(by paco)姉から電話があって、「そろそろクルマを買い換えたいんだけど、何がいいと思う?」とのこと。人の金でクルマを買う話は大好きなので、さっそく、あれこれ調べてみました。
姉夫婦のクルマはこれまでも僕が推薦したものから選んできたのですが、基本的に扱いやすい小さめのセダン、長距離にも疲れないしっかりしたハンドリング、ありきたりではない選択、というあたりがいつものリクエストです。家族は夫婦と子ども一人、それに僕と姉に共通する母親で、ふだんは2?3人、ときどき4人、都内の移動も多いけど、よく旅行に行くので高速の移動もしょっちゅう、というけっこうアクティブな人たちです。
今は、僕が以前乗っていたのと同じルノーメガーヌ。すでに7年目で10万キロ超え、そろそろメンテにもお金がかかるようになってきたので、次が必要、というタイミング。その前はいすゞジェミニイルムシャーといえば、あら?なかなかツワモノ、とおわかりの方はかなりのクルマフリークです。
ジェミニはいすゞが乗用車を米国のGMと共同でつくっていたころのクルマで(今はいすゞは乗用車から撤退)、GMのヨーロッパ子会社、オペルのカデットをほぼそのまま日本に持ってきて、いすゞが独自のエンジンを載せ、日本に合わせて生産していました。そのジェミニを、ドイツのスペシャルチューナー、イルムシャーに依頼して、足回りを鍛えたのが、ジェミニ・イルムシャーで、専用スプリング、ダンパーと、サイズアップしたタイヤを組み込み、れかろのシートをおごったなかなかの仕様でした。エンジンは特に速くなかったけれど、シュアなサスペンションは、当時は高い評価を受けていたのですね。姉は当時、僕が実家に残してきたTE71こと、スプリンターGTのセダンに乗っていて、これは半分ラリー仕様にした(外観はノーマル)クルマで、マニュアルギアボックスをごりごりやりながら、トヨタ自慢の1.6リッターDOHCを回すという、こうして考えてみるとけっこうツワモノだったのです。それで、ふわふわしたクルマはいや、というので、ジェミニイルムシャー。もうこのへんで、彼女もしっかり欧州車の足回りになれてしまったのですね。
そのジェミニも10万キロを超えて買い換える、というときに勧めたのが、当時僕が乗っていたルノーメガーヌで、勧めたときはまさか、本当に同じクルマを買うと思っていなかったのですが、「決めちゃった」という電話をもらったときには、正直うろたえました(;_;)。
そのメガーヌを今回買い換え、ということで、同じぐらいのクラスで、長距離にも安心勘のあるクルマ、というご指名。
欧州車というのは不思議なもので、わからない人にはまったく理解されないのですが、ヨーロッパでしつけられた足回りというのは、いったん味わってしまうと、なんとも安心感のあるものなのです。国産車に乗り換えると、なんだかふわふわとクルマに乗せられているような感じがして落ち着かない。タイヤやステアリングからの情報量が少なく、こちらの操作に対する飯能が読みにくい。些細なことなんですが、この違いを重視すると、欧州車というのは、はずせない選択になってくるのです。
特にクルマフリークというわけではない姉が、いつの間にクルマの足回りがわかる人になったのか僕自身不思議なのですが、国産車を勧めて試乗に行ってくると、やっぱりなんだか不安?というから、わかっているのでしょう。
さて、そんな中で今回僕は何を勧めようかなーと持っているところなんですが、都内の取り回し上、あまり大きくないクルマとなると、欧州のCセグメント、僕もいつもこので選ぶクラスです。ドイツからはVWゴルフ、フォード・フォーカス、オペル・アストラ。フランスからはプジョー307、ルノー・メガーヌ、シトロエンC4。イタリアからはFIATなんですが、これが日本にはほとんどはいっていない。同じくFIAT傘下のアルファロメオ147(僕が乗っている)。日本で言えば、トヨタ・カローラ、日産ティーダ、ホンダ・シビックなど、伝統的なブランドが並びます。今主流のミニバン系はやはりハンドリング上、お気に召さないようなので、パス。
そんな中で、まずこのクラスといえばゴルフなんだけど、ゴルフはサイズのわりに荷室が狭く、トータルの安心感はあるものの、ブランドに甘えているところがなきにしもあらず。フォード・フォーカスは評価は高いけれど、欧州フォードとはいえ、やっぱりフォードブランドはなんだかいまいち。オペルは、まあねえ、と、なんだかわけもなくパス。いや、友だちが前にも乗っていて、Value For Moneyじゃないのがわかっているので、という感じかな。
アルファは価格も高くなるし、ブランドにシンパシーがない人は、買う必要なし。となると、フランス勢3車種が残り、モデルチェンジ後のメガーヌというのも芸がない、と考えて、プジョー307とシトロエンC4が残り、という絞り込みがされてきました。
で、その307とC4に試乗してきました。どちらもフランス車とは思えないほどの品質感で、フランス車らしさより欧州車というべき味わいです。これはドイツ車も同じで、昔のゴルフやオペルにあったような、岩盤のような剛性のボディにがっしりした足回り、というつくりはなくなり、軽やかでしなやかな味付けになっています。フランス車も、かつてはバネが柔らかいというより、ボディがグニャグニャして衝撃を吸収しているんでないかい、という印象はなくなり、がっしりしたボディにしなやかな足、というようにドイツ車のよい面を取り入れています。
それでも、そんなフランス車+ドイツ車=欧州車という図式の車づくりが一巡して、最近はその欧州車の中でもドイツ車の味付け、フランス車の味付けが復活してきているようです。プジョー307も、デビュー当時は一生懸命ドイツ車をつくりましたという雰囲気だったのですが、最近行われたマイナーチェンジではしなやかさが強くなり、軽快感がはっきりしてきました。シトロエンC4も、すこし前にはすっかり無国籍になっていたのに、最新のC4ではかつてのBXやエグザンティアのようなソフトな味わいが少しだけ戻ってきました。少なくとも、無国籍のベクトルはこれ以上進まない、という意思が感じられる。その意味では、ヨーロッパはなかなか賢いなあと思わせます。
しかし、かつては自動車先進国だったイギリスが、メーカーもほとんど生き残っておらず、その一方で、国際化に遅れ気味だったフランスのメーカーがしぶとく生き残り、元気がいいのは、なんとも不思議です。
クルマというのは、技術の面、文化の面、楽しみの面、生活の道具としての面など、いろいろな側面で語れるから楽しいし、その線宅にその人らしさがでるのだと思います。
さて、姉の選択はどうなるでしょうか、また報告します。
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