(by paco)森をひとつ、買うことになりました。ひとりで買うわけではないので、たくさんの人の協力が必要です。資金面、森を管理する作業面、そしてそれを通じて森を楽しむ人が一人でも増えればと思っています。
六兼屋ができてちょうど6年というタイミングの年末、裏の山で林の伐採が始まりました。六兼屋のすぐ北は、山になっていて、結構広い森です。ちょっとした隣地を挟んで上の林で伐採が始まったのですが、その伐採中の林のすぐしたのMさんから、「伐採するからよろしく」と聞いていたので、驚くことはありませんでした。
今年の9月、台風のあとに、Mさんの裏山の松が倒れて、Mさんの別荘にぶつかって、屋根が壊れそう、というという危ないところでした。林はアカマツと雑木の混淆林で、マツクイムシにやられていた松が台風で倒れたのでしょう。このあたりではよくあることで、六兼屋のすぐ隣地の松も一昨年切りました。
Mさんは林の持ち主に交渉して、松を切ることにしたのですが、地主のSさんは、Mさんの別荘の上にずっと土地を持っていて、その1200坪の森を、全部切るように木こりさんに頼んだのでした。そんなに全部切らなくても、奥の山の上の方の木は倒れてもだれの迷惑にならないのだけれどと思いつつ、切っている木こりさんに話を聞きにいってみました。
「だいぶ切りましたね」
「ほとんど松だからね、みんな切った方がいいと地主さんに言われてるんだよ」
「たしかにそうですね、切ったあとはどうするか、聞いてますか?」
「森林組合に頼んでヒノキを植えるとか言ってたけど、売りたいとも言ってたよ」
「ヒノキより、雑木を植えないですかね、僕はNPOをやっているので、植林と管理の許可をもらえれば、やらせてもらいたいんですが。もちろん無料でやります」
「それじゃあ、話をしてみようか」
というようなことがあって、紆余曲折あり、地主のおじいさんに接触できました。すんでいるところは六兼屋から見える向こう岸の集落で、六兼屋の土地を売ってくれたうちの隣です。このあたりの山は、こういう近くの人が持っている場合と、甲府や東京の人が持っている場合があるし、けっこう細かく分割されて所有されているので、地主が誰かわかることはほとんどないのです。
「木を切ってはだかになってますが、ヒノキを植えるそうですね。僕らに雑木を植えさせてもらえませんか? 無料ですし、迷惑はおかけしません」
「この土地はもう売りたいんだ、自分ももう歳だし、息子たちにも売って処分しろと言われているんでね」
「でもそんなにお金はないし、所有したいわけではないんです」
「オレはこのあとすぐにブラジルに行くんだ、息子たちが向うで農園をやっているから。そばで見ていられるならいいけど、遠くに行くから、勝手にされても困る」
「今はインターネットもあるし、写真で見せることができます。近所の方も僕のことを知ってますから、何かあれば怒られてしまいます。だいじょうぶです」
「いや、それなら買ってもらいたいんだ。不動産屋に話そうと思っていたところだ」
「では、いくらで売ってもらえるんですか?」
「……坪1万円はもらいたい」
「何坪あるんでしたっけ?」
「3反8分だから、1200坪ぐらいだな」と、登記簿を見せてくれる。3860平方メートル。
「1200万となると、かんたんには出せません。とにかくNPOの方で相談してみます。買いたい気持ちはあるのですが、お金が出ないとどうしようもないので」
というやりとりがあり、さっそくer(環境リレーションズ研究所)の理事長、鈴木あつこさんと相談して見たところ、「その値段だと簡単にと言うわけにはいかなね」ということになり、まずは検討持ち帰りと言うことに。
そうはいっても、Sさんがブラジルに行く日が12月中旬に迫っているので、なんとかならないものかと悩んだ末、再度交渉に。
「土地を買いたい気持ちはあるのですが、現段階ではお金が集められるかどうか保証できません。でもこのまま放置してしまえば、春になれば笹もあがって、やぶになってしまいます。ブラジルに行く前に、植林と管理の許可だけいただけないでしょうか。その頃までには土地を買えるように準備したいと思っていますが、間に合うかどうか保証できないんです」
「貸すのはダメだ。あんたたちだって、山を買っても経済性が悪いだろう」
「もちろん、お金のために買うんじゃありません。このあたりでも、まとまった雑木林が残っているのは、本当に少なくなってしまいました。この山は貴重なんです。昔から残してきた山が荒れるのは忍びないし、地元の人が管理しきれないなら、誰かがやらなければなりません。できることをしたいだけなんです」
「……じゃあ、いくらならいいんだ」
という話になって、このあと、金額は大幅譲歩し、なんとか買えそうな額にしてもらうことができました。といっても、僕個人が全額出せるわけではないし、やはりNPOとして資金を集め、買わなければなりません。
先ほど、地主さんと話が付いて、今週水曜日に山梨に行って、契約書を交わすことになりました。今回は不動産業者が入らないので、相対取引での契約です。まずは契約書を交わし、手付けを入れてしまえば、権利は確保できるので、あとは資金調達に専念できます。うわー大変なことになってしまった(^^;;;)。大胆すぎ。
必要資金は、残り500万円。小口の寄付も含めて、これから資金を受け入れるスキームをつくり、募集を開始します。みなさんのご協力も必要です。ぜひお願いします。
さて、なんでこんなに急に、資金も十分ではないのに、買うことにしたのかと言えば、この土地が山としてなかなかいい土地だというのが大きな理由になっています。地型は立てに細長い土地で、その長辺方向に、廃道が通っています。長いこと使われていなかったのですが、今回伐採するに当たって、木こりさんが大型トラックが入れるように重機で広げたので、1車線分の道幅はあります。やや急なのと、雨が降るとぬかるむので、乗用車ではきついかもしれませんが、四駆なら十分上がれるというアクセスのよさがあります。長辺方向に道が付いているので、土地のどこからでも最短で搬入と搬出がしやすいというメリットがあり、作業に必要な道具を持ち込んだり、将来、間伐した木を持ち出すときに作業性がいいのです。山林はまだまだあちこちにありますが、道路からのアクセスがいい土地は意外に少なく、すでに開発されていることも多いので、こういう土地は貴重です。
ふたつ目のメリットは、眺望です。やはり山は眺望があるかどうかで価値が大きく変わります。縦長の土地はそのまま高低差のある緩斜面になっていて、斜度は10度弱でしょうか、スキー場の初級の短い林間コースがとれるぐらいの感じで、長さは130メートルぐらいになるでしょうか。最下部は六兼屋にほぼ接する位置で、最上部まで上がると高低差は20?30メートルぐらい。上がってみるとびっくりですが、六兼屋から見るのとはまったく違う、ダイナミックなアルプスの眺望が得られます。手前に雑木林、その向に丸山の田んぼと里山、そのむこうに丘が続き、釜無川の谷を挟んで、南アルプスがぐっと起立しています。実にダイナミックな眺望なのです。この上部には、あまり気を植えずに、眺望が楽しめるような場所をつくろうと思っています。
3つめのメリットは、すでに林が皆伐(かいばつ=全部切ってしまう)されているということ。今の山林は、木があるところは荒れていて手をした草を刈り、間伐をするところから始めなければなりませんが、プロの木こりさんは他の木を倒さないように必要な木を切る技術が乏しく、事故の危険もあるので、嫌います。かといって太い木を切らなければ、林床に日が入らず、森は再生しません。林を買ってからの作業が、シロウトの手に余るということもよくあります。かといっていったん皆伐するとなると、かなりお金がかかります。今回の土地は今の地主さんがお金を出してすでに皆伐しているので、これから苗を植えれば、いい林に再生できそうです。
4つめのメリットは、やはりなんと言っても東京から近く、しかも六兼屋に近い、ということです。渋滞に当たらないようにすれば、片道2時間で来られるし、日帰り圏です。植林をするために集まってもらうのも、下草刈りに集まってもらうのも、アクセスが容易です。六兼屋に近いので、ここを基地にできるのもいいところで、縁もゆかりもない土地を買えば、ちょっとした道具を置いておく場所からつくらなければなりません。森の状態がどうなっているか、僕がいつも見て、必要な手を入れられるのも大きなメリットになります。植林後の下草刈りは、けっこう頻繁に必要ですが、歩いて隣という敷地なので、やはり楽です。
こんないくつものメリットがあるので、やはりerで最初に手に入れる植林地としては、ここに勝るところはないと考えました。erは、いま「プレゼントツリー」という商品を持っていて、けっこう売れています。インドネシアのカリマンタン島と、札幌の北の北大演習林で、植林をし、その木を2本で5000円程度で購入してもらい、権利を誰かにプレゼントできるというシステムで、大きく広告を打ってはいないのですが、コンスタントに引き合いがあります。すでに購入いただいたお客様を含めて、「もう少し近くに植林地を用意してほしい」というニーズはいただいているので、今回の土地は、これに対応するための植林地の確保でもあります。もっとも、北海道とカリマンタンは、土地を買っているわけではなく、植林の支援をしているだけなので、まったく立場が違うのですが、1箇所ぐらい自前の植林地はほしいというのが以前からの願いだったので、ここはがんばりどころです。
植林や管理の計画、土地購入の資金調達のスキームなどは、これから決めることになりますが、あなたを含めて都市住民の協力を得て、公園のようなきれいな雑木林をつくっていきたいと思っています。裸地を見て、そこに小さな苗を植え、苗が雑草に負けないように草刈りして、数年で林になっていく姿を、一緒に見守っていきませんか? 5年ですこしし林らしくなり、10年ですっかり若々しい林になると思います。自然が変わっていく姿を見守るのは、人生をもっとも豊かにする経験かもしれません。
詳しいスキームは近いうちに公開する予定なので、ぜひお楽しみに!
さっそく「協力してもいい!」と手を挙げていただけるかたは、資金面でも、作業の面でもかまいません、paco宛、予約のメールをくださいませ!
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