(by paco)エコジャパンカップの公式ポットキャスティングで、バイオマスや太陽光エネルギーについて取材しているのですが、改めて、バイオマスエネルギーが普及しない理由が見えてきました。
バイオマスとは生物資源量のことで、通常はエネルギーに使える生物資源を表しています。いちばんわかりやすいのは「薪(まき)」で。樹木を切って燃やすことで暖をとれば、バイオマスエネルギーの利用になります。バイオマスエネルギーは、コミトンでもなんとも触れているとおり、石油や石炭、天然ガスと違って、燃やしても大気中のCO2量を増やさないことから、気候変動(温暖化)対策の重要な手段として、以前から注目されています。
世界では、それぞれの国の自然環境に合わせてバイオマスエネルギーが積極的に使われていて、アメリカでも北欧でもでは日本よりずっと多くの薪ストーブが使われているし、北欧では木質資源を使ったコジェネ(発電と集中給湯を同時に行う)が普及しています。ブラジルではエタノール(アルコール)をガソリンに混ぜることで、自動車の燃料を植物資源でまかなっています(エタノールは、サトウキビなどから発酵させてつくる。焼酎をさらに濃くしたような感じ)。
日本では、エネルギー使用の総量が大きいために、バイオマスを活用しても、エネルギー全体ではわずかに過ぎないなどといいわけする人もいますが、比率がどこまで上げられるかはおいといても、もっとバイオマス利用を進めることは可能です。
にもかかわらず、利用が進まないのは、バイオマスに関わるセクター、特に行政の縦割りが大きな問題です。エネルギーは、ライフラインとして安定供給を保証する変りに、さまざまな規制がかけられています。そしてその規制は利権化しているために、エネルギーの枠組みを少しでも変えようとすると、利権をもつ人々から反対が出て、変更できなっているのです。
たとえば、ガソリンにエタノールを混ぜた場合を考えてみます。ガソリンには揮発油税がかけられ、この税は主に道路造りに充てられています(目的税)。技術的には、エタノールを3%混合するのはほぼ問題なく、ブラジルではアルコール100%でもガソリン100%でも、またいかなる混合率でも問題なく走るクルマがすでに走っています。そこで日本でもアルコール燃料を解禁にしようとしているわけですが、その場合、税金をどうするかという問題が出ます。ガソリン扱いなら揮発油税が国土交通省系の道路の利権になりますが、アルコールは農産物から造られるため、その税収は農水省にも権利があるという主張もあります。農産物からエタノールを「生産する」という部分に注目すれば、経産省の管轄だし、もともとエネルギーは経産省系の仕事でした。バイオマスの利用は温暖化対策だと考えれば、環境省も黙っていません。
つまり、バイオマスエネルギーを社会の仕組みの取り込むことは、これまでのエネルギーや農業感関係の税金や利権の構造を組み替えることを意味していて、関係するところの思惑が絡んで、結論が出せないのです。
ほかにも、電力として利用する場合、電力会社による地域独占といった規制が、新しいエネルギー利用を妨げているということもあります。たとえば地域の10軒で小規模なコジェネ発電を行い、木質資源を使ってCO2フリーを実現しようとしても、つくった電気を近くの10軒には遺伝することは、いわゆる「配電事業」にあたり、地域独占を定めた電気事業法に抵触してしまうのです。こういったことも調整する機能が、今の政府にはありません。
バイオマスによる環境問題への取り組みは、行政の、調整能力の低下が障害になっている場面があちこちにあります。京都議定書の責任期間が始まるのが2008年。政治が利害を調整し、利用を促進する新しいルールを早急に作る必要があります。
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