(by paco)270民主国家に、戦争ができる理由(11)

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(by paco)この連載もいよいよ最終回になりそうです。

前回、「政府の主張に対して、『本当はどうなのか』を知ることもまた、市民が意図を持ってやるしかないということを意味します」と書きました。そのためには具体的に何をすればいいのでしょうか。

政府の影響力の外にある情報源を押さえておき、定期的に情報をとったり、戦争が起きそうといった状況の変化が起きたときに、政府の公式見解以外の意見を知る場を確保しておくことが重要です。そこで、僕が日頃チェックしている情報源を、最後に紹介しておきます。

こういった情報サイトを見るときには、注意してもらいたいことが3つあります。いわゆる公式見解以外の情報を見るときの基本になるので、ぜひ覚えておいてください。

(1)情報の信頼性についての考え方

テレビや新聞、伝統のある雑誌などの大メディアは、多くの人々の支持を得ているし、歴史もあるので、「そんなに間違ったことは伝えないだろう」という信頼感があります。しかし、今回の連載で考えてきたことは、こういった大メディアが「おおいに間違えることがある」ということでした。「間違える」が言い過ぎなら、「政府よりの考えを伝えるメディアとして方よりがちだ」ということは押さえておく必要があります。朝日新聞のような「左翼」と考えられているメディアであっても、実際には政府と大衆に迎合して、政府の行動に対する批判を忘れて体制の翼賛に回ったことがあるという例を、ここまでの連載でも指摘しました。

つまり大メディアも「信頼」できるとは言いがたいということです。

では、以下で紹介するようなメディアなら「信頼」に値するのかと言えば、もちろんそれほど簡単なわけはありません。むしろ信頼は薄くなるのはやむを得ないでしょう。そこで、信頼性をどう考えればいいのかという点が重要です。

僕は、小メディアの信頼性を、情報発信者個人、または一小企業のアイデンティティとして位置づけ、一貫した主張を行っているかという点を重視しています。わかりやすくいえば、情報発信者が「自分の信念や良心、哲学に照らして、きちんとした情報発信をしていると体を張っているか」ということです。逆に言えば、そこに書かれている情報自体が「正しいかどうか」ではなく、情報発信者が「これは自分の存在かけて書いたものだ」と体を張っているかどうかをみるということです。

このようにみると、その発信者自身の視野の狭さや思想信条で、「偏っている」可能性もあるわけですが、そのことは以下に書くように、問題にすべきではありません。あくまで一貫して自分が考えたメッセージを発信し、それに責任を持とうとしているかということが重要です。

たとえば、以前から僕がたびたび引用しているジャーナリストの田中宇(たなかさかい)は、彼のレポートをウェブサイトで読めばわかるとおり、ここ数年間、基本的なスタンスはまったくぶれていません。もちろん、間違えた分析をしている場合もありますが、その場合はあとから「あれは違っていた」と書いているか、間違った分析の上にさらに分析を加えて、自分の主張をさらに言い張っているように見える場合もありますが、少なくとも一貫した主張をしようという努力ははっきり見て取れます。こういう姿勢で発信されている情報こそが「信頼性の高い」情報だと理解することができます。繰り返しますが、信頼性がたいということと、その情報が「正しい」かどうかということは別のことです。「正しい情報」とは何かを定義すること自体が困難な中で、それ以外の赤銅を探した結果がここでいう「信頼性」なのです。

その意味で、以下の情報源には挙げていませんが、たとえば小林よしのりの主張も、「信頼性がある情報源」といえます。ここ数年の彼の主張は常に一貫していて、僕自身はそれを「正しい、納得感がある」主張だとは理解していませんが、信頼性は高い。だから、僕はときどき書店で彼の作品は目を通し、彼のような右よりの人の立場がどんな主張をしているかはチェックしています。自分の考えと照らして「正しくない」と思える主張でも、僕自身の考えの「正しさ」を確認するための軸のひとつとしては役に立つのです。

(2)情報の偏向についての考え方

上にも書いたとおり、信頼が置ける発信者からの情報であっても、それが「適切に考えられているかどうか」はわかりません。小林よしのりがかなり右寄りに傾いているのと同様に、田中宇の分析は、あまりにアクロバチックにすぎていて、「その解釈が成り立つなら、別の解釈も成り立つだろう」と思わせるときも多いし、ミスもしょっちゅうしています。しかし彼の視点で見るとこの事態がどのように見えるのか、という角度でみていくと、田中宇の立場も、自分の位置を図るための重要な「三角点」になります。彼が左端だ、小林よしのりが右端なら、自分はその中間のどこにいるのかと考えることで、自分のポジションが見えてくるわけです。

そういう点意味では、以下の情報源はいずれも「偏向」している(偏りがある)と感じるものが多いかもしれませんが、偏向していること自体はむしろ自分のポジションを確かめる軸を提供しているという意味で、良いことなのです。

ここで、田中宇の分析についてよく指摘される「陰謀史観」について考えてみます。陰謀史観とは、正式に主張されている見解とは異なる、表には見えないはかりごとによって世界が動いているという考え方で、たとえば9.11テロは「アルカイダが米国の豊かさを逆恨みして行った破壊行為」という公式見解に対して、「アルカイダは米国諜報部門の意向を受けていて、ブッシュJr.は政治力を上げ、軍産複合体やイスラエルと強化するために、アルカイダにテロを行わせた(自作自演)」という主張になります。このような陰謀として世界をみることは、噴飯ものだと考える人もいるでしょうが、その一方で政府の公式見解も「正しい情報を流さない」ことが普通にあることを考えると、陰謀史観とは公式見解を疑い、それ以外の仮説を立てようとする行為を意味していることがわかります。つまり、公式見解を信頼せずに、別の可能性を考えようとすれば、それは常に陰謀史観と呼ばれる運命にあり、その意味で陰謀史観は、政府の考えを疑うための大事な方法論だということがわかります。

もちろん、田中宇が示す「陰謀」が、「正しい」かどうかはわかりません。しかし「陰謀が裏ににある」と考える田中宇の発想そのものは、とても健全で信頼が置けると考えるべきです。

(3)情報のかみ砕き方

「信頼」できる情報源にアクセスして、「偏向しているかもしれない」情報をとったら、それを自分なりに解釈して、かみ砕き、自分の考えに整理しておく必要があります。結果として、たとえば田中宇のような陰謀史観が自分の考えになったということはあるかもしれませんが、いずれの情報も黙って鵜呑みにしてしまっては、政府の公式見解を鵜呑みにするのと同じぐらい危険です。

情報をかみ砕くときの基本は、ひとつのイシューについて、まったく異なる意見を読み、比較することです。そしてそのためには、自分の考えと食い違う情報にもアクセスし、対比する作業が有効です。

たとえば小林よしのりが最近「A級戦犯」について本を出しましたが、この本ではA級戦犯などあり得ない、つまり東京裁判そのものを全面的に否定しています。これに対して、A級戦犯という扱いを評価する人の意見を対比させてみると、対比の中で自分の考えがどの辺なのかがわかるのです。

このあたりの具体的なアプローチを書いたのが僕の本、「考え方のつくり方」(大和書房)で、たとえばグロバリゼーションというイシューを考えるときに、「グロバリゼーションは善」「悪」というふたつの意見を対比させて考える方法を提示しています。

前述の通り、僕たちの生活では大メディアからの情報=政府の公式見解が垂れ流されているので、それを疑って本当のことは何かをつかむためには、政府の見解とは異なるメッセージを見る必要があります。そのため、以下の情報源でも政府とは立場を異にする情報源を中心に挙げました。

このようにして、最後は自分なりの考え方をつくれってもらいたいのですが、その第一歩として、TVのニュースで出てくる情報と、以下のような情報源で提示されているものとの違いをぜひ読み、感じてもらいたいと思います。

政府の公式見解に翻弄されて、望まない殺し合いに突入することのないように、あなたの知能が必要です。


■田中宇の国際ニュース解説
http://www.tanakanews.com/
※独自の角度から国際ニュースの分析を行うメルマガを配信中。

■村上龍のJMM
http://www.jmm.co.jp/
※当初は経済専門家による分析が中心だったが、現在は、世界各地に在住の日本人が、その地の生情報を自分の視点でレポートするコンテンツが充実。レバノン戦争のレポートも非常にリアル。

■シバレイ
http://reishiva.exblog.jp/
※戦う若手報道カメラマン、シバレイさんのブログ。どんなにひどいコメントをもらっても断固反論する態度は感服。イラク戦争の報道をコンスタントに発表している。

■神浦元彰の日本軍事情報センター
http://www.kamiura.com/new.html
※元自衛隊員で軍事評論家。わかりやすい解説と、独自の点で人気。メディアへの露出も多くなっているが、FMやAMのラジオが多いのも、特徴。やはりTVや新聞では彼の情報は扱いきれないのかも。

■オーマイニュース
http://www.ohmynews.co.jp/
※韓国で成功した、市民ニュースサイトがついに日本上陸。市民記者が自由に記事を投稿し、大メディアにはない小さなニュースや、台メディアは取材にいかない危険な場所からのニュースを掲載することをめざす新カテゴリーメディア。あなたも市民記者になって、「我が町の運動会」のレポートを送ってみる?

■日刊ベリタ
http://www.nikkanberita.com/
※世界各地に契約特派員を置き、ニュースが集まるサイト。オーマイニュースより専門的なニュースと解説が読める。

■ビデオニュースドットコム
http://www.videonews.com/
※映像ジャーナリスト・神保哲生が主宰する、ビデオニュースサイト。気鋭の社会学者・宮台真司との対談も連載中。おもしろい視点と、興味深いゲストによるニュースが多いが、対談を長取りした番組が多く、長時間みるのがつらい。編集してくれるといいのにな。

■DAYS JAPAN
※映像ジャーナリスト・広河隆一が編集する、リアルの雑誌「DAYS JAPAN」。フォトジャーナリズムの復興をめざした誌面は、非常にインパクトがあり。以下のURL出ていき購読の申し込みもできる。中東問題を中心に国際紛争取材が専門。
http://www.fujisan.co.jp/Product/1281680978/http://www.hiropress.net/

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