(by paco)テーマ:「変革のリーダーシップ」
○冨山和彦氏(株式会社産業再生機構 代表取締役専務(COO))
○星野佳路氏(株式会社星野リゾート 代表取締役社長)
○後藤英恒氏(株式会社東ハト 取締役副社長 )
○小城武彦氏(株式会社産業再生機構、元カネボウ株式会社 取締役兼代表執行役社長)
■外部からの力を使って変革の難しさとメリット
小城●冨山さんの使命でカネボウに行った。年功序列の会社。カネボウでは44歳は普通課長。なのに、社長として入った。プロパーばかりで外部から人材の違和感。社長とは、仕事をせずに神輿に乗っていい暮らしをしているのが社長という目で見られた。再生のためになることしかしない。言いにくいことをからっと行ってしまうキャラで攻めた。
後藤●ユニゾンキャピタルから、会社更生中の東ハトに入社。カネボウと同じ状況。外からの人間として、いいたいことを言ってきた。「なんで坊や」と呼ばれた。「なんでこれをやってるんですか?」と聞き続ける。朝一番早くいて、夜いちばん遅くまでいて、仕事をしてきたことが信用につながった。
星野●組織の抵抗には二種類ある。外に出るものと出ないもの。変化に対して保守的だから、抵抗があるのは当然。やっかいなのは、表向きは納得しているようにしているのに、水面下で進んでいる抵抗がある。方法として、最初の1年は、全員が一致する目的にフォーカスする。サービスがいいといわれたい、収益がいいなど、給与を上げよう、休みを増やそう、生産性を上げよう。誰もが一致する利害に集中すると、水面下に潜らなくなる。抵抗が表に出てくると他の改革をやり出したときに、抵抗が表に出るようになる。
冨山●危機感があるかないか。年を食えば、それだけ抵抗感が大きくなる。危機感がトリガーになる。中小企業の方が、危機感を共有しやすい。むずかしいのはダイエーやカネボウなどの大組織。危機感を共有させるにはどうさせること。あんたはもう死んでるんだよ。とどう伝えるのか。国が関与するとかえってOKと思っている。特に高学歴のおっさんはダメ、見たくないものは見ない。実感を与える。1時間後に北極海に落ち、そのあと10分で死ぬことを本当に理解させられるか。逃げ方に頭がいいので、難しい。星野さんの手法も正答だが、生け贄が必要な場合もある。でも手法は企業によって異なる。カネボウは死んでいることに気がついていなかった。三井鉱山ではみんな沈んでいた。彼らの思いをどれだけ彼らの思いを洞察するか。信じられないところで自爆テロを受けたりする。
小城●カネボウの時は、帰属型の組織。そもそもこの会社って何をやりたかったんだっけ? ビジョンの再言語化。これを通じて、カネボウのローカル言語を学びたかった。経営理念は以前からすばらしいものがあった。しかし経営陣がやっていなかった。ウソがバレバレだった。スタッフの仕事をなくした。想定問答などいらない。会議は全部の会議に出て、スタッフが仕事をしていないことを見せてしまう。
小城●ダメになる会社は経営者が現場に行っていない。直接現場・全事業所に行った。経営陣の思いを直接はなし、コア事業に対しては現場で全員に語った。
後藤●倒産。大丈夫なの、こんな人たちが来て。という気分の中で、大丈夫なのという目で見られる。ナカタが東ハトにいた。なんで?? ナカタって、なんでうちに来るの? 中田が来るぐらいうちっていいのかな? マーケティング先行から初めて、収益をよくしていった。オーナー企業で、オーナーに反論すると、灰皿を投げられた、よけたら怒られた、ということが伝説になっている会社。何でやってるの?オーナーに言われたから。、ばかりの状況だった。現場に入って名前を覚えていくことも効果的。
星野●現場はやばいと思っている。40?50代の抵抗勢力はやめてもらうのがいい。現場は混乱しない。仕事の仕方をトップダウンで決める。変革を担える人に自由にできるようにして抵抗勢力のおじさんたちはばさばさ切る。小牧温泉旅館、360人のうち60人が中間管理職。60人をユニットリーダーにした。目標を立てて、目標達成を求めた。できなかった人はやめていった。生け贄かもしれないが、やむを得ない。できる限りフェアに行う。変革を担えるかどうか。結果的に40?50代のおじさんが抵抗勢力として多いのは事実。
川島@BUG●北大出身のエンジニアが多い。みんないい人たちの集まり。でも変革に向けない。いい人たちなので、切りたくないし、でもやるべきなのかな。
冨山●「オレがやめると一緒に100人ぐらいやめるぞ」と脅されたりするので、おどしに屈しないようにする、シグナルに反応しないことも必要。短期的にはパフォーマンスが落ちる。子会社の社長を全員クビにして、40代の社長を引き上げた。この方がはるかに抵抗が大きい。パフォーマンスが一時的に落ちる。
小城●パフォーマンスが悪い人は、自分が一番わかっている。仕組み作りをして、自覚させることで、自分からやめていくか、やるか、どちらかになる。
冨山●だめなおっちゃんを本気で救おうとしないと、本気で切れない。短期勝負の時こそ、長期戦だと宣言しないと、向こうが持久戦に持ち込まれる。経営のパラドクスを理解する必要がある。現場の経営者が必死に守ると、結局投資家の立場で切ることになっても、納得感をもってやめてくれる。これは投資の面では理想の形ではないが、企業再生のには回りくどいことをしないとだめな部分がある。
★リーダーシップ
星野●破綻した旅館に入っていて、20?30代のいい人たちが抜けてしまう。変革を担える人材がぬけるのはいちばん問題。新しい経営者がきても、上をばさっとやらなければいけないのかもしれない。参加型の組織の特徴かもしれない。
後藤●目標達成意識が強いのは自分の特徴。心の強さ、ぶれない、あきらめない、という部分が大事。経営者が宗教や哲学に走る気持ちがわかる。
星野●起こりたくなるときどうやってガマンするか?それどころじゃない、出社してくれるだけでありがたかった。人がいない3年を過ごした。判断基準を少なくして、判断しやすくする。社員に対して愛情を持とうする。顧客と社員はどっちが大事。やな顧客と社員は、社員が大事。質素倹約。経営者の質素倹約は重要。社員と近い生活感で。リーダーシップを発揮しやすくする。
小城●ビジョンをつくるのはいちばん楽だな?。人に動いてもらうときには、左脳だけではだめ。右脳をどう広げるか。自分が嫌いなタイプを好きになる。べたべたの営業マンと仲良くなる努力する。人の心に触る勇気があるか。相手の心に触るためには、自分の心を開く必要がある。35歳まで役人をやっていて、左脳っぽいこてこてのヤナヤツだった。
冨山●利益を出すというのは経営者の冷徹な行動原理。でも実際に動くのは人間(情理)。合理と情理の両方を合一にしなければならない。これが経営の本質。だめな経営者はどちらかに軸足を置く。両方に軸足をおくことはストレスだが、ストレスに負けたら経営は終わる。渋沢栄一は、「片手に論語、片手にそろばん」といった。昔から経営は変わらない。昨日の自分を否定する力がなくなったときは、自分が経営をやめるとき。と同時に経営者はエリートの仕事。エリートの仕事とはその仕事で他人の生活を壊せる仕事。使命感、責任感があるかどうか重要。哲学が必要。子どもの仕事じゃない。経営の仕事は、おとなの仕事。村上ファンドの世界観はお金のアロケーション。冨山さんの世界観は人のアロケーション。おとなの仕事、人々の生活を背負っている、背負う力があるのは、がんばっても30代半ば以降の仕事。パニックになるとぶれる。哲学がないから。命を賭けた鍛錬をした。
※冨山さんの深い経営に対する理解は、感動的でした。
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