(by paco)環境問題のこともいろいろやっているのですが、もうひとつ、農漁村の活性化支援というようなこともやっています。
総務省に過疎対策室という部署があるのですが、ここからの依頼で、過疎地の活性化の戦略立案を補佐する研究会のメンバーとして、ここ2年ほど、参加しているのですね。
過疎地活性化のキーワードとして、今ここで狙っているのが「交流居住」というもので、ちょっと固い言葉ですね。英語では「マルチハビテーション」(複数拠点の生活)などと呼んだりもしているのですが、実はすでに交流居住という言葉自体は5年ぐらいの歴史があり、総務省、農水省、林野庁など、いくつかの国の機関と地方自治体が集まって、交流居住の認知と推進をテーマに、イベントや情報発信を行ってきている経緯があります。他に、特にぴったりと来る言葉があるわけではないし、多少固くても、この言葉を認知してもらおうというのが、今の方針になっています。
で、交流居住って何?ということですが、田舎と都市を往復する生活、それもいわゆる観光地を回る旅行ではなく、田舎を田舎のママに楽しみ、農業体験や自然体験を楽しんだり、行事参加したり、あるいはやや長く滞在し、のうちを借りて自分で作物を育てたり、漁業の街で釣りを楽しんだり、というようなかかわり方をさします。「田舎にどっぷりクラス」と「旅行」の中間にある、「自分の田舎を持つ」というようなイメージです。
もうちょっと具体的には大きく5つのバリエーションがあり、
(1)ちょっと田舎暮らし=農業体験ツアーに参加する、など
(2)ときどき田舎暮らし=年に数回程度、自然やその街の人と親しむ
(3)けっこう田舎暮らし=別荘を持ったり、家を借りて、都会と田舎の両方を楽しむ
(4)たっぷり田舎暮らし=ほぼ定住する
(5)田舎で学ぶ=農漁業や自然観察、自然保護の研修を受ける
というようなフレームで考えています。(5)はちょっと異質として、(1)?(4)がかかわりの深さによって分けられていて、僕は(4)に当てはまるということもあって、研究会に参加しています。
これまでの過疎対策は、過疎地でのハコモノをつくるための補助金を出すなどの予算措置が中心でした。具体的には、田舎に道路を造る、田舎に地域の特産品と売るための直売所をつくるといった企画を自治体が持ち込み、それに「過疎債の起債」を総務省が保証することで、ハコをつくるためのお金が供給されるようにしてきたのです。しかし、こういったハコモノをいくらつくっても、狙った効果が得られないことはほぼわかっていて、これからの時代にあった政策は何か、という模索の中から交流居住が出てきました。
従来の地域活性化は、定住人口を増やすことに重点が置かれていましたが、定住させるためには雇用(仕事)が必要で、これを意図的に増やすことが難しい(雇用が増えないから若い人が都市に出て行ってしまう)。これに対して交流居住では、都会に生活基盤がある人が対象になるので、過疎地に雇用を無理に生み出す必要がないのです。
実際には、交流居住が進めば、農業や宿泊などの仕事が活性化し、雇用も増やすことができるし、定住ではないにせよ、そこに留まる人の数を増やすことができます。都会に我が村の応援団をつくり、定期的に来てもらうようなイメージです。
こういった活動の主役は、地方自治体であり、また自治体とともに活動するNPOです。総務省としては、これらを支援するために、積極的な自治体の情報発信を支援する情報ポータルサイトを運営したり、活動や情報発信のための研修会を開く、積極的な自治体同士の交流や連携を深めるといった施策を予定しています。
こういった国の政策に関わっていると、行政も変りつつあるなということ。以前のように国が地方を指図する姿勢はここには見られないし、国の施策だからといってすべての過疎自治体に参加を義務付けるといった一律主義もなく、積極的なところからやってもらうというスタンス。もちろんハコモノづくりでもなく、情報と、そして人造りにお金をかけるという意味で、21世紀型の新しい行政の方向を模索しようとしていることがわかります。もちろん、うまく行かない部分もあるのですが、やろうとしていることの方向は納得できるので、こうして協力している次第です。
来年は、研究会の議論をベースに情報ポータルサイトがリニュアル登場する予定なので、適宜この件も報告してきたいと思います。田舎での生活に興味のある方は、次第に支援が整うと思います。
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