(by paco)275安倍晋三政権のタカ派的危うさ

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(by paco)小泉政権が終わり、安倍政権が始まりました。支持率は60%超えるそうですが、僕にはかなり不安感が伴う新政権です。これから日本は、外交面でも内政面でも、とても難しい時代に入っています。国民の間に漠然とした不安感があるので、今回のような強力な新政権に「頼りたくなる」意識が強く働いているのでしょうが、内容を見極めての支持とは思えません。

僕は基本的に、反体制、とまでは言わないまでも、体制の行動をチェックする側に回る立場をとっているので、今後も安倍政権の危うさについての情報は適宜ピックアップしていきたいと思います。

さて、現状、日本にとっていちばん大きな課題は、やはり外交でしょう。内政面では、小泉政権下5年で、なんとか最悪の状況からはいったん脱しているため、経済的にもほっと一息という状況で、外に目が行く時期です。内政面でも問題はあちこちに散っているのですが、それはまた別の機会に。

安倍政権にとって外交面での課題は、イシューとしてみると、中国・韓国との関係をどのような方向に持っていくかという近隣外交と、米国との、特に防衛面での関係です。中国、韓国とは、靖国参拝で冷え切った関係からスタートしているので、とりあえず雪解け方向には持っていきやすく、首脳会談も予定さているなど、当面は様子見のモードになっています。一方対米関係、特に軍事面での関係をどうしていくかは、これからアジア外交以上に重要なテーマになってきているので、ぜひ注目しておいてください。

これまで、小泉とブッシュJr.との間の個人的な親密さでとりあえず良好な関係を築いてきている日米関係ですが、小泉がやめて、安倍=ブッシュも、これまでに近い良好な関係が続きそうです。ただこれは、安倍が小泉と同様にブッシュと仲良くなるという意味ではなく、双方のお家の事情から、できれば波風を立てたくないという様子見モードになっているがゆえに、と考えられます。安倍は小泉から指名を受けて首相になり、当面、小泉が惹いた日米路線を踏襲することで、関係を維持したいと考えているでしょう。一方ブッシュJr.は2期目の後半ということで、すでに膠着状態、打てる手がない状態で、無事に2年間を経過させ、汚点を残さないことに意識が向いています。日米関係は良好なので、あえて変更を求めてくることは、現状ではないでしょう。

そんな状況から、安倍政権は、2年後の時期米国政権に目が向いていると考えられ、ブッシュの次の大統領に、どんな「おみやげ」をあげられるか、満足のいくおみやげをプレゼントすることで、次期大統領と安倍との間で、小泉=ブッシュのような蜜月関係を築きたいと考えていると思われます。国内に強い基盤を持たない小泉が、長期安定政権を維持できたのは、ブッシュとの強力な信頼関係が大きな理由です。昔から言われるように、日本の首相は米国政権から見放されたら、持たないのです。その意味で、いわゆる1955年体制(自民党政権体制)は米国に「朝貢」する属国になることで、日本の基盤を安定させてきました。安倍政権も、この方法で安定政権になることを狙っていると考えられ、次期大統領に照準を絞っていることでしょう。

しかし、米国の方はどうかというと、今、大きな戦略の転換点に立っていて、9.11以後の「単独行動主義」の失敗を受けて、国際協調という名の、「多極化」が進められているというのが、田中宇の見方です。この流れは、欧州はEUに、東アジアは中国に、西アジアは○○に、という具合で、各地域にリーダーを育成して、域内のリーダーシップをとらせ、米国が直接行動をとらなくても、米国の国益にかなった方向に世界が動くことを狙うという考え方で進むと考えられています。

この方法は、19世紀以後、欧米が進めてきた植民地支配以後の支配方法の延長にあります。帝国主義の時代には、欧米列強は軍隊を強くし、直接軍を派遣して後進国を軍事的に叩き、そこに植民地という支配地域をつくって植民地の直接経営を行いました。しかしこの方法では地域の市民からの反発が押さえきれずに、失敗する例が増えたり、大国同士が直接ぶつかって大規模な戦争に発展して自滅する危険があるために、ふたつの大戦後には修正され、植民地を独立させ、旧宗主国に忠実な政権をつくって、傀儡的に動かし、富を吸い上げようとしてきました。現在米国がとろうとしている戦略は、これをさらに推し進め、一国ではなく、複数の国を含む地域単位にリーダー国をつくり、その国に米国よりの政策をとらせることで、地域内が自律的に発展に貢献する状況をつくろうとしているようです。

東アジアでは、リーダーシップがとれる国は日本か中国しかなく、かつて米国は日本にリーダーになるように仕向けた節があるのですが、日本はそれを丁重に断りました。日本がリーダーになるより、現状のまま、米国が直接世界を支配し、米国世界のナンバーつーの座にいたほうが、日本にとってはメリットが大きいのです。アジア地域のリーダーになれば、よけいな外交努力が必要ですが、米国体制のナンバーつーなら、外交的な努力は不要の上に、経済的メリットだけを得られます。では中国がリーダーになればどうかというと、中国は周辺諸国を強引に従わせることが伝統のやり方で、日本は中国の傘下に入ってメリットは享受できないでしょう。実際、日本は有史以来中国の支配下に入ったことはなく、かといって、中国という国は対等な関係を築くという習慣のない国なので、日本と中国が協働して東アジアのリーダーシップをとるという道も困難が伴うのです。

このような中で、安倍政権は今後とも55年体制を維持し、米国に「国際協調主義」には知ってほしくないと考えているはずです。つまり、これまでのところは、日本にとってはブッシュ政権のような単独覇権主義は、都合の良い部分が大きかったのです。

日本の右翼政権(小泉や安倍政権はその代表格)は、ナショナリストとして日本の自立独立を求める方向なのに、実際には外交権も放棄したような対米従属の道を選んでいるのは、このような構造があるからです。

この方向の裏には、実は、米国の弱体化があります。米国は明らかに衰退していて、大きくなった帝国を維持できなくなっています。単純に言って、9.11以後でも、小国でしかもすでに弱体化させられていたはずのアフガニスタン、イラクと米国は負け続け(少なくとも勝てていない)、米国の「グループ会社」たるイスラエルは、この夏の戦闘で、イスラム勢力のヒズボラに敗北しました。米国の覇権は明らかに縮小しています。そのため、より少ない体力でも世界を運営できる方法として、国際協調主義をとらざるを得なくなっているのですが、安倍政権はそうはさせまいと旧体制の維持を図っているわけですね。

こういう構造を見ると、安倍政権の次の戦略が見えてきて、安倍政権は、今後、憲法を改正して、集団的自衛権を解禁し、自衛隊を軍に格上げして、米国軍と一体化させるという方向をめざすという方向になりそうです。米国が、中国を東アジアのリーダーとして位置づけるのを阻止するためには、日本が米国と軍事的に一体化して、米国をアジアに直接関わるように、「ヒモづけて」おいて、日米が中国と一定の距離を置いて弱い牽制関係を維持した方が、好都合と考えているわけです。まあ、要するに中国に使えるのと米国に「仕える」のとでは、米国に「仕える」方がいい、という判断なのですね。

この戦略を実現するために、憲法9条を改正するか、解釈を変更して集団的自衛権を解禁し、米国との軍事外交面の一体化を進めるというのが、安倍政権の戦略です。

ちなみに、現状の軍事戦略と集団的自衛権との違いは何かというと、現状は日米安保条約の下、片務的な責任になっています。日本が攻撃を受けたときは、米国は日本に代わって軍事行動を起こす約束ですが、米国が攻撃を受けても、日本は米国について戦争をする義務がありません。これに対して集団的自衛権では、米国が攻撃を受けても日本が協働して軍事行動を起こせるようになります。つまり、9.11のあとのアフガン攻撃やイラク攻撃に、直接軍を送る法的なしくみができるのです。日本はイラクには「復興支援」として自衛隊を送り、戦闘には参加していませんが、これが戦闘に参加できるようになるし、またその時に、国連のわく組で参加する必要もなく、米国と単純に共同歩調がとれるということとになります。なお、「自衛」という名前になっていますが、世界の戦争で自衛と侵略は常にイコールですから、自衛権とは、軍事行動権といいかえてまったく問題がありません。単純な侵略を自衛をいいかえることなど、とても簡単なのです。

以上のような話を、軍事評論家の神浦さんも説明してくれているので、こちらに転載します。参考にしてくださいませ。

さて、ここまでは、状況説明ですが、あなたは、こういう安倍政権の方向に賛成ですか? もし反対なら、他にどんな道があるのでしょうか。僕にもよくわかりませんが、引き続き考えていきます。

▼神浦.com 2006.9.27より
http://www.kamiura.com/new.html
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[概要]久間防衛庁長官は昨日の就任記者会見で、集団的自衛権行使をめぐる政府解釈について、「今のところ従来の解釈を踏襲しながらやっていくが、現実に即した場合、その解釈だけで乗り切れるだろうか。具体的に検討する余地がある」と述べ、見直しに前向きな姿勢を示した。一方、公明党から入閣した冬柴国交相は、「我が国に対する急迫不正の侵害がない限り武力行使はできないという解釈が一貫しており、集団的自衛権の行使はできない」と明言し、見直しについては「個別的自衛権の範疇(はんちゅう)に入る部分」と条件をつけた。

[概要]この問題を本日の産経新聞は、朝刊一面トップの大見出しで、「集団的自衛権 解釈見直し」と書いている。そして安倍首相が「日米同盟では双務性を高めることが極めて重要。集団的自衛権の研究をしっかり進め、結論を出していきたい」という談話を報じている。安倍首相は持論の憲法改正と同じく、集団的自衛権の解釈変更に積極的に取り組む姿勢を強調したと報じた。

 しかし安倍首相の憲法改正には、当然ながら集団的自衛権の行使を容認することが内包されている。だから今の段階で言えることは、安倍首相は憲法改正よりも先に、集団的自衛権行使の”解禁”だけでも目指していることになる。それほど急ぐ事情とは何なのか。

 その理由は2年後である。2年後には米大統領選挙で、ブッシュ大統領に代わるホワイトハウスの新しい主(新米大統領)が決まる。その新しい主に日本の集団的自衛権の解禁を”プレゼント”したいと考えている様だ。安倍首相が表明した5年後の憲法改正では遅すぎる理由がここにある。

 日本がベトナム戦争で自衛隊を派兵しなかったのは、交戦を禁じた平和憲法が盾になったわけではない。アメリカが自衛隊の派兵を諦めたのは、平和憲法が禁じた集団的自衛権の行使がベトナム参戦の盾になったのです。それが証拠に、現憲法下でも自衛隊の集団的自衛権の行使をだけ禁じれば、戦場のインド洋やイラクに自衛隊を派遣できることが可能になっています。

 また冷戦終結で宿敵ソ連を失い、日本の専守防衛は意味を失った。そこで日本政府がとった策は、集団的自衛権の「解釈拡大のなし崩し」なのです。集団的自衛権の範囲を解釈拡大することで、日米両軍が共闘できる有事法制の周辺事態法(99年)ができた。さらに同時多発テロでも、無理を承知の解釈拡大と、2つの臨時の特措法で小泉政権は乗り切った。

 しかしこれ以上の解釈拡大や特措法では、集団的自衛権の行使を禁じた壁は崩せないと誰もが考えている。それでも安倍政権は無理矢理崩して”解禁”し、2年後の新しい大統領にプレゼントしたいのです。それで安倍政権の安定と長期化を図り、5年後と表明した憲法改正へ突き進む作戦なのだ。

 さて安倍政権がどのようなマジックで、集団的自衛権の行使を禁じた壁を崩すのか。皆さんも御一緒に考えてください。あえてヒントをいえば、日本の核武装論にタネが隠されています。来月10月の「所長ご挨拶」でそのマジックのタネ明かしをします。

 まだ2年もあります。その間に参議院選挙などで自民党が大敗すれば、安倍政権は崩壊します。崩壊すれば集団的自衛権の解禁はありません。しかし安倍人気がさらに高まり、選挙で大勝すれば”一気”に「行使の禁止」を崩します。タカ派を自他共に認める安倍政権らしい時代が始まりました。

 公明党との関係ですか? それは今言えば悪口になるから言いません。でも連立与党の公明党の存在が、安倍首相が進める集団的自衛権行使のストッパーになると思いますか? 公明党はイラク派遣に最後まで反対をしましたか? 
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