(by paco)ハマスは「イスラム過激派?

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新聞の記事は、こんな感じに書かれます。

「今回の自治評議会(国会に相当)の議員選挙でイスラム過激派ハマスが過半数を取った」

ハマスはパレスチナの政治的グループで、これまでは非主流派の存在でした。それが、今回の選挙で一気に第一党、しかも過半数をとったのです。メディアは、いっせいに「イスラム過激派が過半数をとった」と報道しました。しかし、ハマスは「過激は」なんでしょうか。

パレスチナは、もともとは中東の地中海?死海とヨルダン川にかけての土地を指す地名でした。日本の北陸地方、みたいなものです。そこにはイスラム教徒(アラブ人)、ユダヤ人(ユダヤ教徒)、キリスト教徒が、大きなトラブルもなく住んでいたのです。20世紀初め頃までの話です。

その後、民族独立の気運の中で、第二次大戦後、ユダヤ人がイスラエルを建国し、そこに住んでいたイスラム教徒と対立を始めました。イスラエル建国によってすむ土地を追われ、イスラエルの周辺地域である「ヨルダン川西岸地区」と「ガザ地区」に追いやられ、イスラエルによって囲まれてしまった人々を主に「パレスチナ人」と呼びます。もともとは「日本人」というような民族ではなく、パレスチナの土地に住んでいたアラブ人でイスラム教徒という人々です。

その後、またいろいろあって、イスラエルと欧米諸国はパレスチナ人に自治権を与えました。こうして生まれたのがパレスチナ自治政府で、そのトップに就任したのが、主流派「ファタハ」を率いるアラファト議長でした。そのアラファトも昨年死亡し(状況から、毒殺の可能性もある)、跡を継いだのが欧米からの信任に支えられたアッバスでした。しかしファタハはアラファト時代から腐敗が指摘され、欧米からの援助を市民に還元せずに埠頭に着服していた疑惑がいまもあります。

このような「欧米にしっぽを振る」主流派に対して不満を持つ人々を吸収して大きくなったのが、ハマスです。ハマスは抵抗運動「インティファーダ」を実行し、自爆テロの募集と実行をしているという武装グループではありますが、イスラエルが常に米国製の戦車と攻撃ヘリで気に入らないハマスのリーダーを殺害するという状況では、武力戦術をとったからといって、特別なこととはいえません。一方、武装闘争やイスラエル軍によって死亡した人の家族(女性と子ども)には、ハマスが積極的に支援を行い、母子寮のような施設を用意したり、学校をつくるなど、市民生活を支えてきた側面もあります。確かに、ハマスの学校では、子どもたちをインティファーダを行う戦士として育てているという面もあるわけですが、本来はこういった福利厚生や学校教育は、ファタハを中心とする自治政府がやるべきことであって、それが十分に行われないことで(腐敗によってお金が回らない?)、市民のあいだにハマスへの支持が広がってきたのです。

ファタハは確かに武装闘争戦術をとっていますが、それ自体は、「テロリズム」というより、「武力占領を続けるイスラエルへの抵抗運動(レジスタンス)」というべきものだし、幾多の国会決議を無視して武力弾圧を続けるイスラエルを容認する国際社会(日本も、無法者のイスラエルの行動を実質的に容認している)に対する、レジスタンスでもあります。

昭和初期の日本は中国に進出し、中国はしぶとく「抵抗」しました。大日本帝国から見れば中国の行動は「テロ」だったわけですが、結果的には中国は「抵抗運動の結果日本の侵略をはねのけた」という歴史になっています。イスラエルとパレスチナの関係がこれからどうなるかわかりませんが、ハマスを「過激派」と呼ぶのは、日本占領下の中国の抵抗運動をテロと決めつけるマインドと同じなのです。

その意味で、いまイラクで続いている、米軍への武力行動も、「米軍へのテロ」ではなく、「レジスタンス」であって、それを「テロ」と決めつけること自体が、事実をねじ曲げているという点に、注目していく必要があります。

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