(by paco)最近、若い人とライフデザインの話をする機会が増えています。それも20代も前半だったり、18歳、19歳という年齢です。要するに、大学生です。亜細亜大学で授業を持っていること、NPO法人環境リレーションズ研究所での活動に大学生もよく来てくれること、そして企業向けに行っているロジカルシンキング研修で新入社員を担当する機会に恵まれたことが、出会いを増やしてくれました。
そんな中で感じるのは、こころざしの格差。自分がやりたいこと、やるべきだと思っていることについて強い意思を持っている人と、そうでない人の差が広がっているということです。特に学生の意欲の高さと、よくものを考えていることには驚かされることが多い。
先日会った就職活動中の学生、Aさんは、環境工学系の学部に所属して、就職先としても環境関係を狙っています。すこし前までは環境系を学ぶ学生に対する印象や評判は、「環境への意欲はあるけれど、ビジネスへの意欲は足りない」というものでした。面接のときも「環境をよくすることに貢献したい」という点ではいろいろ話ができるものの、「うちのビジネスとしては何をやりたいの?」という部分では「それは会社が本業で稼いでもらって……」というように、会社が本業で上げる利益を環境に投資するとか、環境に取り組むことで企業イメージが向上するといったロジックがせいぜいでした。「環境に取り組む企業はブランド価値が上がる」というぐらいのことがいえればかなり気が効いた方で、それでも「ブランド価値って何?」という部分に説明がつくわけではありませんでした。それに対して、Aさんは「環境をよくするにはそれによって企業が利益を上げなければならない」という考えを明確に持ち、「どんな事業なら環境で利益をあげることができるのか」という視点で、企業を探しているのでした。
会った当初は「ではそれってどんな会社?」という部分は漠然としていて、環境で利益を上げるということは理解できていても、実際のビジネスではそれはどんなしくみをさしているのかという点までは見えていなかったのですが、僕が、短い時間でしたが、具体的な事例を話したことも影響しているのでしょうか、1か月後、2か月後に会ったときには、格段に知識が豊富になり、環境とビジネスの接点を見つける目が鋭くなっていました。その勘どころのよさ、意欲や思考の柔軟性には、ぼくの方がびっくりです。
別の学生、Bさんは大学に入ったばかりの、たぶんまだ10代。短時間にちょっと話ができただけなのですが、「実はアジアのアートを日本に紹介するビジネスをやりたいんです」と明確に話すのです。「今の大学に入ってみて気がついたんですが、1?2年生の勉強は興味があるし、将来に役立ちそうなんですが、3?4年になると、資格取得が多くなって、それは自分の道と違うと思うんです。それで、1年の間になるべくたくさん単位を取ってしまって、ここはやめるか、別の学部に転籍しようかと思って、親にも『後期の学費はまだ振り込まないで』と言っているんです」と話してくれました。「でもやめて、ここに移るという場所が見えないなら、ここで勉強しながら探すというのもあるんじゃないの?」と話したらこういうのです。先輩に相談したら、「まわりに相談すると、なんとか引き留めようとされて、やめられないよ」って言われた、と。確かに、僕自身もまさにそういうアドバイスをしていたので、さすがにびびりました。すごい学生です。
有名大学を出て環境NPOに就職したばかりのCさんは、「ここでなんとか新しい環境ビジネスをつくりたいから、相談に乗ってほしい」というし、Dさんはいったんメーカーに就職したものの、会社を辞めて、学生NPOと組んでビジネスをやると、会社員時代に培った力を活かして営業に歩いています。もう一人、最近依頼があって「出演」したインターネット音声配信サービスを始めたオトバンクの経営者は、まだ大学4年生でした。
http://sinkan.jp/
ここに登場の5人は、女性2名男性3名で、そのこころざしの高さに男女の差はありません。というより、話した印象では女性の力強さに圧倒されることの方が多い。先日話していた、某上場企業の人材開発部長も、「今は女性の能力の高さがすごい」と改めて言っていました。
彼らに共通するのは、会社や社会が与えた仕事に一生懸命になるという従来あったようながんばりではなく、自分の力で自分だけの道を切り開こうという意思を、それほど気負うことなく、持っていると言うことです。会社に入ろうとしている人も、その会社ではどんな仕事を「やらせてくれる」かなという考えではなく、その会社なら「自分はどんな仕事を提案し、実践することができるか」という視点で考える力があります。そういう視点で考えていいんだよ、ということを僕がアドバイスしたことが影響していることもあるでしょうが、こういうアドバイスがあっても、できない人はできないものなのです。
こういうこころざしを持つ人に対して、一方にはかつてのように会社に就職(就社?)し、
会社がくれる仕事を、楽しく気さくな先輩社員と一緒にやろうという、わりとのんびりしたタイプも数多く存在します。さらにもうちょっと上の先輩たち、30歳前後と話していると、疲れていたり焦っていたり、不安があったりと、元気がありません、というより、屈託があるという感じでしょうか。しっかり未来に向かっている印象が少なく、迷いがある感じです。
もちろん、これは僕があったごく限られた人の話ですから、すべてではありません。ただ、「格差」が広がっているのは、以前より強く感じます。
今、政治も含めて「格差社会」が話題になっています。これは主に経済格差をさしているわけですが、実際には経済格差以上に、「こころざしや意欲の格差」が広がっているというのが僕が最近感じていることです。
上で紹介した5人は、話しているだけで応援したくなったり、すでに応援団がたくさんいる人もいます。そういう活きのいい若い世代とであることは僕の楽しみでもありますが、ではどうやったらもっとそういう人が増えるのか、読者のあなたのこころざしを高めることができるのか、という点については、まだいろいろ考え中と言うところです。
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