(by paco)今週、12月13?15日の3日間にわたって、「エコプロダクツ2007」が東京ビッグサイトです。
僕は、4?5年前に行ったきりで、ここ数年は距離を置いていたのですが、今回は(オフィス文具や家具の)プラスグループからの依頼で、出展ブースで「トークショー」をやってほしいということで、昨日の最終日、行ってきました。その時のようすを、ちょっとランダムに報告したいと思います。
まず第一印象ですが、規模が大きくなり、活気が出て、非常に大きなイベントになったということです。まだ正式の発表はないですが、3日間で目標の17万人を超えて20万人は動員できたのではないかと思われる勢いでした。規模について言えば、数年前と比べると4?5倍の規模という感じで、各ブースも大きくなり、いわゆる東展示場をすべて使い切ったうえに、屋外展示でエコカーの試乗会などもやっていました。
来場者についても、数年前は企業の環境担当者や、目新しい物が好きなビジネスパースンが中心でしたが、今年は一般の入場者が増え、高齢の方や家族連れ、制服を着た中学生や高校生がたくさん見られました。土曜日ということもあって、ビジネスパースンのパパが私服で家族と着ているという感じや、隣の西会場でやっていたオンワードの特売の帰りに着たかな?という感じの人も含めて、非常に大衆化した印象です。
小中高校生では、学校がバスをチャーターしてやってくることも多く、総合学習の時間として扱っているようでした。先生が引率して細かく説明している学校もあれば、入口で野放しのところもありましたが、子どもたちがこういう分野に関心を持つことはよいことです。ノベルティグッズを集めることが目的になっているような子たちもいるものの、そういう子たちは教室で先生に環境の話を聞かされても、あまり関心を持たないでしょうから、それよりは少しは展示や話を聞いて、学べたのではないかと思います。
熱心な学校や子どもたちは、ブースの席に座って、企業の環境ソリューションのプレゼンテーションを聞いている子たちも多く、「こんなビジネスプレゼンテーションを飽きずにきちんと聞くんだなあ」と感心させられる場面もありました。
家族連れも多くなっていて、就学前の小さな子どもたちも。こういったちびっ子たちは、ピッキオのブースで枯葉のプールの中からヤマネやリス(のぬいぐるみ)を探し出す遊びだとか、ミツロウでろうそくをつくるコーナーで遊んだりしていたようです。シャープのブースでは、超大型の液晶画面を持ち込んで、楽しそうなエコムービーを定期的に上映していて、ここも子どもたちでいっぱいでした。
カップルでデート感覚できている人たち、リタイヤしたのかなと思われる世代のご夫婦など、混雑しつつも、混みすぎでむかつくというというほどでもなく、熱気にあふれているという感じでした。
さて、展示の方ですが、ネットやメディアで常時情報をワッチしている僕にとっては、特に目新しいものはなかったのですが、感じられたのは、どの企業、出展者も見せ方がうまくなったなという点です。
以前はプロダクトアウトの発想での訴えが中心で、スペック重視、ここが環境によいというところを技術面や科学的な側面で訴えることがほとんどでした。要するに表現が固く、一般の人にはよくわからず、生活や社会の中でどういう意味があるのかが伝わらない展示がほとんどでした。今回は、各ブーストも、コンセプトを絞り込み、メッセージをクリアにして、ひとつのメッセージで展示の全体像を伝えようという姿勢や、展示物そのものを絞って、自社の活動全体を伝えることはあえてやめてわかりやすさを追求したところが多く見られました。
たとえば、僕が展示のコンセプトワークを行ったプラスグループでは、「Eco-Structuring しくみを変えてエコにする」をキャッチフレーズにして、すべての展示を「しくみ」につながるように構成しました。実際のところ、一部は「しくみ」とはつながりにくいものもあるのですが、大きなメッセージと、表に出ているパネルやムービー、コンパニオンによるプレゼンテーションをすべて「しくみ」にフォーカスすることで、わかりやすさが増して納得感が出ます。
特に、今回は、キャッチフレーズだけでなく、それを象徴するミニムービーをつくることを提案し、線画と効果音、スーパー(字幕)による簡潔な表現で「プラスがつくったエコのしくみ」をシンプルに訴えることにしました。ブース内の数か所に大型液晶パネルを用意し、フラッシュアニメを繰り返しループさせておくことで、キャッチフレーズの意味合いをシンプルに伝えることに成功したと思います。
フラッシュアニメは「オークション」「工場」「アスクル」の3パターン用意しました。「オークション」は、不要になった家具が積まれて大きな金槌でつぶされるシーンから始まり、次に同じように積まれた家具がオークションにかけられて次のユーザーのもとで使われるというもの。「工場」は、総理大臣賞を受賞した前橋の工場のアニメ化で、「プラスがつくると、ピクニックにいきたくなるような工場になる」という点をアピール。「アスクル」編では、従来はいろいろ取引先に発注していたことによって何台ものトラックがやってきていたのが、アスクルに一括発注すれば、トラックも1回で済み、CO2発生も少ないことをアピールしています。
ほかの例も挙げてみましょう。
プラスグループのすぐ横に、競合に当たるコクヨが出展していました。どんな展示になるかちょっと気にしていたのですが、こちらはコクヨが以前から取り組んでいる、高知県の森林育成とのコラボレーションを中心にしたものでした。コクヨは高知県とのコラボレーションのほかにも、いろいろな環境活動を行っているのですが、多くを少しずつ説明することをやめて、森の活動とそこから生まれるコクヨ製品、さらに「コクヨはすべての製品をエコ化する」という大胆な宣言を出して、「エコじゃない製品に貼るシール<エコバツシール>」を配布していました。やや地味な印象はありましたが、コクヨという「事務機の会社」が、森づくりから主体的にやっているという情報は、来訪者には新鮮だったのではないでしょうか。
イオンはエアコンの利用で出るCO2量を具体的に示すべく、高い天井まで届きそうな巨大な「風船」を展示して、CO2は排出の多さと、削減量の大きさをPRしていました。
サントリーは水にフォーカスした展示、レンゴーでは段ボールをうまく組み合わせて(段ボール箱の中で製品を守る)緩衝材として組み立てる方法を来訪者が自分で考えるちょっとした遊びの作業ができるようになっていたり、分厚い段ボールが展示されていたりと、見て参加した楽しめるブースになっていました。
プラスグループではADK(アサツーDK)が中心になって展示の制作作業をやっていたのですが、こういった広告代理店の、エコに対する理解が深まり、手慣れてきたこともひとつの理由になっているような気がします。
全体としてみると、エコに対する市民の関心、そして企業の行動は以前とは比較にならないぐらい、大きなうねりになってきたのが実感できます。ただ、この動きの延長に「環境問題の解決」があるのかと言えば、まだまだNOといわざるを得ないのも事実。現状では「あまりに無頓着だった点を是正した」というレベルに留まっていて、もちろん、「是正」自体は絶対に必要なことなのですが、これを延長しても、解決には至らないでしょう。
横浜市でやっていることも含めて考えると、これから僕たちが取り組まなければならないのは、向こう15年でCO2を現状から30?40%削減という厳しいもので、それを実現するためには、ここの企業の努力や、エコプロダクツの普及だけでは無理です。一気に減らせるポイントを見極めて、行政、企業、市民などが努力を戦略的に集中させ、社会の形を変えるような活動に取り組んでいく必要があるでしょう。具体的な方法論については、知恵市場や、日経BPでの連載でも提案しているので、未来の形を見ていただければと思います。
今後、エコプロのような展示も、こうした社会全体から見た展示が行えるかどうかが大きなターニングポイントになるでしょう。エコプロ自体は日経新聞主催ですから、企業の活動を社会に知らせるという新聞のようなスタンスから抜け出るつもりはないと思いますが、それでは本当に社会を変え、環境問題を解決するための場にはならなりません。ようやくはじめの一歩が地面をしっかり踏みしめたという段階ですから、次の一歩に向けて、方向付けをしていく必要がありそうです。
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