(by paco)280秋のデュアルライフ2006

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(by paco)最近、デュアルライフの話を書いていなかったので、季節のネタを書いてみます。

季節は11月、八ヶ岳南麓は秋から冬に一歩を踏み出す季節です。

薪の準備、枯れてきた草花の葉や茎の切り戻し、そして何より、この季節のお楽しみは薪ストーブの初炊きです。

例年、ストーブの初炊きは10月下旬。今年は秋、暖かい日が続いたので、11月に入ってからの初炊きになりました。夏の間、使わないストーブの上には、置き時計やぬいぐるみなんかが置かれているわけですが、こういったものを別の場所に移し、先シーズンの燃え残りの灰の上に、今年の薪を置き、着火剤に火をつけると、しばらくかいでいなかった、くぬぎが燃えるにおいがしてきます。すこし前まで、料理で使う火も熱くて汗が出ていたのに、この季節になると日の暖かさがからだに染み渡るようになります。赤い炎が、薪割りしたざらざらした表面をなめて、少しずつ焦がして、黒くなり、赤くなりして燃えていくのを眺めているのは、見ているだけで幸せな気持ちが湧いてくるのですが、ストーブマスターとしては、ぼんやり見ているわけにもいきません。薪ストーブにうまく火を入れるのは、特にしばらく東京にいて冷え切ったストーブに火をつけるのは、けっこう難しい作業です。薪ストーブ歴6年の僕は、自分のストーブのクセや薪のクセを熟知しているので、火の動きを見ていれば、次に何をすればいいのかがほぼわかります。

最初は左右方向に手前遠く、並行に2本薪を置き、その間に着火剤をひとつおいて、ライターで着火。その火の上に、細かく割れてしまった薪や春先に剪定して切った庭木の小枝をおいて、まずは火の勢いをつけます。放っておくと勢いがつきすぎてたちまち鎮火してしまうので、ころあいを見て、小口で5?ぐらいの細めの薪を2?3本放り込み、火の周りを見ながら足していきます。火に勢いが出てきたら、ガラス扉を閉めるのですが、ロックレバーを半端な状態にして扉と本体の間にすきまを空けておくと、勢いのある風が中に吹き込んで、火があおられてどんどん煙突に吸い込まれていけば、この段階はOK。この段階は部屋を暖めるのではなく、煙突を暖めることが重要です。

薪ストーブは、電動ファンなどはなく、強制的に空気の流れを制御できません。薪ストーブに空気を送り込んでいるのは、煙突なのです。煙突が暖まると、上昇気流が起きて、空気がどんどん上に上がって外に出て行きます。でも、ストーブのつけはじめは煙突が冷えている。すると、屋根の上の冷たい空気が下に下りてきて、ストーブの中に、逆に吹き込んでいる状態になっています。この、下におりるダウン・ドラフトを、初期の着火で上昇気流をつくり、上向きの流れに変えるところがポイントです。上からの冷気の圧力に打ち勝って、下からの熱がどんどん上がるようになれば、ストーブの火室内は気圧が下がるので、今度はストーブの空気の取り入れ口から室内の空気がどんどんストーブにはいるようになります。いったん暖まってしまえば、室内の空気を火室内での燃焼に使い、酸素が奪われた状態で煙突によって外に抜くのが薪ストーブの原理なのです。そのため薪ストーブをいくら焚いても、室内の空気は汚れません。常に外から新鮮な空気が導入さているので、その一部が燃焼に使われて外に出て行き、残りは人間が呼吸に使う。ストーブを使っていれば、換気がいらないのです。

初期の火力が上がってきたら、ストーブの天板においている温度計が200度を過ぎたあたりで、扉をきっちり閉める。このタイミングがとても難しく、火力が十分上がっていないと、扉を閉じると、上からのダウドラフトがおりてきて、火室内が冷えて火が弱ってしまうこともよくあります。ここの見極めが一番重要なのですが、経験値がものをいう場面です。温度や火のようすを目安に機械的に決められないのかと思うかもしれませんが、そう簡単ではありません。同じ火力で閉めても、外気温が低かったり、湿度が高いと、上からのドラフト圧力が強く、鎮火しやすくなります。では絶対鎮火しないぐらいバンバン燃やしてから閉める方がいいかというと、これもNOです。あまり燃やしすぎると、しめた時点ですでに薪が燃え尽きかけていていると、燃焼不足で温度が上がらず、ダウンドラフトにやられてしまうのです。薪が細くて燃えやすいか、乾燥が十分されているかによっても、火力が違います。こういった状況を総合判断して、このタイミングで閉めるという勘を働かせることが重要です。さらに、ストーブの機種や火室の大きさによっても大きく変わります。つまり、僕がいくら自分のストーブで熟練しても、別の家に設置された別のストーブなら、また違うノウハウ必要なのです。

なんとまあ、めんどうな暖房だと思うでしょうが、カントリーライフとは、こういう経験や勘がいるものをじっくり楽しむこと、そのものです。失敗しかけたり、火の状態を見るためにじっと火室をのぞき込んでいたり、そういう時間が、田舎ならではの豊かな時間だといえます。火がつくのが大変だから、やっぱり灯油の暖房機にしようと考えるようでは、カントリーライフは楽しめません。薪や外気温など、自然の状況によって方法を変えていくこと、そしてそのカンがうまく機能したときのちょっと自然に勝ったような気持ちが、カントリーライフの喜びそのものなのです。

扉をしっかり閉めて、火も安定したら、その火はいわゆるたき火のような火ではなく、木のすきまからガスが出て気化したものが燃えていくような、柔らかくてフワフワした炎になります。そのようすから、オーロラ炎と呼ばれて、薪ストーブオーナーのお楽しみです。

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薪ストーブの初炊きがすむこの季節は、薪割りの季節でもあります。たいていは先シーズンの残りの薪があるので、しばらくはそれでいいのですが、当然足りません。そこで追加で薪割りをするのですが、今年は8月に買っておいた丸太がたっぷりあるので、これを割ります。僕は市内の木こりさんに頼んで、2トン車で2杯分の丸太を、5万円で購入しておきました。エンジン駆動のチェーンソー(ドイツのSTIHLブランド)で2メートルサイズの丸太をざくざく、30センチぐらいに切っていきます。そして、その切った丸太を、そのシーズン、一番太い丸太を切ってつくった切り株の台に乗せて、スウェーデンのグレンスフォッシュ製鉄所が手作りしている斧でざっくり割ります。この斧が、本当にすばらしい斧で、手に馴染む柄(え)、一撃目の食い込みがよく、その後、一気に木を左右に分けてしまうような独特のカーブを持っています。いい道具をそろえ、それで自然の産物である丸太を家の中で暖をとる薪に変えていく作業は、ちょっと神秘的ともいえるような、無心になる作業です。短く切った丸太を眺めて、割れていくようすをイメージしながら、その通り割れたときは実に爽快です。

この時期から、春先にかけて、丸太がある限り日々薪割りをするのですが、僕はこの冬の夕暮れ、甲斐駒ヶ岳に沈む夕日を見ながら、夕方薪割りをするのが一番。沈む夕日を受けてひかる甲斐駒に祈りを捧げるような気持ちで薪を割っていくと、冷えてくる時間帯でも、心が温まります。

こうして割った薪は、デッキの下に積み上げておくと、2?3か月でなんとか薪として仕える程度に乾燥が進みます。割っておかないと、木の皮が邪魔をして水分が飛ばないため、いつまでも乾燥せずに、火がつかない、暖まらない薪になってしまいます。薪を「ワル」のは、水分を飛ばして乾燥させるために、重要な意味があるのです。

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初冬のもうひとつの仕事がシーズンが終わって枯れてきた草花を切って、庭をすっきりさせること。初夏から秋まで、順に咲いた宿根草、1年草を根元から切ってしまいます。すると、庭がみるみる「平ら」な感じになり、ギッシリ埋まっていた花壇はすっかり広くなり、庭全体が見通せるようになっていきます。この広々した状態に、年に1度戻るというのが、冬を持つ国の一番のすばらしさでしょう。

これからの季節、枯れてきた植物から順に切り戻し、クリスマスのころには庭はすっかり「平原」に戻ります。そして、また来年の初夏、このあたりではだいたいゴールデンウィークのころに再び芽吹いて葉が出始め、らいシーズンの花を咲かせる。その時のことをイメージしながら、1本1本枯れ草を切っていくのが、秋の次官です。

気温は日々下がっていって、今、六兼屋の外気は7℃。暖かだった今年の晩秋も、けっこう冷えてきました。周囲の木は、すでに紅葉して散った木と、まだ青葉をつけている木が混じっています。最終的にすべて紅葉して落ちるのは、クリスマス近くになります。落ち葉はきの季節も間近です。

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