(by paco) 247 「何をしたらいいかわからない」

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(by paco)先日、久しぶりにToshiさんと話していて、「何かやりたいと思っているのに、やりたいことが見つからない人が多いね」という話題になりました。グロービスで学んでいる人の中にもわりとよく見られるタイプなのですが、仕事はけっこうできる、頭もいい、意欲もある、だから何かやりたいのだけれど、何をやったらいいかわからないというわけです。もちろん、何も見つからないわけではなく、「これかな?」と思っていることが、僕らから見ると「それは本当にやりたいことなの?」と思えるようなことである場合が多い、ということです。

「自分がやりたいこと」というよりは、「会社が狙っている次の目標」だったり、「コンサルタントに憧れる」からやってみたいと思っていたり。あるいは「ネットビジネスが注目されているから、自分もやってみたいと思った」ということが動機だったり。みな、一応、目標だと思っているのですが、一方で「これって本当にやりたいことなのかな?」という疑問を、自分でも感じている場合が多いようです。

ではどうしたらいいの?ということですが、ひとつのアプローチは、「本当にやりたかったことを、子ども時代にまでさかのぼって探してみる」という方法です。僕自身は、人はみな、持って生まれた「やるべき仕事」があると思っていて、これが「天職」なんだろうと思うわけですが、その一方で、それって本当なのかなという疑いも持っています。天職というものを考えてしまうと、それに出会うまで、人は仕事の放浪を続けなければなりません。でもそういう仕事に出会えるという必然性がうまく説明できず、「そういうものだろう」と「信じている」に過ぎません。そして、こういう「信仰」は、ときに人を不幸にしてしまう。うまくやりたいことが見つからない人にとっては、見つからないことがあせりになり、見つからないというだけで不幸だと感じてしまうのです。

このあたりを、社会学者の宮台真司は、「だいたい、仕事で自己実現などというのは、かなり変わった考えなんですよ」と語っています」。人間にとって、仕事は、「生活のためにやらなければならないこと」、あるいは「たまたま親の仕事を引き継ぎ、まあ悪くないから、生きていくためにやっている」ことであって、天職を求めて放浪するというのは、多くの人々にとっては幻想に過ぎない、というわけです。

だから、天職を求めたりすることはやめて、ある仕事に満足し、それに代わる自分らしい何かを探すべき、と宮台はいいます。たとえば、それがアイドルを追いかけることであってもいいし、それはそれで人間らしい幸せな生き方だというわけです。なんだか身もフタもない言い方ですが、彼のいわんとしていることのリアリティは、確かに感じます。

※この発言を含む、彼の出演番組については、近いうちにテープ起こしをしてアップしようと思っています。

「やりたいことが見つからない」人に、「君は仕事でやりたいことを見つけなくてもいいんだよ」というメッセージが、どう響くのかはわかりませんが、見つからない人の中には、宮台のメッセージが心に響く人もいるのではないかと思います。そうか、別に仕事で自己実現できなくてもいいんだ、仕事で自己実現できない自分は、人生の敗者というわけではないんだ、というように。

今何かが見つからないからといって、なんとかみつけなければならないと考える必要はないと僕も思います。それは宮台が言うように、「多くの人にはそんなものはいらない」という場合と、「今見つからないからといって、今無理に探す必要はない」ということでもあります。ある程度やってみて見つからなければ、今は時期ではないとあきらめて、目の前の、そう悪くない仕事をしっかりやりつつ、趣味や家族やコミュニティのことをやりながら、楽しんで、幸せを感じてみる。いったん「仕事で自己実現」というアプローチは忘れてしまうわけです。

もしかしたら、その人はそのまま、毎日の幸せを噛みしめつつ年を重ね、死ぬまでそういう生活かもしれません。もしかしたら、もっと後になって「こういうことをやりたかったんだ」と気がつくかもしれません。それは僕にわからないことなのですが、「これをやりたかったんだ」というものが見えてきてから行動しても、遅くないと僕は思います。人生80年の時代になっているし、子どもが独立するぐらいの自由度が上がってからの方がリスクがとれるということもあるでしょう。年齢が上がってからの方がいい面もたくさんあります。そして、いくつになっても生きている限り可能性は常にあるのです。

実は、先日、あらたにLife Design Dialogueを申し込んでくれた人がいて、その人は以前からLife Designの話をしてきた人で、今度は「まったく違うことをやりたい」といっていました。時間的な自由度が必要だったので、「だったら契約社員になれば?」とアドバイスして、その通り実行し、趣味として楽しんできました。そのぶんやではブログも書き、楽しそうにしていたので、こういうのもいいよねと思っていたのですが、改めて「別のことをやりたい、今度は会社を辞めて、すむ場所も移住して」という話だったので、dialogueを行いました。まだどうなるかはわかりませんが、もし以前のテーマで「これを仕事にする!」と思いこんでいたら、きっとあまりよい結果にならなかったと思います。そして本人もそれがわかっていたから、契約社員になるということ以上には踏み出さなかったのでしょう。

今やりたいことが見つからないと思っている人は、それはそのままでいいんじゃないのかな、と僕はアドバイスします。無理してまで探し出すことじゃない。でも、もし見つかりそうになったら、へんに自己規制しないで、ちゃんと目を向ける準備だけはしておく。そういう態度も重要です。

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