(by paco)このところ、やや重たいテーマが続いたので、軽めの話題や近況報告をしようと思います。
僕は持病で腎臓結石、というか尿路結石があるという話は、以前、僕のブログでも書いたのですが、これが「持病」というのは、最初の発作が20代、以来、数年おきに過去5?6回、痛みに襲われているということ、西洋医学的には対症療法しかなく、石の発生を抑えるというような方法はなくて、痛みが出れば痛み止め、というような治療とはいえない治療しかない、というあたりが、以下にも持病らしいところです。とりあえず医者に「この病気で死ぬ人はいない」とかいわれて慰められているのですが、去年は痛みで仕事に穴を開けてしまったし、何とかいい方法はないかと、情報収集を少しずつしてきました。
こういった慢性病で、対症療法しかない病気に強いのは、やはり漢方や生薬系です。たまたま近くにあった中国漢方の医師に煎じ薬を作ってもらったり、鍼を打ってもらって、去年あたりはなんとかしのいできたのですが、この漢方医は中国出身で、日本語が必ずしもうまくなく、医者の姿勢としてもあまり細かく説明するタイプではないので、漢方なのにどこか対症療法的な感じがありました。実際には確かに鍼とこの医師の漢方薬で症状は早く改善するのですが、では予防という観点でどう考えるかを聞くと、「この前の時は1か月薬を飲んで、発作が4年あいたから、今回は2か月飲めば8か月あくよ」とうそぶく始末で、そういう話でいいわけ?という疑問も湧く始末。
もう少し漢方医としてきちんと説明してくれる人はいないかなと思って、ネットで探したところ、日本人の医師で、中国漢方で治療する医師が見つかり、何かあったら見てもらいに行こうかなと思ってきたのでした。
ここの小高先生は、もともと西洋医学の先生で、西洋医学の限界を感じて漢方を学びはじめ、日本の漢方を学んだものの、治療効果が上がらないことで断念。中国漢方にであって、学び、臨床に応用したところ、効果をあげることができたので、漢方に特化したクリニックを銀座に開業した、という経歴の人です。ちなみに、中国漢方と日本の漢方の違いは、投薬に使う薬草の量で、中国漢方では圧倒的に多くの量を使う。日本漢方がけちくさくなったのは、鎖国によって薬草の輸入が止まり、高くなったことが原因だとか。
銀座1丁目、中央通り(銀座通り)に面したビルにクリニックを構えて、すべて自費診療というクリニックだと、ぼったくられそうだなーという印象はあり、敷居が高かったのですが、この夏、ひょんなことからいってみることにしたのです。
義理の父が膠原病(リウマチ)の症状がひどくなってしまい、体のむくみや動きの悪さ、痛みでかなり参っていたので、だったら漢方医に診てもらったら?と、このクリニックに連れて行くことにしました。ついでに、僕も、見てもらおうというわけです。このクリニックのウェブサイトに「漢方の健康診断、1万円」というのがでていたので、これで見てもらおうと思ったわけです。
義理の親子で仲良く銀座に出向き、ちょっとあやしげな黒い外観の雑居ビルのエレベータを上がると、漢方薬のにおいがつんと来て、部屋の中は妙にゴージャスな椅子が並び、というそれっぽいしつらえで、いかにも金持ち相手の医者みたいな感じ。でもこういう見せかけには動じなくなったのは、やはり年を重ねたいい点で、ここまで来たのだから、とりあえず、どんなことになるか確かめてみようと腹をくくって(というのも大げさな感じ)、完全予約制なので、またされることもなく、義父と交代に診察室に。
診察室といってもちょっとした会社のマネジャーの個室という雰囲気で、医者らしい金属っぽい道具はありません。マネジャーの部屋というより、ちょっと伝統のある大学の研究室という感じかな?
診察は、漢方医らしく、脈と舌を見て、ベッドに寝せて腹を触診。診察前に、A4×5枚ぐらいにおよぶ細かな問診票に記入しているので、それについての問診がいくつか。で、こちらも自費診療なので、「ちゃんと1万円分、話を聞かせれてもらうからね」といろいろ聞いてみました。
50代後半かな、という医者としてはなかなか妙齢の小高先生は、所見を説明してくれます。まず、体が冷えていること。現代人は、基本的に冷えの傾向が強く、これが体の代謝を鈍らせている。と同時に、水分のとりすぎでで、体にたまった水が代謝できなくなっている。これを「湿邪」(しつじゃ)という。泌尿器の結石なので、水分をとれと、西洋医にも漢方医にもいわれたと話したら、「それは間違いです」ときっぱり。体が冷えて代謝が弱っているところに、さらに水分をとれば、代謝しきれずにたまり、余計に腎の機能が落ちるというのが所見でした。
実際、現代生活は、冷蔵庫が普及したことによって、原始的な生活とは比較にならないぐらい、冷たいものを口にするようになりました。暑いのですぐに冷えた飲み物をとる、それも砂糖の入った甘いもの(アイスコーヒーやら、フルーツジュースやらアイスクリームやら)を飲み、胃腸を冷やします。仕事帰りにビールをジョッキで、などというのは、体を冷やすという点では「自殺行為」というのが、漢方医の見解です。
「真夏にエアコンのないところに長時間いるのではければ、飲み物として飲むのは1日500mlで十分」といわれ、これまで何をしてきたのだろうと唖然。いわゆる健康系の番組では、血液がどろどろになるとか脅かされ、水をとれとれと言うわけですが、荒れは危険だというのが小高さんの見解でした。水をとっても代謝する力が落ちていれば(冷えていれば)、意味がないというわけです。
ちなみに、冷えといわれても僕は自分としてはぜんぜんぴんと来ません。夏はどちらかというと暑がりだし、汗もかく。でも冬は手足が冷えて冷え性になりがちだし、夏も腿や背中など、冷えを感じる場所がないワケじゃない。それに、確かに「無理をして飲んでいる」という印象はあり、なるほどと思えるところもありました。では漢方医のいう冷えとは何か、あるいは、次に話す「気」とは何か、さらに「湿邪」「風邪」(ふうじゃ)、あさらに「腎」(臓器としての腎臓ではなく、機能としての生命活動や代謝をさす)といった概念は、西洋医学や科学の考え方に慣れた僕らには、かなり難解です。でも、難解だということはこれまでのいろいろな知識吸収からわかっていたので、あえて深く質問するのはやめました。聞いてもたいていうまく答えられないひとが多いし、自分の状態に漢方医としての所見がついたことに、とりあえず満足して受け入れることにしたのです。ちなみに、漢方医にかかるときは、こういう態度はなかなか有効ですから、覚えておくといいと思います。
「体を冷やさないように」「飲み物は体を温めるお茶であるほうじ茶、ジャスミン茶、紅茶のいずれかで、それ以外の緑茶やウーロン茶、コーヒーは冷やすのでやめた方がいい」という指示と、「なるべく根菜類を食べる」「温かい食べ物をとる」「肉をひかえ」「青みの魚を増やす」、「寝る時に5本指ソックスをはく」といった注意をもらいました。
「冷やさない」という指示ではあったのですが、一方で、「エアコンは使うな」とはいいません。「今の時代にエアコンなしで過ごすのは無理でしょう、冷えすぎのところにいないように」ということでした。また夜も、寝苦しければエアコンを弱くかけて寝てもいい、エアコンはやめて布団をはぎ、パジャマをはだけて寝るよりはまし、という考えも現実的です。
そのうえで、「結石を予防したい」という僕に、体の状態を戻すために、漢方薬を飲むことを進められ、それもいいかも、ということで、しばらく飲んでみることにしました。薬は、煎じ薬ですが、クリニックにある機械で煎じて、1回ごとのアルミラミネートパックにしてくれるので、手間はありません。
その代わりお値段の方は、かなりお高く、ウェブサイトにあるように「月4万円」ではすまず、「月8?10万円」(診察料と薬代込み)というあたりが相場のよう。広告に偽りありです。明細書を出せとまではいいませんが、もう少し値段についての説明があると納得感があります。
僕の場合は、病気の状態ではなく、予防(未病)なので、通常の3割減の薬草の量にするということで、値段も3分の2程度。高いのは事実ですが、他に予防の方法があるわけでもなく、自分で人体実験してみるという方法をしなければ、あとは発作が来るのを待つだけということになりかねません。積極的に「迎撃」するためには、とにかく試してみないと始まらないのです。
投薬は、2?3週間単位で、飲み終わると再びクリニックに行き、脈と舌を見て体の変化を見ながら、薬の内容を変えていくという方法です。治療の方針は、まず体の冷えを取り、「気」の流れをよくして、体の活性を上げたところで、腎を強くする薬に変えていくというもの。体の活性が上がらないと、「直す薬」を投薬しても効かないというのはよくわかります。
最初の2週間では、「だいぶよくなってきました」と言われたものの、次の2週間では「あれ、また悪くなってるよ」といわれる始末。これってなんか、よくあるあやしいサプリの販売みたいと思ったものの、まあ騙されるのも体験と思い、さらに1クール、活性を上げる薬を飲みました。「悪くなっている」という指摘の時に、「ストレスはない?」というので、「特に変りはないですが……」と応えたものの、もしかしたら、ちょうどこの時期、締切のあるレポート採点の仕事が重なり、気持ち的にはけっこうプレッシャーを感じていたことを思い浮かべていました。その仕事自体は、ストレスレベルが高いとはいえない仕事だったのですが、その程度にしかストレスを自覚できないことそれ自体が、自分の体に対する感受性が落ちているということなのかもしれないと思い直しました。
考えてみれば、六兼屋にいて、特に急ぎの仕事がなく、時間があるなりに仕事をして、昼間は庭に出て、友だちが来てしゃべったりという生活をしていると、1日が過ぎるのがものすごく早く、特にとっかかりもない代わりに、気持ちが追い詰められるようなこともまったくない。本来、人間はこういうレベルのストレスが、「定常状態」であって、現代の都会生活は、「普通」と思っているレベル自体が、異常なことなのかもしれません。それだけストレスに対する感覚が鈍り、「みんなそのぐらいこなしているんだから」と自分を追い込むと、それが病気の原因になるのでしょう。僕たちの体は、原始時代から基本的に変わっていません。原始時代には、満員電車に押し込められ、5分の遅刻が大問題になるような生活はしていませんでした。そういう低ストレス社会に生きていると、ちょっとしたストレスがかかると、体に直接響くのでしょうね、だから、昔の人は「憤死」したり、悲しみのあまり死んでしまったりするのが、本当にあったのです。そのぐらいストレスは肉体に影響を与えるのだという感受性を、僕らは改めてしっかり実感する必要があるのかもしれません。
現代生活は、この激しいストレスと、上記の冷える飲食に常にさらされています。さらに、そのことの問題に気がついていないので、体からのメッセージを聞き取る感受性が薄れ、冷えているのに気がつかない人が多い、という漢方医の説明も、だんだん理解できるようになりました。
この流れで、以前から気になっていたのは、若い女性の薄着で、特に女子中学生、高校生の制服は、最悪です。真冬に素足でスカート、チャリンコをこいで寒い街を走って毎日通っていれば、体、特に下半身が冷え切ってしまうでしょう。女性器が成熟するタイミングで、冷えてしまえば、生殖機能の成長が十分でなくなるのは確実で、これがいま流行の婦人科系の病気の原因をつくっているように思えてきました。女子中高生に、温かいアンダースカート・パンツを認めない現状は、ある意味、犯罪的では?
さて、次の1クールというところで、「今後の治療の方針は?」と聞いたところ、漢方医の所見としてはだいぶ本来の状態に戻ってきたので、あと1クール飲んで、今回は終わりにしましょうか、ということになりました。また体調が落ちたと思ったら来てください、体調を見るポイントは、「食欲、尿と便、睡眠」ということでした。要するに、生き物としての基本ができているかどうか、ということなんですね。実のところ、この3つ、いずれも、悪かったという自覚はなかったので、ちょっとぽかんとしていたのですが、でも気がつかないこと自体が、これも感受性が落ちているのかもしれません。
結局、ほぼ2か月投薬を受けた、その後の体調ですが、いずれにせよ、石の痛みがあったわけではなく、体調そのものが悪かったわけではないので、特に大きな変化はありません。でも、けっこう違うのは、手足の先がいつもぽかぽかして温かくなったこと、冷たいものを飲むと確かに胃腸の調子が落ちるということが実感できた点です。だからといって、冷たいものをいっさいのまないというわけではないのですが、以前よりはかなり減らしていて、それほどほしくなくなったのも、体の感受性が少し戻ってきたということなのだと医師は言っていました。体調は、もちろん、いい感じです。
かんじんの石の方がどうなったのかは、今のところわかりません。ただ、石が暴れるのは、いつも初夏から夏にかけてだということは共通しているので、また来年、気温が上がってくる5月ぐらいに、見てもらいにいって予防として薬を飲もうかと思っています。
そうそう、一緒に通っていた義父は、僕のあともまだ通っているのですが、かなりよくなってきました。本人はまだあちこち痛いとか、嘆いていますが、周囲から見ると明らかに身のこなしが軽く、よくなっている感じです。それなりに、ちゃんとした医者なのです。
持病のある方の参考になれば、という今週の話題でした。
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