(by paco)254 過去の負の遺産を、これから残さないために

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(by paco)統帥権の話をしてきたのですが、なぜそういうことに興味があるのかな?と自分でも不思議だったりもしていました。それが、立花隆の 「滅びゆく国家」を読んでいて、自分でも整理がつきました。

立花隆は、田中角栄の金脈を暴いた著書で世に出て以来、政治からサイエンス、テクノロジまでさまざまな領域で、実践的な取材と考察を行っていて、「知の巨人」という評価も受けています。最近は政治より脳科学など、サイエンス分野での執筆が多いように思っていたのですが、この本ではここ1年のリアルタイムの政治ウォッチを載せているので、立花隆が政治をどう見ているのかを追うことができ、近過去を定点観測するような、おもしろいつくりになっています。そのため、昨年の選挙で小泉自民党が負けると予想していたりして、立花隆も外すんだなと、ある意味、人間性が感じられていいのですが、そういう「余裕」をもって読める人でないと、「立花隆ってたいしたこととないな」と思う人もいるでしょう。amazonの読者評もそんな感じで分かれています。

この本の第6章で、今の憲法9条改正論議について、こんな視点で論じています。

日本は9条によって過去60年間戦争をしてこなかった。そのことで「日本の若者が戦争で死なずにすんだ」ことはみんな知っているが、「日本人が他国の人間を、国家として殺さなかった」ということの意味を理解している人は少ない、といいます。

1945年の敗戦以前、日本は、日清戦争(1894)以来50年間戦争をやり続け、その戦争で他国人を多数殺しました。そのことの「負の遺産」に、今の日本人が苦しんでいます。靖国問題をはじめとする隣国とのぎくしゃくした関係は、みな1945年以前の戦争が原因になっています。戦争をして他国人を殺したという事実は、戦争をやめて60年たっても消えることなく負の遺産になって、その戦争に関与しなかった人たちをめんどうに巻き込んでいく。戦争を肯定する人の中には、戦争によって得たものもあるではないかと主張する人もいますが、であれば、戦後の日本は戦争をしなくても多くのものを獲得し、繁栄してきました。繁栄できた上に、負の遺産を未来の世代に残すことがないなら、戦争をして繁栄するより、ずっといいと考えるべきだ。これが立花の主張であり、僕も共感します。

韓国は、朝鮮戦争で米国に助けてもらったために、ベトナム戦争では大軍を送ることを余儀なくされ、ベトナム人をたくさん殺しました。その結果、今でも韓国人はベトナムで嫌われていて、当然、それはビジネス面でもマイナスになります。ちなみに小泉首相は、「靖国参拝が日中ビジネスにも悪影響を与えている」という経団連の主張に対して、「ビジネスと靖国参拝は別」と強弁していますが、それは根拠のない主張です。敵対的な雰囲気の国民気質があれば、ビジネスができないとまではいえないものの、厳しくなるのは間違いないことです。

グローバル経済の中で、日本が世界中どこにいってもビジネスができることのひとつに、日本が憲法9条によって戦争をしてこなかったことが、大きな意味を持っていると言うことにも目を向けるべきでしょう。そして戦争をするということが、数十年、100年という長期にわたって、負の遺産を残すという側面に目を向けるべきです。孫の世代がイラク人から嫌われることがないようにしたい、と僕は考えますが、あなたはどうですか?

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コメント(1)

賛成。私の住む町にも9条の会が出来て 参加しています。
高齢化していますが、それなりにがんばってます。

統帥権の本 図書館で借りて読みました。少し難しかったが、おもしろかった。

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