(by paco) ここ数回、Life Design Dialogueのことを書いていたら、dialogueの申し込みが数件ありました。実際にdialogueはどのように行うのかということをお話ししましょう。
まず最初にやらなければならないのは、クライアント(相談者)の状況の把握です。状況の把握の中にもさらにいくつかの領域があるのですが、その中でも一番最初にやるのは、クライアントが今いる、ライフデザインのフェーズです。入口、はじめたばかりなのか。すでに目標やゴールを決めていて、そこに至る道をだいぶ先に進んでいて、具体的に踏み出すの日も近いのか。その際、僕が特に注意深く見るのは、クライアント自身が「半年後には起業したい」といっていても、それが実際に起業に踏み出すだけの準備ができている状態なのか、本人の希望に過ぎず、まだ準備が必要なのか、という点です。
ライフデザイン関係の本などの情報では、「具体的な目標を持ちなさい」と書かれていることがよくあります。素直な人は、それをそのまま実行に移して、目標と実現の日付だけを決めてしまう、ということが起こります。確かに目標を決めることは、自分の気持ちと行動を目標に向けるという大きな意味があるので、有効に働くこともあるのですが、一方で行動に移すまでに必要な行動を十分にとらないうちに、日程が来たからと行動に移してしまうことも起こります。「1年後に起業したい」と言っているからといって、あと1年で十分準備ができるかというと、あやしいと思えることも多いのです。
1年という時間が、準備期間として不足なの?と思うこともあるでしょう。実際、今のスピード感のある経営では、小さな事業なら事業プランから数か月で起業ということもごく当たり前です。ものごとは時間をかければいいというものではないし、だとしたら半年後、1年後に起業と決めて行動することは、ふつうのことのようにも思えます。
しかし、ここで重要なことは、純粋にビジネスとしての起業と、ライフデザインとしての起業は、意味がかなり違うということです。ビジネスとしての起業なら、事業が成功し、顧客から評価を得て利益が出ることが目的なので、そこにフォーカスすればいいのですが、ライフデザインとしての起業の場合、そこに「自分と、自分の家族の満足」という要素が入ってきます。この部分を満足させることは、顧客や利益の面で満足のいく結果を出すことは、実は、顧客と利益を満足させるより、難しいことなのです。
実際、多くの起業家を見てきた経験からいくと、事業を成功させたにもかかわらず、その後になって「これがこの人のやりたかったことなのか?」と思わされることが、けっこう多いのです。最近の例はなんと言ってもホリエモンでしょう。ホリエモンを知る人の多くが言うのは、「彼はそんなに悪くはない、やろうとしていたことはよかった」という評価です。僕もまったく同意見なのですが(僕はホリエモンとは面識がありませんが)、ホリエモン自身も、自分が犯罪者になることはまったく望んでいなかったでしょう。彼のビジネス人生の、比較的最近のどこかで、目標にしていたビジネスが、彼自身の人生の満足を押しつぶしてしまったのです。ビジネスの目標やお金の目標にだけ目を向けすぎて、彼自身の人としての満足が後回しにしてしまった。その結果として、法に触れることはしないというような、個人(人間)としての満足が後回しになってしまったのでしょう。
僕がコンサルタントとして仕事をするなら、事業が成功するためのアドバイスだけをするのですが、ライフデザインのdialogueでは、仕事が成功するかどうかより、まずクライアントの人生の満足を優先して考えます。そうなると、半年後、1年後の起業というゴールが、かえってライフデザインの面から見ると、意味がない期間だったりするのです。
ということで、ライフデザインの観点から見て、ゴールに向けてどのぐらいのフェーズにいるのかを見極めながら、クライアントの今の状況を理解するのが、最初の仕事になります。
その際、僕から「1年後の起業はまだ決めてしまうのは早いんじゃないのかな?」とアドバイスしても、「そんなことはないでしょう、もういろいろ準備してきたし」と反論されてしまうこともあります。もちろん、気持ちはよくわかるので、そういう場合は、あえて「1年では無理だよ」というようには話しません。あくまで、クライアントの意思を尊重して、「じゃあ、1年後に起業を目標にして、それに合わせてやるべきことをやっていきましょう」と話し、なるべくその方向で前進できるようにスケジュールや、やるべきことのリストをつくるようにします。基本はあくまで、クライアント自身にあり、僕はそれをサポートするだけなのです。
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