自分にとって仕事の比重が高くなりすぎていないかということであり、仕事は人生の一部であって、全部、あるいは大半であってはならない、という諒解です。
では、どの程度の時間、仕事をすれば、いいのか? これは単純には言えませんが、「仕事以外の<これをやった>ということを、毎日ひとつかふたつは、必ず言えること、というぐらいに定義してみるといいのではないかと思います。<これをやった>ということの中身としては、「寝る」「何となくついているテレビを見る」「目的もなくネットをザッピングする」といったことは除くとして、何かしら、主体的、意志的に選んでやるようなこととしておきましょう。
ついているテレビを2時間見るのではなく、映画館で見たかった映画を見る。毎日と同じように風呂に入るのではなく、今日のために選んだハーブを入れて、本を読みながら腰湯で1時間とか。家族のために料理をつくることが日常の人は、「今日はおいしく作ろう」とふだんやらない手間を一手間かける。出しを鰹や昆布から取るとか、野菜と肉を炒めるのではなく、野菜を肉で巻いて味付けて、パン粉をつけてソテーにするとか。最愛のパートナーと時間をかけてゆっくりセックスというのもいいですね。何かをやろうと思えば、誰といつどこでやるかが大切になるし、大切なことだからひと工夫して、と思うようになれば、それが生活の充実感になります。
毎日、ひとつかふたつ、時間にして1時間以上、できれば3時間ぐらい。仕事以外の何かをやれているかどうか。そのぐらいのことができている日常が、Quality of Lifeの要件になるのではないかと思います。
では、この2?3時間をとるにはどうしたらいいか。朝9時出社として、夜9時10時まで残業して、10時に帰宅、翌朝は7時起床という生活では、何かをやろうという気持ちにはなれません。残業は、平均的には6時台で終わるようになっていなければ、Quality of Lifeは保てないということになります。
仕事は充実させていたい。でも、それがQuality of Lifeの実現という点から見れば、やはり夜7時すぎに会社にいるようではだめなのです。時間は有限です。ライフもワークも、と考えるには、どうしても時間の配分が必要で、「仕事をたくさんやるのも人生の充実感」というのは、詭弁に過ぎないのです。
(もちろん、人生のある時期、必死に仕事に打ち込む時期があっていいでしょう。でもそれは長くても半年?1年程度までであって、それ以上、長期的に長時間働くのは、Quality of Lifeの点から間違っているという認識を持つべきです。趣味が仕事といってワーカホリックになっているベンチャーの経営者もいますが、こういう人は特殊な人種か、あるいは、仕事と言いつつかなりライフのことができている人か、いずれかであって、こういう人を自分の目標にするべきかどうかは、よく考える必要があります)
ということで、Quality of Life、人生の質や充実感を上げるためには、日本人の平均的な仕事時間と比べれば、かなり徹底して仕事の時間を減らす必要がある。この点ははっきり自分の目標感に持つべきで、仕事をすることのいいわけを考えてはいけません。まず、ここからQuality of Lifeが始まるといっても過言ではありまsね。
仕事の時間を短くはしたいけれど、仕事自体は減らないし、仕事から得ている充実感も減らしたくない。それはまったくその通りです。であれば、単位時間あたりの仕事量を上げるしかない。
単純にいって、ワークライフバランスをとるためには、今やっている仕事のペースではまったく手ぬるいのだと思いを定めて、自分の仕事の時間効率をどうやって上げればいいのかを徹底的に上げることが重要です。
■緊張感をもって、時間あたりの密度を上げる
では、時間効率を上げるためにはどうしたらいいのか。もっとも需要な点は、緊張感をもって、テンションを上げて仕事をすることです。なんだ、そんなことかと思いがちですが、結局、これがないと時間効率は上がりません。
自分がやっていることの処理速度を、多くの人は自分の能力より、かなり低く見積もっています。書類をつくる時間、人と話をする時間、企画を考える時間、予定を調整する時間、メールに返信する時間、何かを決断する時間。ひとつひとつのことに、時間がかかりすぎているのが、仕事時間が長くなる理由なのですが、突き詰めれば、ひとつのことにかかる時間が長いのです。
もちろん「いらない仕事を減らす」というのも重要で、本来はこちらからやるべきではあります。しかし実際のところ、自分の仕事のうち何が「いらない」のかを判断するのは、簡単ではありません。すべて重要とは言わないまでも、では、なくせるか、やらずに済むかというと、なかなかそうは思えない。逆に、この判断ができる人は、もうすでに仕事の効率はかなりいい人で、今回のテーマには興味がないということかもしれません。
ということで、入口は、まず自分が今やっている仕事の、ひとつひとつの所要時間を圧倒的に減らすことを考えてください。ざっと、半分の時間にすることが最初の目標です。1時間かかっているものを30分にする、1週間かかっているものを2日にする。あれ? 1週間の仕事が2日? 7日なんだから3.5日じゃないの?と思った人は、まずそこから切り替えるべし。1週間は、ウィークディで数えると5日。その半分は2.5日。でも、半日あると思うと、1日かかってしまうのが人の常。気持ちとしては、2日で終えることを目標にしないと、短縮はできません。
とはいえ、仕事の質が落ちてはだめです。落ちるどころか、上げないといけない。今の仕事のクォリティは維持か、さらにあげながら、時間を短くすることを目標にして仕事に取り組むことです。
(とはいえ、絶対所要時間が減らない仕事もあります。講師などはその典型で、1にち研修でいくら、というギャラをもらっているのですから、減りようがない。でも、実はこれも減らす方法があるのです。これについては、最後の方で。)
実は、時間を減らそうとすると、クオリティも上がるのです。少なくとも、落ちない。ですからあまり質については考える必要はありません。今と同じクォリティの仕事を、半分の時間でやることを考えてください。ただし、クォリティは「実質」ととらえるべきです。企画書を書くのに、まったく同じ企画書を書く必要があるのか、質を上げるためにもっと情報量を入れる必要があるのかは、考えるべきです。
★仕事の目的に照らして、もっともうまく目的を達成するためのアウトプットを、半分の時間で実現できるようにする。
これが、具体的な目標になります。この目標を常にもって仕事をしていられるか、緊張感をもって時間を過ごすかが、最初のポイントです。
ちなみに僕が社会人駆け出しのころ考えていたことは、「自分の時給を上げる」ことでした。けっこう多くの人が経験することですが、学生時代アルバイトをたくさんやっていると、就職すると月給が下がり、働く時間は長くなります。僕は奨学金とアルバイトで学費を払い、大学に通っていたので(自宅通学ではありましたが)、大学4年間を通じて、平均的に15?25万ぐらいのお金を稼いでいました。稼がないと通学できなかったし、デートもできなかったし。
これだけ稼ぐためには、時給を考えないと、稼いでも勉強する時間もないし、デートもできません。時給800円の仕事か、1000円の仕事か、いや2000円、2500円、というように、自分の時給を上げることを考えていたし、それは大学を出て仕事に就いてからも習慣になっていました。固定給だったので、時間を減らすことがもっともよい、ということになり、時給を上げることを考えてきました。これが僕のQuality of Life乃基本になっているということもできそうです。
(ちなみに僕が女で、水商売や風俗なら時給が5000円、1万円になるとわかったら、やったかどうかは、自分でもわからないものがあります。やらなかったとは、いいきれません、当時は考えても見なかったけど)
ということで、今回は考え方の部分までにしておきましょう。次回、もっと具体的な方法論について書くつもりです。
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