(by paco)344温暖化による生態系破壊

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(by paco)環境問題、特に地球温暖化が、何をもたらすのでしょうか。干ばつや砂漠化、局地の氷が融けて海面が上昇する、などはよく知られていますが、生態系の破壊も大きな問題です。

今回は、昨年夏にNHKが放送した番組「ちょっと変だぞ 日本の自然 大発生スペシャル」からネタを拾って、生態系異変の現状とメカニズムについて考えます。

まず最初は、山口県岩国市。ここでは今アルゼンチンアリが大発生して、日本のアリを駆逐しています。繁殖地は中心部の1?2キロ四方ほどの範囲で、1軒の住宅の敷地に数百万匹のありが生息していると言われています。アリの数を言われてもピンと来ないと思いますが、庭の石の下、植木鉢の中、ありとあらゆるところにアリの巣ができていている状態です。

人の生活にも影響が出ています。アルゼンチンアリは体長2.5ミリほどの小型のアリです。ちょっとしたすきまからも家に入り込むことができるので、平気で入り込んでいきます。ねらいは食べ物。仏壇にご飯を上げておくと、たちまち真っ黒になるほどにアリがたかってしまい、お供えもできません。

は六兼屋でもアリの被害にあったことがあり、アリの怖さは僕自身、身にしみています。六兼屋のアリはもっと小型で、おそらく外来種ではないと思いますが、ほんの1ミリほどの小さなありだからこその怖さをしみじみ感じました。小型のアリはほんの小さなすきまから入り込むことができるので、侵入経路を塞ぐのが難しいのです。六兼屋では、侵入経路が2?3箇所ありました。1か所は窓。デッキの掃き出し窓の窓枠サッシとガラス戸のサッシのすきまから入り込むのです。普通の虫は、雲のような柔軟なやつでも入り込めないように精度の高いかみ合わせになっているのですが、小型のアリの場合、窓枠の下の隅にできる、ほんのわずかなすきまをくぐり抜けられるのでした。アリの動きを見てこのすきまを見つけたときはびっくり。仕方ないので、窓を開けないようにした上で、すきまに建材用のパテを埋めてしまい、アリの侵入を防ぐことに成功しました。

と思ったら、今度はキッチンユニットの下に新たな侵入経路を開拓されてしまいました。キッチンには水道管が3本あって、水、お湯、下水です。この管はキッチンの下の床に穴を開けて床下に続いています。この穴と間の間のすきまはきちんとプラスチックのパッキンでフタがされているのですが、水道管の温度膨張がありますから、完全に塞ぐようにはなっていないのです。そのわずか1ミリほどのすきまからアリが入ってくるのでした。きっちの引き出しをはずして、床面の周囲にある、「すきまなのかな??」というぐらいのところをすべて、テープで塞いだところ、侵入が止まりました。

ほっとしたのもつかの間、今度はきっちの上の方から侵入。このときは、キッチンユニットと壁とのすきまに入れてあるコーキング剤がたまたまほんの少し注入されていなかった、点のようなすきまから入ってきていました。ここもコーキング剤を入れて塞いだら、侵入が止まりました。

それと並行して、アリが何を求めてきているのかをあれこれ調べてみると、キッチンユニットの一番下の引き出しに入れた砂糖が原因でした。ある意味、わかりやすぅ?。砂糖は、買ったときのポリ袋に入っていたのですが、封を切って小分けにしたあと、残りをクリップで留めてから、ジップロックに入れておいたものです。自然の中で生活するということは、こういう自然からの攻撃にも備える必要がありますから、東京での生活より、ていねいにやっていました。しかし、ジップロックのジッパーの口を端まで閉めきっていなかったために、そのすきまからアリが侵入していたのです。ジッパーのすきまから入り、佐藤のポリ袋の折り返しを何回かくぐり抜けて、破いた口から砂糖袋に入り込んで、砂糖盗み出していたわけで、砂糖袋にはびっしり黒いアリが入っていました。

この砂糖は捨てて、新しいものをジップロックに入れてしっかりジップをしめたのですが、前述のようにアリの侵入経路を塞ぐのに手間取ったために、アリの攻撃に遭いました。観察していると、どうやらジップロックの集めのポリ袋は、ジッパーをきちんと閉めていれば侵入を防げるようでした。しかし砂糖が入って売られているポリ袋は、アリの強い歯で食いちぎられていました。おそらく、ジップロックの袋の破こうと思えばやれるのでしょうが、中に直接砂糖が入っていないと、破く動機がないのかもしれないという印象でした。それ以来、砂糖や小麦粉など、アリのエサになりそうなものは二重袋にして、ジップを必ず端まで閉めることにして、前述の侵入経路を塞いだところ、今は侵入は止まっています。でも、また暖かくなると、侵入経路を探し、エサを求めてやってくるかもしれません。エサを見つけにくくしておけば、入ってきても得るものが無くて帰って行くでしょう。見つけたら経路を塞ぐ。この両方をやっていくしかありませんが、対策をとってもとっても入ってくるアリの恐怖を身をもって体験したのが去年の夏でした。

そんなわけで、岩国のアルゼンチンアリが仏壇のごはんにとりつくというのはよくわかるし、それがどれほどイヤな感じかわかります。家の中にアリに入られると、寝ている人のまわりでも平気でうろうろして、邪魔になると噛み付きますから、市民の中には「噛まれておちおち寝ていられない」という話が出ていたのもよくわかります。家の周囲にアリの殺虫剤をまけばある程度効果はあるのですが、六兼屋の経験では、あまり効果はありません。環境配慮のために効果を限定的にしているというのもあるでしょうし、殺虫剤をまくときにすきまがあれば、そこを通路にされてしまいます。岩国の人の中には、1か月1万円以上殺虫剤を買うという人もいましたが、それもわかります。

このアルゼンチンアリの大発生の問題は、人間の生活面だけではなく、生態系の破壊につながっている点です。アルゼンチンアリは運動能力が高く、頭もいいので、日本のアリを圧倒して行きます。移動速度は日本のアリの2倍。それが、コンクリートやアスファルトの上だとさらに差が付き、3倍にもなります。アルゼンチンアリの生息地が市街地中心なのもそのためで、人間がつくったコンクリートの街は彼らにとっては高速道路網が整った生活環境なのです。人間は高速道路や飛行機などの移動手段を手に入れることで、食糧を世界中から集められるように、アリも高速なほど広範囲からエサを集められ、大集団を養える。そのため、アルゼンチンアリは巨大集団をつくり、その集団の力で日本のアリの巣を攻撃して(1匹に対して、数匹で攻撃できる)奪い取り、絶滅させていくのです。

日本のアリが絶滅の危機にあることは、ほかにも問題を波及していきます。アリは、ほかの多くの生き物と共生関係にあります。たとえば、ある種のアリはシジミチョウなどの蝶の幼虫を巣穴に連れてきて、エサを与え、育てます。幼虫はアリからエサをもらう代わりに、体の蜜線から蜜を出すのです。こうして春になるとシジミチョウが舞うのですが、アルゼンチンアリは日本の蝶とは共生しないので、日本のアリが駆逐されると共生していた蝶も絶滅の危機に瀕します。日本のアリは、タネも運びます。よくコンクリートの割れ目から野草が芽を出しているのを見かけますが、アリがスミレやホトケノザなどのタネを運び、割れ目に落としていくことで、植物は生育範囲を広げることができるのです。外来のアリでは日本の植物のタネを運ばないために、こういった植物も危機に瀕します。アルゼンチンアリは、本来の生息地ではそこにあった共生関係をつくっているのでしょうが、日本に来てしまえば共生する相手がいないので、全体としてみると、生態系が枯渇していってしまうのです。

このアルゼンチンアリは、1993年に輸入木材と一緒に広島県に上陸したのが最初と見られています。わずか15年ほどの間に生息地を拡大し、西日本全体に広がりつつあります。気温が高いほど活動が活発になるので、温暖化とともに、東日本にも広がっていく可能性があります。

ちなみに、六兼屋ではシロアリ駆除にセントリコンシステムを使っています。家のまわりに専用のステーション(樹脂製の穴を埋める)をつくり、そこにシロアリのエサを入れて、1か月に1度、点検に来るのですが、シロアリが入ると、エサを毒に変えて巣穴に持ち帰らせ、巣穴ごとつぶすという方法です。六兼屋ができた2001年頃は、寒冷地なのでシロアリはほとんどいないけれど、近くまで来ているという話で、このシステムを導入しました。7年たった今、毎年夏になると、シロアリの攻撃が確認されていて、寒冷地に、南方生まれのシロアリの侵入が続いていることが確認されています。これまでシロアリ被害に遭わなかった土地での被害が広がるでしょう。

温暖化とグロバリゼーションは、外来種の侵入と拡大を招きます。その結果、人に被害が出る場合もあるし、生態系を破壊して、その土地にあったものが失われることも多いのです。

ほかの例も挙げておきましょう。

大阪では、ここ数年クマゼミの大量発生が続いています。クマゼミは体が大きく、鳴き声もうるさいので、夏の公園ではガード下のような騒音になります。温暖化とヒートアイランド現象で、都市は高温化と乾燥化進んでいます。その結果、地面が固くバリバリにしまってくるのですが、クマゼミの幼虫は体が大きく、力があるので、固い地面も掘って幼虫が育つことができるのです。以前はアブラゼミが中心で、ニイニイゼミ、ツクツクホウシもイタ大阪ですが、1980年頃から形勢が変わり、今ではアブラゼミがほとんど10%になってしまいました。クマゼミは光ファイバーの切断というとんでもない被害ももたらします。光ファイバーケーブルを枝と間違えて産卵してしまうのですが、堅い被膜樹脂に覆われた光ファイバーに穴を開けるほど、クマゼミの産卵管のパワーはすごいのです。今、通信会社では光ファイバーの交換に追われています。

三陸海岸 泊浜。ここはうまいウニの産地です。海の中を覗くと、ウニがびっしり、大発生。これはラッキーと言いたいところですが、この大発生したウニをとってみると、いわゆるウニの食べる部分である、生殖巣が極端に小さく、おいしくない。海底を見ると、一面の岩ごろごろ状態です。うまいウニが捕れる場所は、本来は大きな海藻がしげる、海中林と呼ばれる場所。海藻が無くなって岩が広がる現象を磯焼けと言いますが、今日本中の海で磯焼けが広がっています。原因は温暖化。海草類は温度変化に弱く、1度上がっただけで芽が出なくなり、成長が遅れて、海中林が形成できなくなります。海藻が無くなった岩にはサンゴモというコケのような植物が広がり、このサンゴモから出る物質がウニの幼生をウニに変態させるために、ウニはどんどん増えていくのです。海中林をつくるもからはウニの変態を抑制する物質が出るために、海中林があればウニの数はバランスが取れると同時に、ウニは海藻を食べて、それを栄養に生殖巣が大きくなります。海中林(藻)が無くなったことで、ウニが増え、増えても食べるところはない、という状態になっているのです。

ちなみに海中林は、ほかの魚たちの産卵場所になったり、小魚が育つ環境になるので、海中林の現象は魚の種類や数も減らしてしまいます。

シベリアと日本を尾服しているマガン。これも今数を増やしているのですが、その理由はシベリアの雪解けが早くなったこと。雪解けが早くなると、巣をつくる場所が増え、エサになる植物も増えるので、ヒナの生育率が上がり数が増えるのです。しかし、日本に渡ってきたマガンは越冬地で冬小麦の芽などを食べてしまうために、農作物に被害が出て、共生を考える農家を悩ませています。

イヌワシは、数を減らしています。イヌワシのヒナのエサは野ウサギなどの小動物。温暖化で植物の生育が早くなると、小動物は草の影に隠れてしまい、親鳥はエサが取りにくくなります。ヒナは食糧不足で餓死してしまうのです。食物連鎖の頂点にいる猛禽類の生活苦は、同じように生態系の頂点にいる人間の未来も予感させるものです。

今、世界では、絶滅の一方で大発生が起きています。しかし大発生はいずれ絶滅を招く可能性が高い。というのも、エサの量は限られているので、大発生しても養いきれずに、いずれ減少に転じることが多いのです。今後100年間で生物の40%が絶滅すると言われていて、これが人間に何をもたらすか、まだほとんどわかっていません。

しかし、アリや海中林の例からもわかるとおり、ひとつの種の大発生や絶滅は、その種だけのものではありません。ほかの種の絶滅や大発生を招き、やがては生態系がまったく変ってしまう。今は、生態系破壊が人間の生活に直結しているというほどは感じられないでしょうが、それが現実に身近になっていくのはこれからです。

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