(by paco)255 住んでいる町に対する誇り

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(by paco)3月に続き、札幌で仕事があり、そのついでに、今回は富良野?美瑛に行ってきました。北海道の中央部に南北に走る大雪山系の西側、空知川沿いに広がった盆地とその周辺の町です。

P1100077.JPG富良野はラベンダー、美瑛はパッチワークの丘の町として知られているのですが、今回は特に美瑛にちょっと感動したので、そのレポートです。

美瑛は、前田真三の美しい風景写真がきっかけで有名になり、今では年間40万人の観光客が訪れる人気スポットになりました。かくいう僕も、前田真三やそれっぽい写真でこの地を知り、一度いってみたいなーと思っていたのが、今回の旅行のきっかけです。で、その感想をランダムに。

まず、やっぱり美しい風景。ダイナミックがなだらかな丘の起伏が地平線まで続き、その向こうに十勝岳や大雪山。丘での農業は季節柄、まだ始まったばかりで、緑より土の色が多かったのですが、土が黒や茶ではなく、白っぽいサンドカラーのベージュという感じで、これがまた印象を明るくしているようです。丘の上など要所にはすっくりポプラの木が立っていたり、松の林が連なっていたりと、その配置がまたきれい。スケール感と広がり感が、ほかの土地ではなかなか見ることができない独特なものです。いったことはないのですが、イングランドやスコットランド、ポーランドなんかがこんな感じなのかなと思いつつ、それはそれとして美瑛の丘は心を打つ美しさです。

P1100052.JPGよく地元の人は、「畑やポプラのに名前をつけて、わざわざ観光に来るなんて、本土の人は変っている」というようなことを話していたりするようですが、この景色の美しさ、特異さは、地元の人はかえってわからないのかもしれません。

この土地が美しいのは、単に自然の丘がきれいだからと言うわけではありません。実は、このあたりは自然の起伏を大型機械でなだらかに直し、細かなデコボコを全部つぶして、人間が改変して作った人工的な畑なのです。ということは、そのつぶしかたや、畑の1区画1区画のは位置のしかたが美しかったということであって、もとの地形を作った自然と、そこには区画を描いた畑の設計者、そしてその畑に縦横に織り目方向を描くように美しくトラクタを入れる農家の人たちの、合作なのです。

そのうえで、美瑛の美しさを決めている要素がさらにあります。丘の起伏のところどころに、農家の家や農具を入れる納屋、そして畑を耕すトラクタが見えるのですが、そのひとつひとつが田舎くさくない。そしてたいていはきれいに手入れがされていて、ビビッドな赤に塗られた納屋、緑色の壁のペンション、焦げ茶の農家、ライトグリーンのジョンデア製トラクター。そのひとつひとつが、見ていてかっこわるくないように選ばれていて、経年変化に合わせて色あせても、まめにペンキを塗り重ねていたり、納屋のまわりがゴチャついていることもほとんどありません。家畜小屋の屋根に三角屋根が乗っていたり、農場の端の丘に展望台があったりと、実用上必要なもの以外のものも結構ある。

P1100120.JPGこういった美瑛の人たちは、申し合わせたのかどうかは不明ですが、どこかお互いにこぎれいにしておこう、見て気持ちよくしておこうと考えているとしか思えません。

一方で、六兼屋のあたりをはじめ、本州の田舎は、家の手入れはされていないし、納屋のまわりは使い捨てられた農具が散乱していたり、トラクターのデザインはダサかったりと、美的センスに欠けるだけでなく、使い方や手入れも雑な印象です。こういうところに、もともとの自然の風景としての美しさを人間が壊していることが多いという感じで、比べてみると美瑛の営みのよさが実感できます。

美瑛のもうひとつの美点は、街の中心部、駅の近くの商店街が美しいことで、電線は地下に埋められ、街並みがそろっていて、その向こうに十勝岳が浮かび、という、小さくてきれいな映画に出てきそうな街並みです。隣の富良野や旭川にはこういう要素がなかったので、やはり美瑛は意識的にやっているのでしょう。

町の人たちも自分たちの街がきれいしておこうと意図的にやっているだろうし、それを知っているだろうし、それを見に来る人に感動を与え、そして毎年40万人の人が訪れる。こういうところから、自分たちの町のよさが実感でき、うちの街はいいところだよねという誇りが生まれる。これが自然なカタチでの郷土愛だと思います。

今、政府は、教育基本法の改正案を国会に提出していて、「国を愛する心を育てる」という文言を入れるといっていますが、「国を愛する」ってなんだよ、ということの議論はまったくなく、「個より集団」「個より国家」というような概念の押しつけが教育現場で行われかねません。国を愛するとかいう前に、自分の町を自慢できますか? 自分の町のよさを知っていますか?ということから始めるべきなのに、と感じた、美瑛の町でした。

ちなみに、美瑛訪問は、ほんの1日なので、「悪いところって?」と言うところまでは見ることができませんでした。あくまで、一旅行者の通りすがりの視点だということをお忘れなく。町の実態について情報があれば、コメントしてくださいませ。

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