(by paco)「日本の中のユダヤ文化」
というのを読んでいます。まあ、タイトルからいってもけっこう「トンデモ本」の類でしょう。荒唐無稽のアイディアです。僕も、まあこういう考えもあるんだろうな、どんな論証の仕方をしているのかなというレベルで読んでいました。古代日本とユダヤがつながっているというアイディア自体はだいぶ以前から知っていて、でもそのアイディアの源泉については知識がなかったのです。
で、まだ途中なのですが、読んでみて、これはけっこう信頼性があるかも、というより、もっと調査の対象にすべきかも、という印象です。ここに書かれていること自体が正しいといえるほどの情報ではないのですが、エンターテイメントとしての扱いですますというわけにはいかない、ある種の説得力があります。
もちろん、もしこの本にあるような、「古代日本人と、天皇家や神道などのルーツのひとつがユダヤ人だった」という仮説には、穴もたくさんあり、疑問もあります。その点も含めて、きちんとした研究の対象にしてもよいのではないかと思います。
で、なぜこの本が説得力があるのか、僕の知識の範囲内での考えですが、これまで日本という国と日本文化のルーツについては、納得のできる答えが出されていないということが背景にあります。古墳文化の後期から大和朝廷あたりになるとだいぶ明確になってくるわけですが、そこまでの歴史、4世紀までの歴史が、昔から謎とされている通り、諸説いずれも説得力がありません。
ちなみに、日本の天皇家の創始、初代天皇は神武で、紀元前660年に即位とされています。しかし14代の仲哀天皇(3世紀初頭)までは史実性を疑われていて(たった14代で700年以上たっていて、その後の代と年数と合わない。江戸幕府は270年で15代)、応神天皇、仁徳天皇の4世紀からが実在性が高いといわれています。そこで、仁徳天皇陵(仁徳以外の天皇の陵墓だという説もあり)の発掘が行われれば、天皇家のルーツがユダヤかどうかという点にも答えが出るだろうという意見は説得力があります。宮内庁がなぜ仁徳天皇陵の発掘を認めないのか。戦前は天皇家のルーツについての研究そのものが迫害されたなどの事実を考えると、少なくとも現状の歴史には説得力がありません。
その一方で天皇家や神道のユダヤルーツ説にはそれなりの説得力があり、天皇家の儀式や神道の儀式との共通性(ダビデの星や房下がりなど、ユダヤの象徴が多数使われている)や、日本でもっとも古い神社のひとつといわれる諏訪大社の「御頭祭」(おんかしらまつり)は、ユダヤ最大の祭の「過越の祭」(すぎこしのまつり)と非常に共通点が多い(というより、ほぼ同じ)というのもけっこう驚愕の事実。天皇家の象徴である「八咫鏡(やたのかがみ)」の裏には、古代へブル文字を思わせる解読されていない文字が書かれているとか、天皇家の開祖の神話である「ニニギとコノハナサクヤヒメ」の結婚と、そのひ孫の神武天皇までの系図と神話が、旧約聖書のヤコブから古代イスラエルの初代王シュアまでの系図とまったく同じであるといったことも、単なるこじつけとはいえない一致を見せています。
ユダヤ発祥の地であるパレスチナから日本までのルートにも、同じ東方ユダヤ人の末裔が点々と生き残っていて、パシュトゥン人(パキスタン?アフガニスタン)、キルギス人(中央アジア)には、ユダヤとしての自覚と、特にキルギスには、「ともにキルギスに来たユダヤの一族が、その後日本に向かった」という伝承も残っているのだとか。
一方で、僕らは正倉院にシルクロードの文物がたくさん所蔵されていることを知っており、シルクロードからたくさんの人や物が日本に渡っていたことは、理解できます。その中にユダヤ人の中核部族が含まれていたとしても、なんの不思議もないでしょう。もちろん、その人たちが、日本の政治や宗教の中心になったとまで言い切るには、まだ研究が必要でしょう。
ということで、女性/女系天皇の議論がしぼみつつあるとはいえ、天皇家に注目が集まっている今、もともとユダヤの研究を始めた僕が、なぜかこの国のルーツにまでたどり着いてしまったのには、ちょっと驚いています。
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