(by paco)最近若い世代、特に大学生?20代の人たちと接する機会が多かったこともあって、これからの時代を支える若い人たちについて感じたことを書いてみます。あまりまとまっていないので、ランダムな感じになりそうです。
大学生ぐらいの、20代前半の人たちについて感じることは、基本的に教育が行き届いているなあと感じることが多くなりました。以前から教育水準は高かったのですが、違うのは学生のうちから職業について考えてきている人や、何らかの学ぶ機会を持った人が多いという印象で、これは結果的には、企業社会にスムーズにとけ込める人が多いという印象につながっています。
以前であれば、学生のうちはたっぷり遊び、就職活動を境にきっぱり大人になる、というマインドが見え隠れしていたのですが、今は新入社員であっても、こういう境界線をあまり感じさせません。自分はきちんと世の中に出る準備をしてきた、という雰囲気の人が多いのです。どこにそのような印象につながる部分があるのか、今ひとつ見えていないのですが、大学生を見ていると少しわかるような気がするのです。
大学生の職業意識について聞いてみると、以前とかなり違うのは「とにかくフリーターだけにはならないでほしい」というメッセージを親や大人たちから受けているという点です。このメッセージはかなり強烈に学生たちに入っているらしく、企業に正社員としてはいることが大人になることの条件というイメージを持っている人が中心になっているように感じます。
しかし学生たちの意識はもうちょっと複雑です。正社員になれというメッセージが出てくるということは、同時のそれだけフリーターも多いということで、フリーターが身近にいるだけに、そっちの方がいいのではないかという感覚を持つ気持ちもある反面、逆にフリーターは単純によくないもので、企業人として企業に順応することこそ善、というアンビバレンス(矛盾)に置かれながら、就職活動に入っていきます。
その就職活動は、以前のように決まったスケジュールに乗って進むという状況が薄れ、何となく始まり、何となく終わるという状況になってきました。その理由は、インターンシップが普及して、実質的な企業とのお見合いが早く始まること。インターンシップで行った企業にそのまま就職してしまうこともあり、人によって就職先が決まるまでのプロセスがばらけてきました。企業の方も採用パターンが多様になって、同じ新卒でも留学生も含めて採用する企業では、採用活動の時期が違うし、中途採用を通年やっているところで、特に第二新卒を採っているところでは、新卒採用も通年化しているようです。ある企業では、いわゆる4月入社という年1回の入社パターンを、春入社、秋入社の2回に分けたというところもあります。留学生の帰国組が秋入社になるので、それであれば日本の大学を出た人も、希望を募って、半年後の秋に入社してもらえば、一度に多くの新入社員を教育せずにすみ、平準化できるということでした。実際のところ、3月に卒業して10月入社という待遇に不安を感じる人が多く、「扱いはまったく同じです」といくら言っても、秋入社を希望する人は少ないようですが。僕なら、絶対秋入社を選んで、半年、旅行するだけどな。ちなみに学生の方は、こういう、いっせいではない状況そのものに戸惑いは少ないようです。もともと今の学生は入試が多様化していて、推薦入学も多いし、私権も各地で数回実施することもあたりまえ。AO入試(学科試験はなく、書類や面接などによる入学選考のみ)で入る人もいて、以前のように、この学部の人はみんな同じあの日にあの試験を受けて入ったのだ、という感覚はないのです。
そんな「人それぞれ」感覚の中で、正社員として就職するという感覚だけは強くなっていて、企業には行って、企業が求める仕事をするというところだけは、共通認識と持っている人たちが入社してくる、ということなのかもしれません。
研修でグループディスカッションをやってもらうと、そういう彼らのマインドがけっこう透けて見えてきます。同期で仲はいいのに、お互いの仕事について説明してもらうと、反応がよそよそしい。お互いにうまくつっこみ合えない場面がよくあります。どこか遠慮があり、あなたはあなた、君は君、という感じで、尊重しているのですが、高め合えない。仕事にまじめだからこそ、自分の仕事には真剣に取り組む、だからこそ、その真剣さを外から批判的に聞いたらいけないのではないかという、目に見えない「囲い込み感覚」になっているような印象です。新卒の時からそんなに互いを「尊重」しすぎたら、会社の中にセクショナリズムがどんどん広がってしまいそうで、何度かそんな話をしました。
そんなわけで、まじめです?っと企業社会に融け込む力があるのが大企業に入る新卒者のひとつのパターンである反面、まったく違うタイプの20代も存在感を増しています。
彼らに共通するのは、まず仕事が大好きで、真剣に仕事に取り組むこと、そしてそこに留まらずに、自分に与えられていない仕事にまで、必要と感じればどんどん自分から踏み込んでいくタイプです。このタイプは、大企業にいることもありますが、たいていは小さな組織化、個人事業主として独立していて、話すだけでもおもしろく、いっしょに仕事をしたくなるタイプです。
そんな彼らが共通して与える印象は、エネルギーレベルの高さです。エネルギーレベルというのはなかなか感覚的な言葉なんですが、以前はバイタリティと呼ばれたりしていたものだと思います。バイタリティというと、しかし、エネルギッシュな体育会系の力強さをイメージさせるのに対して、エネルギーレベルが高いというと、もうちょっと物静かな強さも含む印象になるので、合っているかなと思っています。
実際、最近合う、活きのいい若者たちに共通する印象は、物腰や人当たりが柔らかく、かといって自分が下に出るのではなく、対等感があふれているのに、決して敬意を忘れない、絶妙な好印象です。そしてそういう第一印象のすぐ向こうに、自分がやりたいことや興味のあることへの強いこだわりがある。それに向けた行動もすごく力強いのに、しなやかさを忘れない。そんな彼らと接するとき、この人の強さを象徴する言葉として「エネルギーレベルが高いなあ」と思うのです。
Aさんは大手広告代理店のコピーライター。僕のやっていることに敬意を払ってくれているのですが、よく聞くと、すでに彼の方がずっと大きな仕事をしていたりして、尊敬しなければならないのはこっちの方かと感じるときも多々あります。今回は横浜市の環境政策をまとめるキャッチフレーズをつくりたいので、知恵を貸してと声をかけたら、忙しい仕事の合間に関内の市役所まで来てくれました。僕ももともとクリエイターですから、ブレストの感覚はお手の物で、ポンポンとアイディア出しをして、2時間ほどでちょっとよさげな案をひとつだし、帰りにおいしい和食屋さんで食事を食べてから「これから会社です」といって東京に戻っていきました。聞けば、ろくに家にも帰らず、毎日仮眠と仕事の繰り返しの生活のようで、エネルギーレベルの高さにびっくり。ふだんの仕事ではなかなか関われない社会的な広告をつくるという今回の企画に興味を感じて、来てくれました。ありがとう。
Bさんは、とあるNPOで事業の実質的な責任者をやっています。この事業は、NPOが運営しているものの、事業の性質から別の株式会社で運営していて、大手企業のそれなりにまとまった額の資金が集まっています。環境ソリューションの例に漏れず、仕組みはややこしく理解しにくいし、ビジネスモデルも確立しにくい中で、どのような事業として理解してもらうかを的確に考え、プレゼンテーションし、具体的な案件について話を聞き、判断し、実務をこなしています。NPOでしか働いたことがなく、一般企業での基礎研修も受けていないのに、26歳という年齢にしてこれだけの仕事ができるというのは驚異的なのですが、本人は至ってさわやかな好青年系で、気負いはありません。学者から企業人、行政関係者、政治家とあらゆる人と会って、やり合っているはずですが、等身大で自分の言うべきことはいい、聞くことは聞くという彼の姿勢にはしなやかという言葉がぴったり来ます。
Cさんは、ぱっと見、小柄でかわいらしい小動物系の印象を与える女性。第一印象は癒し系ですが、話をしているとぐいぐい攻めていく知的能力の高さと、人の話をきっちり聞いていく優しさを併せ持っていて、強さを感じさせます。数時間の会議の中で、結局終始主導権をとったのは、彼女でした。
こういったタイプの若い世代に最近で会う機会が多くなってきました。今はまだ経験不足もありますが、これからあと5?10年、積み重ねれば、どんなことができるようになっているか、本当に10年後が楽しみ、という人たちと出会います。
政権を放り出してしまう総理大臣、野党第一党の党首は、自分が思いついた案を仲間が受け入れてもらえなかったといっていきなりやめるといいだしてみたり、仕事の重要性を忘れて新興商人から多額の接待を受けて平気な高級官僚など、大人たちのだらしなさばかりが目立つ今日この頃。若い世代の中から誰が将来を担っていくのかに注目するのも、楽しい物思いになってきました。
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