(by paco)290Dライフ:冬の六兼屋 2007 その3

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(by paco)まるやまうぇぶを見てくれているかたはご存知だと思いますが、六兼屋周辺で撮った写真を、なるべく毎日、載せています。冬の時期は庭も林も枯れてしまって、フォトジェニックじゃないので、ときどきお休みになってしまうのですが、2004年3月から、そろそろ丸3年になります。

写真を始めたのは、中学1年生、14歳からで、30年以上もとり続けていることになります。中学、高校、大学とずっと写真部で、大学の前後はそれなりに気合いの入ったアマチュアとして、クラブとしてだけでなく、仲間数人で、というのも含めて、写真展を定期的に開いていました。新宿センタービルやキヤノンサロン、ドイサロンなど、会場を借りて、写真展をやっていたので、年数回の写真展に合わせて作品をとり続ける日々でした。

1980年代の当時のアマチュア写真家は、もっぱらモノクロをとる人たちで、カラーはお金もかかるし、作品をコントロールできる範囲があまりなく、どうしてもラボ(現像所)任せになるので、あまりやらなかったのです。今はモノクロ写真を撮る人もすっかり減ってしまったので、まずはモノクロ写真の思い出話を少ししましょう。

モノクロ写真は、カメラにモノクロフィルムを入れるところから始まります。カラー写真とは、フィルムから違うわけです。あ、もちろん、デジタルではありえません、まだパソコンも生まれているかいないか、という時期です。モノクロフィルムはカラーより安かったし、さらに「100フィート巻を切り分ける」という技がありました。あまりにメジャーだったので、裏技ではないんですが。通常は36枚撮りのフィルムを買うわけですが、これとは別に、あめ玉がいっているような円筒の缶に入って、100フィートの長尺フィルムが売られていました。これはもともと35ミリの映画用だったのですが、映画が別のサイズになってしまったあとも、100フィート缶が売られていたのです。これを買ってきて、暗室でパトローネと呼ばれる、35ミリフィルムの巻き取っていくと、100フィートで30本ほどのフィルムをつくることができます。写真フィルですから、光が当たるとだめになってしまうので、暗室の中でも灯りをつけず、手探りの作業でした。からのパトローネは当時はヨドバシカメラなどでタダで出していたので、ときどきもらいに行ったものです。

暗室は学校にしかないので、家でやるときは、ダークバッグというのものを使いました。これは、手を突っ込んで手探りで作業できる簡易暗室で、黒いTシャツの首をなくして頭が通らないようにして、裾はファスナーをつけてしめられるようにしたというようなものです。もちろんTシャツではなく、光を通さない厚いゴム引きの布が二重になっていて、ファスナーも二重になっています。このダークバッグに、ふたを開けていない100フィートのフィルム缶と、パトローネを30数個とはさみ入れて、ファスナーを閉じ、「Tシャツ」の手(袖)の部分から、「体」の中の方に向かって、普通とは逆に手を突っ込みます。袖ぐりにはしっかりとゴムで閉まるようになっているので、手を突っ込んでしっかり位置決めすれば、光は入りません。その状態で、手探りで缶を開け、中から長いフィルムを取り出し、パトローネをあけて中の真にフィルムを巻き付けては作業を繰り返します。巻き付け用の簡単なケースと機具があり、これを使うと20枚、36枚など自由な枚数のフィルムをつくることができたのです。

こうして次作のフィルムをつくると、はじめからパトローネに入っている普通のフィルムと比べて、単価は半分近くになり、お金のない貧乏学生でもそれほどフィルム代を気にせずにたくさんとることができたのです。

大学のころにはすでに10年近い写真のキャリアがあったので、使い慣れた(父親のものをそのまま使っていた)キヤノンの一眼レフカメラ(Canon FT)、28ミリと135ミリの定番のレンズにもろもろの道具を詰めたカメラバッグを肩にかけて、あちこちの街や山、海に撮影に行きました。主に風景を撮っていたのですが、よく見かける風景も、モノクロの世界に映し込まれて、レンズを通して切り取られると、あれ?と思うような映像になるのがおもしろくて、自分なりの映像表現を楽しんでいたわけです。とったあとは、自分でフィルムを現像し、ネガを暗室に持ち込んで引き延ばし気で印画紙にやき、大きく伸ばした写真をパネルに貼って、展示用に作品になります。写真はケミカルなプロセスで現像されるのですが、アルカリ溶液で印画紙に付いた銀を還元し、それを酸性溶液につけて定着させるという作業です。暗室の中の酸のにおいは今でもときどきふっと鼻を突くぐらい思い出します。引き延ばし機でどのぐらい印画紙に光を露光するか、現像時間をどのぐらいにするかによって、写真の仕上がりがどんどん変るので、こうして仕上げたオリジナルプリントは、その時、その場でなければできない、本当の一点物でした。データはとって作業するのですが、同じネガからでも、同じプリントは二度とできないということをこのときしみじみ知りました。

というわけで、写真を作品に仕上げるというのは、本当に手間がかかる作業で、今思うと本当によくやっていたなあという感じがします。現像に使う薬品もみな粉末をぬるま湯で溶き、それを水や氷、お湯で、20度に保っておかないと化学反応がうまくいかなかったし、現像が終わったフィルムや印画紙は、数時間流水で水洗いして、そのあと乾燥させなければならいのでした。暗室の中で赤い、うすくらい電球をつけ、薬剤につけた印画紙の中からじょじょに画像が出てくるのをじっと見ているのは、ちょっと釣りの楽しみにも似た、時間をじっくり感じる体験だったのかもしれません。

大学のころはかなりハマっていたので、35ミリカメラでは飽きたらず、「ペンタックス6×7」というかなり大きなカメラも買って、こちらはブローニーサイズという幅が60ミリあるフィルムを使った写真も撮っていました。でかいカメラなので、シャッター音モスバライク大きくて、ガシャリと響き渡る音がまた快感だったり、という時期でもありました。

大学を出てしまうと、部室の中の暗室が使えなくなってしまうので、どうしてもモノクロ写真がやりにくくなり、仕事が忙しくなって時間もないので、カラーポジでの写真に切り替え、旅行の時や、ガールフレンドの写真を撮り続けてきたのですが、Canon F-1、CONTAX、NIKONOSなど、いろいろカメラも遍歴して、最後の一眼を手放したのが、10年ぐらい前。さすがにもう、とるのがめんどうという感じで、娘のベビーのころの写真を一通りと終わったころから、コンパクトデジカメに買えてしまいました。デジカメはフィルムカメラと比べると本当に楽ちんで、一度使ってしまうと、もう戻れなくなってしまったのです。

楽ちんで、どんどん取れるし、カメラを買ってしまえばフィルム代もかからないし、これでいいんだよね、と思ってきたのですが、ときどき「ちゃんとした写真を撮りたい」という思いが頭をもたげ、でもいまさらフィルムでもないし、と行ったり来たり。デジタル一眼が出始めた、5年ほど前にもちょっとフラッときたのですが、性能のわりに30万円以上ととても高価だったので、買う気が起きず、その代わりに、10倍前後の高倍率のズームレンズを持つハイエンドデジカメというのを、3台乗り換えつつ、ここ数年やってきたのです。オリンパスC-2100、LUMIX FZ10、そして去年買い換えたLUMIX FZ7。ライカ製12倍ズーム、600万画素、マニュアルフォーカスやマニュアル露出など、かなり使い手の自由度の大きな、カメラ任せではないカメラではあったのですが、やはりどこか物足りない。やっぱりデジタル一眼か。でもまだ高いし、大きいし、重いし、と思って当分先だよなと思ってきた僕の気持ちを一気に吹き飛ばしたのが、あるネットショップからのメールでした。

ペンタックスのデジタル一眼が、レンズ付きで6万円を切るという内容。しかも、ハイエンドデジカメでいちばんの不満点である、ファインダーが「明るくて見やすい、作品がつくりやすい」との宣伝文句。ついクリックしたのが運の尽きで、これはおもしろいかも、と一気にネットの中を動き回って、最新のデジタル一眼の事情をブラウズしました。10万円いないの予算で、今ほしいワンセットの機能が揃うなら、買ってもいいかなと思い始め、候補に挙がったのが、Nikon D40と、PENTAX DL2、DS2、そしてK100D。入門機から中級機というあたりで、この辺が値段的にも、懲りすぎないあたりも、ちょうどいいかなと思い、結局、「手ぶれ補正機能」が唯一ついているK100Dに、18-55ミリの標準ズーム、そして28-300ミリのSIGMA製望遠ズームをセットにして、ポチッとネット通販してしまったのでした。

ペンタックスは写真部時代から一度使ってみたいカメラだったし、長年使ったキヤノンはやっぱりちょっと飽き飽きしていたし、それにキヤノンのカメラって、あざといというか、「こんなところで、あなたみたいなユーザーはいいでしょ?」というような、トヨタ車にも共通する見下し缶があるのが気に入らず、人気のEOS KISSはパスし、廉価版で手を抜きすぎた感じがするNikonもパスし、という経緯になります。

さて、実際にてにとって使ってみると、超コンパクトなLUMIX FZ7と比べると重いし、そのわりにレンズは付け替えなければならないし、とめんどうが多いのですが、影響ではない、光学ファインダーはリアルで明るく、作品をとろうという気持ちにさせます。実際にとって見ると、やはり焦点距離が長いので、ボケ味がずっとすばらしく、抜けのよいクリアな絵がとれます。何よりガシャッというシャッター音と、素早いズーム、マニュアルでフォーカスを調節したり、露出をいろいろと選びたくなる操作性、そしてそれによって変る画質など、やはり人の介在する余地が大きいのは、楽しさにつながります。

買って数日で1000枚ほどとりまくり、だんだん楽しくなってきたところ。まずは、六兼屋のデッキに来る鳥たちをしっかり撮ろうと狙っています。

こうして、昔の趣味が復活できるという体験をすると、やはり年をとるのはいいことだなあとしみじみします。以前やっていた経験があるから、今また、写真をきちんと撮ることに気持ちがすっと向くわけで、こういう経験も、豊かさにつながるよなあと思う今日この頃です。

さて、では実際にどんなものを見て、どんな写真を撮っているのかについては、また次回改めたいと思います。

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