(by paco)交流居住というプロジェクトについては、前回書きました。交流居住といってもいろいろなカテゴリーがあり、旅行に畑仕事体験がプラスされた程度のものから、本格的なIターン、Jターンまで、さまざまなのですが、特にハードルの高いIターンについて考えてみます。今回は、中でも比較的難易度が低い、地方都市への移住を考えてみましょう。
実際にIターンで、自分の生まれ故郷以外の場所に転居し、生活するためには、さまざまな要素が必要です。いちばん大きいのは、仕事と住まいのふたつです。
仕事面では、地方とはいえ、県庁所在地クラスの都市には、仕事そのものは結構あります。最近は景気もよくなってきているので、特に政令都市クラス、たとえば最近しばしば出かけている札幌では、ほぼ全面的な売り手市場になっていて、求人広告の反応がよくありません。札幌は地域の産業だけでなく、観光に関係するビジネスも多いため、レストランやフード、ホテルや小売りなどのサービス系のビジネスは、特に求人が難しくなってきているのです。
とはいえ、実際に求人媒体に出ている情報は、いわゆるウェイターやウェイトレスなど、フロアでの接客業務や、厨房での仕事、比較的簡単なルートセールスなどが多く、時給のアルバイトや契約社員という雇用形態も、移住を考える人の不安感の元になります。その一方で、求人数そのものを見ると今はかなり買い手市場で、量的には十分以上の量があるというのも事実です。また確かに求人の質という点では、あまりレベルが高い仕事はなく、現場の仕事が多いように見えますが、実際の企業のニーズは、「いい人がいたら、いろいろな仕事をやってもらいたい」と考えているところも多くあります。
実は、正社員という形で募集をすると、やる気はないのに安定志向の人が集まりやすいという傾向もあり、アルバイトで募集した方が、少なくともその仕事をやる人材という点では、いい人が集まりやすいという傾向もあるようです。求人を出している、地域の中堅企業や成長企業は、大企業ではないだけに、採用に慎重にならざるを得ません。まして「安定志向」の人が集まりやすいとなると、どうしても正社員での採用を控えがちです。しかしだからといって、企業の成長を支えてくれるような、社長の右腕や新規事業を任せるような人材のニーズは決して小さくはないのです。Iターン希望者にとっては、こういった仕事のニーズが表に見えていないことと、実際にその仕事についても、地域性や地域の気質などに阻まれて、思うように力が発揮できないことがある、ということでしょうか。
つまり、仕事の面で言えば、少なくとも地方の中核都市(政令都市やそれに準じる街)では、実際にはけっこう状況は悪くなく、問題は情報面にある、ということです。
次に、住まいの面ですが、これは逆に情報がとりにくい面が多いといえそうです。すんだことのない人間にとってはいわゆる土地勘がないので、街のどんなあたりが自分の感覚にフィットするのか、歩いてみないとつかみにくいところがあります。借りられる物件も量が少なく、単身者用が多いなど、移住を考える人にはぴんと来る物件が少ないのが現実です。
また、実際に引っ越すとなると、地域ごとの学校や雰囲気、さらに生活に必要になりそうな、たとえばクルマや駐車場、交通機関の終車情報、ライフラインの利用の仕方など、こまい会けれど必要な情報が、手に入りにくいこともしばしばです。こういった情報は、それぞれ個別の情報源には出ていたりするのですが、縦割りになっていることで、探せないという事情もあります。
これらの情報をうまくポータルサイト的に集約できれば、Iターンのハードルが低くなり、アクションを起こせる人が増える可能性があります。実際、たとえば北海道に関して言えば、首都圏や関西圏の大都市部住民向けに行ったアンケートで、3分の1程度の人が北海道への移住を希望しているという調査が出て、行政の担当者を驚かせました。実際の移住へのハードルをていねいに下げて上げれば、これまでは考えられなかったような多くの人が、地方へ移住し、QOLの高い生活を送ることも現実になるかもしれません。
今後、地域への移住情報を発信するポータル情報サイトというニーズは結構あるのではないでしょうか。地方在住の皆さん、新しいベンチャービジネスとして、こういうものも検討してみませんか?
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