(by paco)先週、うつの話を書いたと思ったら、今週は音楽とはノー天気な、と笑われそうですが、その通り、音楽の話を書くことにします。
実は、うつのことを先週書いたら、けっこう大きな変化がありました。翌日から、めまいがぴたりとやんだのです。最近はめまいも長く続くことはなかったのですが、それでも、ときどき「あれ?」と思うことがあったのです。それが、ここ1週間、まったくなく過ごすことができました。仕事先に向かう足取りも、気がつくと「けっこう軽い感じ」と思うことが多く、何か変った気がします。
星野さんのことは、ずっと書こうと思っていたことでした。うつのことというより、彼に対するオマージュ(今はオマージュというより、リスペクトという言葉のほうがよく使われるかな)を書かなくちゃとずっと思っていたのですが、もしかしたら、星野さんが僕に書いてくれと言っていたのかもしれません。
今回は音楽ネタということで書こうと思いますが、来週あたり、改めて星野さんへの鎮魂のメッセージを書きたいと思います。
さて、今週pacoのホットな話題は、インディーズ音楽です。
インディーズとは、indies=indipendentから来た言葉で、独立系の音楽プロダクション&販売ルートで営業しているカテゴリーをさします。ではなにから独立しているのかと言えば、大手レコード会社で、要するに、中小・マイナー音楽会社ということになります。野球のように、メジャーに対してマイナーリーグという言葉の使い方で考えると、二軍といういいかたもできるかもしれません。
ではなにが具体的に違うかと言えば、やはりカネのかけたや規模感でしょう。メジャーには一流の音楽職人が集まっているので、たとえば、才能のあるボーカリストが一人いたとすれば、そこにぴったり合った、かつ魅力的な曲を作れる人を連れてきて、同じく一流の作詞家の作品をくっつけ、最新のアレンジ、最新の機材、そして安定感のある完成度の高い作品に仕上げて、そこにプロモーションをくっつける。メジャーレコード会社ならFM局やTVの音楽番組、またドラマの主題歌やCMとのタイアップなど、様々な方法で認知を広げることができるので、新人を一気に広めることができます。販売ルートも、全国のレコード店に一気にCDを行き渡らせることもできる流通力があります。やはりカネと才能のかけ方が大きいのですね。
とはいえ、いくらプロダクション能力と販売力があるからと言って、実際に売れるかどうかは別の話。その楽曲が音楽を聴く人に受けいられるかどうかは、やってみないとわからないのが、ヒット性ビジネスに共通する部分です。また、多くの人やたくさんのカネが集中投入されるということは、それだけ口出しする人も増えるわけで、それぞれの思惑や意図によって、本来の味が変えられてしまい、素材をスポイルしてしまう可能性があるのも事実。メジャーに見いだされてデビューすれば売れるというものではまったくありません。
一方、インディーズ陣営には、追い風が吹いています。第一には、音楽作りにかかるコストが飛躍的に下がり、同時にクオリティが大幅に上がっていること。電子楽器は猛烈に進歩していて、価格も一気に下がっています。PCを使ったDTM(Desk Top Music)のソフトウェアや機材は安くなり、同時に高性能、さらに感覚的に使いやすい物が大量に出回るようになりました。従来にないコンセプトの機材もいろいろ出てきて、しかも安いので、メジャーのように金をかけられなくても、いくらでも音楽作りができるようになっています。
第二に、音楽を完成させるのに必要な人員がぐっと少なくても済むようになったこと。今は、ひとりで作詞作曲からCDづくり、販売までを手がけても、かなりの水準のものがつくれるほどです。以前は、メジャーの音とインディーズの音を比べれば、差は歴然としていたのですが、現実的な差はほとんどありません(というより、一般的なPOPミュージックにはそれほど凝ったクォリティがなくても、十分行けてしまう)。背景にあるのは機材とコンピュータの進歩で、安く、高性能な機材で、クォリティの高い音楽がひとりでも短時間にできてしまうようになったわけです。10年前なら、ちょっとしたPOPSを仕上げるには、少なくともドラムス、ベース、ギター、ボーカルの4人変性は必要でしたが、今はボーカリスト一人ですべてをこなすことも十分可能です。
第三に、音楽の流通経路としてネットが広まったので、流通コストが下がりました。iTunesや携帯音楽サービスのような場は、まだメジャーが優位ですが、それ以外にも無数にインディーズ音楽を聴かせるウェブサービスがあり、販売もできます。価格も、ネット配信であればメジャーとまったく差がない、1曲150円から200円で売れるので、制作コストが低い分、インディーズの方が損益分岐点が低いということもできます。
では、インディーズ音楽の現実について、もうちょっと詳しく見てみましょう。まず、上記の第1・第2の点について。
作曲する方法はいろいろありますが、ひとつぐらい楽器は必要です。たとえばキーボートを使おうと思うと、作曲に使いやすく、音もそこそこよく、機能も豊富なキーボートが2万円も出せば手に入ります。10年前には30万円出しても変えなかった機能です。この程度の機材1台と、同じく1?2万円のアンプ&スピーカーがあれば、路上ライブなら十分できてしまいます。ギターが弾ければ、2万円程度でエレアコ(エレクトリックアコースティックギター)を買って、同じくアンプ&スピーカーで作曲と(うるさい原宿駅前でも)路上ライブが可能。もうちょっと出して、KORGのpa-50というキーボードを買うと(7?8万円)、人差し指一本でさらさらっと弾いた旋律に、すべてのアレンジをリアルタイムにつけて弾いてくれる「自動伴奏機能」があります。ドラムス、ベース、ギター、キーボードなどをすべていっぺんにつけてくれるし、もちろん局のイメージを選ぶこともできて、同じフレーズ(旋律)にボサノバのアレンジ、ロックのアレンジ、などなど自由に指定してつけてもらうことができます。伴奏のパターンは、世界の一流アーティストがつくっているので、さらっとやっても、ぜんぜんダサくありません。
DTMのアプローチで今っぽいのは、鼻歌作曲ができるソフト。「シンガーソングライターLite5」を使えば、マイクを通して歌った鼻歌がたちまち音符としてPC上に入力されます。さらにアレンジボタンをクリックすると、歌ったフレーズに合わせて編曲してくれる。その編曲したデータを演奏させてからおけにして、自分でつくった歌詞を歌って録音すれば、それでオリジナル曲ができあがりです。このソフトがたったの1万円で買えるのですから驚き。
というわけで、僕らの青春時代は、音楽をやるということは、まず仲間を集めてバンドを組み、みんな小づかいを出して(あるいは親をだまして)中古の楽器を買い、メジャーなバンドのコピーをするのがせいぜいだったわけですが、今は、まずは自分でちょこっとつくって歌っちゃおう、ということに対するハードルがものすごく下がっているのです。
そんな現実を反映して、自分でつくったオリジナル曲で路上ライブをしたり、ネットで公開して力をつけ、インディーズデビューにこぎ着ける人も増えてきました。
インディーズデビューぐらいのミュージシャンが集まっているサイトのひとつ、MySpaceに登録してみると、びっくりするぐらいたくさんの若いミュージシャンに出会えます。
http://www.myspace.com/
http://www.myspace.com/loooooon
このサイトのおもしろいところは、たくさんのミュージシャンがいて、楽曲が聴けるだけでなく、僕のように音楽を聴きたい人もたくさんいて、アーティストとかんたんに「友だち」として直接つながれるところ。「フレンド」という機能があり、気になった人に「フレンドのお誘い」をすると、承認されれば、相互にフレンドであることが示されるので、友だちの友だちの友だちの、という感じのつながりができあがっていきます。このあたりはSNSと同じですが、最初の登録に紹介が入らないこと、SNSのようにコミュニティを濃くする仕組みはなく、ブログと音楽などの公開機能が中心なので、気軽に音楽を聴き歩き、友だちになれるところでしょう。
僕は先週このサイトに登録して、何人かのミュージシャンと友だちになったのですが、すでに金曜日には藤田麻衣子さんが浜松町で行った無料ライブに行ってきくことができました。ネットで聴いていた楽曲を、メッセージを交換したアーティストが目の前で歌うのを聴けるというのは、なかなかエキサイティングな体験です。しかも、この一連の出会いがほんの1週間でできるというのも今の時代ならでは。ちなみにこの藤田麻衣子さんは出したばかりのインディーズデビューアルバム(CD)が瞬間値ですがアマゾン1位になるなど、びっくりの活躍ぶりです。
ウェブで曲を聴き、知り合い、ライブに言ってナマを見て、聞いて、手売りのCDを買ってサインをもらい、握手してもらって、音楽を聴くという密度の濃さが、インディー素を聞くおもしろさになってきました。このMySpaceでは、アーティストの方からアプローチしてフレンドになってほしいと言うこともふつうに行われているので、ファンを増やすこともできるのがおもしろいところで、僕のところにもなんにものアーティストがフレンド依頼が来ます。気に入ったアーティストのライブにはどんどん言ってみようと思っているし、その中からメジャーになっていくアーティストが出てくるかなと思えるのも楽しみです。
ところで、こういったところで聞ける音楽のクォリティですが、これがなかなかすばらしい。玉石混淆というのはあるものの、以前のように「ほとんどゴミ」ということはなく、平均水準はとても高くなっています。これも、上記の通り、機材や環境がよくなっていることが背景になっているのでしょう。
ということで、音楽をつくり、聞かせる仕組みは劇的に変化しています。インディーズのアーティストに刺激されて、僕も音楽をつくってみようかなーと思っているところ。さて、どうなるか、ひょっとして、上記の僕のMySpaceに僕のオリジナル曲が載る日も近いか??
コメントする